建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

建築・環境計画研究室

この研究室は,2006年4月に立命館大学にて開設され,2009年10月に東京電機大学に移りました.研究テーマは,建築計画,環境行動です. 特に,こどもや高齢者,障碍をもつ人々への環境によるサポートや,都市空間における人々の行動特性などについて,研究をしています.

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市営住宅の更新期に向けた居住実態を踏まえた居住者支援のあり方の検討 - 政令指定都市A 市におけるケーススタディ-

2021-07-15 16:15:18 | 書架(住宅関係)

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地域施設計画研究39 2021年7月 日本建築学会

建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.39, Jul., 2021

 

 

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市営住宅の更新期に向けた居住実態を踏まえた居住者支援のあり方の検討 - 政令指定都市A 市におけるケーススタディ- Examination of the ideal way of supporting residents based on actual living conditions for renewal period of municipal housing - Case study of ordinance-designated city A - ○押尾萌加*,山田あすか**,村川真紀***  In this study, the actual condition of the household which resided in the municipal housing from the reason for leaving was grasped, and effective countermeasure and support were arranged from residential household characteristic and building situation of each municipal housing. It is necessary to carry out the support in proportion to the characteristic of each municipal housing in order to raise the quality of life of municipal housing. For example, when there are many elderly people, the following are mentioned: Extension of the dwelling unit area in order to invite the young household and substantiality of the staying home support. Key words: Public housing,Housing complex,Ageing,Housing support キーワード:公営住宅,団地,高齢化,居住支援 *東京電機大学大学院未来科学研究科建築学専攻 修士課程 **東京電機大学未来科学部建築学科 教授・博士(工学) ***東京電機大学未来科学部建築学科 研究員・博士(工学) Moeka OSHIO, Asuka YAMADA,Maki MURAKAWA * Graduated Student, Department of Architecture, School of Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki Univ. ** Assoc.Prof., Dept.of Architecture, Faculty of School of Science and technology for future life, Tokyo denki Univ., Dr.eng. *** Researcher,Dept.of Architecture, Faculty of School of Science and technology for future life, Tokyo denki Univ., Dr.eng. 1.研究背景・目的 1.1.社会的背景  本格的な少子高齢社会,人口・世帯減少社会の到来を 目前に控え,国民の住生活の質の向上を図るため2006 年に住生活基本法1)が制定された。2017 年には高齢者 や障がい者,子育て世帯等の住宅確保要配慮者の増加を 見込み,住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の 登録制度等を含む住宅セーフティネット制度が制定2)さ れ,民間の住宅を活かした低廉な家賃の賃貸住宅の供給 や居住場所の確保にかかる困難への支援は社会的に対応 すべき課題の一つとなっている。公営住宅においても, 社会情勢の変化に対応した居住機会の平等な提供や居住 環境の維持向上を図ること,更新期を迎えつつある老朽 化した住宅の効率的かつ円滑な更新が地方公共団体の課 題である。  また,こうした動向を受け,首都圏の政令指定都市で あるA 市では,市営住宅等ストックの効率的な整備,管 理の推進のため,市営住宅の将来的なあり方の検討を 行っている。 1.2.本稿の目的  本研究では,A 市が管理する市営住宅を対象に,居住 者特性等の現状把握と,住宅の更新を効率的に行うため の情報の整理・方法の検討を目的とする。 1.3.既往研究と本稿の位置づけ  市営住宅等の公営住宅については,高齢者を主な対 象として行われる居住支援の特徴と効果に関する研究3) や,更新に際した改修による高齢世帯向け住戸改善に関 する研究4)等がある。一方で,高齢者以外の居住者も視 野に入れた居住支援やストックの活用,また公営住宅に おける世代ごと割合などのコミュニティバランスにも言 及した研究事例は少なく,市営住宅の役割を,「住まい におけるステップアップ(民間賃貸住宅や分譲住宅への 転居までの居住支援)」と「高齢者や障がい者に対する セーフティネット,福祉施設への入所支援とのバッファ」 − 51 − 地域施設計画研究39 2021年7月 日本建築学会 建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会 Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.39, Jul., 2021 の2つにあると仮定し,実態や課題を整理することが重 要と考えた。実際に,公営住宅の高齢化は既往研究が指 摘するように大きな課題となっており,環境の維持など の自治活動,見守りなど互助的関係の担い手不足が懸念 されている。 2.調査概要(表1)  A 市提供の市営住宅の居住者及び退去者のデータを用 い,退去理由をもとに居住者の属性や,実態を把握する。 これら各市営住宅には,1棟が単独で建っている事例か ら団地型で複数棟がまとまって建っている事例までが含 まれ,また建て替えによる新築に近い事例から老朽化が 進む事例まで含まれる。建設年,住戸規模,住宅規模, 立地も各事例によって異なるが,A 市の管理情報により 一群として扱われている住棟(群)を,A市での呼称に 倣い,これ以降「住宅」と呼ぶ。また,A市での市営住 宅全体を指すとき,市営住宅と呼ぶ。  各住宅について居住者特性と建築条件で類型化した。 また,退去理由から見た分析結果と比較し,住宅ごとの 実態や,抱える問題点等,市営住宅の更新に伴い行うべ き対策・支援の整理と考察を行う。  また,表2 注1)に,A 市の全市営住宅のうち建築条件 での類型化(5.1市営住宅の類型化にて後述)をもと に,各1 事例の代表例を示す。表2に示した事例を見る と,先述のように建設からの経過年数が住宅ごとに異な り,表2に例示した4事例の中でも30年以上の差がある。 各住宅の特徴を見ると,利便性の良いCX 住宅とCK 住 宅の応募倍率が高い。また,DK 住宅とAJ 住宅の間取り を比べると,住戸面積には2 倍ほどの差があるが,部屋 の構成や室数に大きな差は見られない。 表2 A市市営住宅の一例 3.既退去世帯の入居時年齢・居住期間・退去理由 3.1.A市の市営住宅の現状把握状況  A 市が把握している市営住宅の既退去世帯の入居時年 齢,居住年数,退去理由(退去先)注2)をもとに,当該 市の市営住宅の現状把握状況を図化した(図1)。世帯 主の入居時年齢が20 ~ 40 代で,居住期間が20 年前 後の世帯は,退去理由が賃貸住宅に入居(33.4%),一 戸建てやマンション購入(25.9%)の世帯の割合が他の 居住期間区分に比べて高い。また,居住期間が30 年以 上の世帯は,入居期間がより短い世帯に比べて,福祉施 設に入居(22.9%)や親族と同居(14.4%),死亡退去 (39.7%)の世帯の割合が高い。また,世帯主の入居時 年齢が60 歳以上の世帯では,福祉施設に入居(38.6%) や親族と同居(8.7%),死亡退去(38.3%)の世帯割合 がさらに高い。  入居時年齢や居住年数によって退去理由が異なる様子 を視覚化できた。このことから,居住者の属性によって, 「住まいにおけるステップアップ」と「高齢者や障がい 者に対するセーフティネット,福祉施設への入所支援と のバッファ」の「2つの役割」の比率が異なると言える。 このことは,居住者の入居時年齢と居住年数を把握しつ つ,必要な支援を検討し,整えていくことが必要である 0 1m 0 1m 経過年数 利便性 最多住戸面積 買い物利便性 保育園近接性 平面図 (一例) 坂の有無 外観 住戸 管理戸数 D K 住宅C X 住宅C K 住宅A J 住宅 35 年21 年49 年55 年 2110m 443m 559m 1230m 110m 334m 80m 110m 1.8 倍69.8 倍89.7 倍2.7 倍 300m以内にコンビニあり300m以内にコンビニ,500m以内にスーパーあり300m以内にコンビニ,500m以内にスーパーあり500m以内にスーパーあり 1km 以内に保育園あり300m 以内に保育園あり300m 以内に保育園あり500m 以内に保育園あり 周辺に等高線あり周辺に等高線なし周辺に等高線なし周辺に等高線あり 244 戸 ❶ダイニング キッチン ❷和室 ❸水回り ❹バルコニー ❶ダイニング キッチン ❷和室 ❸水回り ❹バルコニー 168 戸29 戸 図面無し図面無し 345 戸 60.9 ㎡ 69.3 ㎡ 35.1 ㎡ 36.3 ㎡ 最寄駅からの距離 バス停からの距離 応募倍率 ❶ ❹ ❸ ❷ ❷ ❷ ❶ ❹ ❸ ❷ ❷ 調査対象:A 市市営住宅87 事例 調査期間:2012 年~ 2020 年4 月 調査項目: 入居世帯情報【現入居世帯の高齢化率,単身世帯の割合】 建物に関する情報【管理戸数,経過年数,住戸面積,10 年間でみた応募倍率(平成21 ~ 30 年の10 年間の実績),固定資産税評価額相当額,最寄駅からの距離,最寄バス停ま での距離,買い物利便性,保育所等の近接性,周辺の坂の有無】 調査対象:A 市市営住宅から退去した世帯6255 世帯 調査期間:2012 年~ 2020 年4 月 調査項目: 退去時の世帯情報【入居時年齢,退去時年齢,入居日,居住年数,退去理由,世帯員数, 世帯主との続柄,障害者の有無,高齢者有無,児童有無,生活保護を受けているか,世帯 所得,世帯控除,政令月収,月収区分,入居時困窮事由】 建物に関する情報【建設年度,竣工年度,改善年度,管理開始年度】 その他の情報【承継有無,承継年月日,市営住宅からの住替えの有無】 調査1:市営住宅居住者・退去者の実態把握 調査2:市営住宅の類型化 表1 調査概要 − 52 − 図1 入居時年齢別の居住期間毎の退去理由の割合 ことを示唆している。これは,今後市営住宅の住民の高 齢化による各種課題を是正するためのコミュニティバラ ンスへの視点,つまり住民の多世代化を進めていく上で, 重要なポイントとなる。住宅ごとに居住者の年齢構成も 異なるため,各住宅の特性に応じた支援を考えるために も基本的情報として重要である。 3.2.現状把握状況から見たロジスティック回帰分析  3.1で図化した既退去世帯の入居時の世帯主年齢, 居住年数,退去理由をもとに,入居時の世帯主年齢段階 ごとに,居住年数を横軸に,退去理由を縦軸にとったロ ジスティック回帰分析注3)を行った(図2)。  20 ~ 40 代で入居した世帯は,居住期間が短い場合 に賃貸住宅転居・住宅購入等で転居する割合が高く, 居住年数が長い場合にその割合は漸次低下する(p 値 <0.01)。賃貸等への転居までのステップアップの役割の 観点からは,転居可能性を高めるためには入居後早期か らの介入や支援が重要であるとわかる。50 代以降に入 居した世帯では居住期間による退去理由の割合の変化は ほとんどないフラットな分布形状で(p 値=0.2865,相 関なし),居住年数によらず個人によると説明できる。 また,60 代では死亡退去は居住年数が長い場合に割合 が高く,福祉施設に入居は居住年数が短い場合に割合が 高い関係があり,両者の割合が居住期間によって逆転す る関係がある(p 値=0.0818,統計的有意差は,p 値が 0.5%水準を超えるため,明らかでない)。70 代では60 代とは逆に,居住年数が長い場合に福祉施設に入居する 割合が高い。  以上のデータはA 市が市営住宅のあり方検討用に加工 していたデータを用いた分析であるが,以降,当該デー タを含む,A 市提供の源データによる分析と考察を行う。 明渡し 死亡退去 親族と同居 福祉施設に入居 公営住宅に入居 賃貸住宅に入居 マンション購入 一戸建て購入 その他 無記入は1とする。 凡 例 9 39 3 3 2 5 6 2 5 10 5 2 10 8 8 2 2 9 12 9 3 2 8 3 3 3 25 34 4 2 11 12 2 18 3 30 21 4 6 21 6 46 66 5 11 5 10 2 2 5 5 2 2 4 17 18 3 15 14 2 41 33 8 8 15 97 4 4 2 6 7 5 5 5 4 10 15 26 14 32 4 8 17 26 2 9 8 10 33 13 7 16 118 45 13 15 3 18 4 5 8 4 14 2 2 13 20 73 33 29 5 8 10 11 18 30 13 5 5 4 11 29 20 10 2 2 5 41 36 9 3 99 108 23 2 17 3 4 46 33 12 5 713 12 13 3 19 7 3 4 9 64 41 26 13 13 4 12 65 54 10 95 5 42 8 8 2 2 3 2 8 5 3 8 2 2 15 15 3 3 8 17 17 4 7 10 27 59 7 15 2 4 13 20 12 41 27 14 2 5 17 14 11 35 10 11 7 8 19 10 9 27 11 5 2 2 8 9 11 15 11 18 39 24 8 3 2 2 9 19 歳 以下 n=165 20 ~ 29 歳 n=486 30 ~ 39 歳 n=934 40 ~ 49 歳 n=492 50 ~ 59 歳 n=309 60 ~ 69 歳 n=495 70 ~ 79 歳 n=337 80 歳 以上 n=52 入居時年齢 9 年以下10 ~ 19 年20 ~ 29 年30 ~ 39 年40 ~ 49 年50 ~ 59 年60 年以上 居住期間 n=49 n=81 n=138 n=76 n=59 n=130 n=145 n=37 n=5 n=95 n=188 n=111 n=131 n=266 n=171 n=6 n=82 n=114 n=70 n=58 n=91 n=20 n=49 n=91 n=92 n=45 n=7 n=38 n=52 n=215 n=123 n=33 n=82 n=155 n=14 n=45 n=33 n=20 n=16 n=1 n=21 n=15 その他 明け渡し 死亡退去 親族と同居 福祉施設に入居 公営住宅 賃貸に入居 マンション購入 一戸建て購入 居住期間 ~910~ 19 20~ 29 30~ 39 40~ 49 50~ 59 60~ p値:<0.001 N:486 p値:<0.001 N:934 p値:<0.001 N:492 19 歳以下 50 ~ 59 歳60 ~ 69 歳70 ~ 79 歳 20 ~ 29 歳30 ~ 39 歳40 ~ 49 歳凡例 p値:0.2865 N:309 p値:0.0818 N:495 p値:0.0076 N:337 p値:0.5133 N:52 p値:0.0002 N:165 ~910~ 19 20~ 29 30~ 39 40~ 49 50~ 59 60~ 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 ~9 10~ 19 20~ 29 30~ 39 40~ 49 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 ~9 10~ 19 20~ 29 30~ 39 40~ 49 ~910~ 19 20~ 29 30~ 39 40~ 49 50~ 59 60~ ~9 10~ 19 20~ 29 ~9 10~ 19 20~ 29 30~ 39 40~ 49 50~ 59 ~9 10~ 19 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 退去理由 80 歳以上 4.退去理由等から見た居住者像の分析  既退去世帯に関するデータのうち,退去理由を主軸に 分析を行った。退去理由は単一回答であり,契約期間満 了,一戸建て購入,マンション購入,賃貸住宅に入居, 公営住宅(市営住宅以外)に入居,福祉施設に入居,親 族と同居,死亡退去,明渡し(入居資格の範囲を外れた ことによる退去で,本人による申し出ではないので事由 を問わずにこの項目に分類されている),その他(帰国 者含む),市営住宅内での住替え,工事等による仮移転, 退去理由不明の13 個に整理されている。 4.1.退去理由の割合  退去理由の割合(図3)を見ると,全世帯(6255 世 図2 現状把握状況から見たロジスティック回帰分析 − 53 − 帯)では,死亡退去が22%と最も高く,次いで住替え が17%で,退去理由から見ると市営住宅に最期まで住 み続けていた世帯は既退去世帯の1/5 以上を占めている ことが読み取れる。また,3 番目に高い退去理由は福祉 施設への入居による退去16%で,ステップアップにあ たる一戸建てやマンション購入,賃貸入居による退去等, 市営住宅以外への転居注4)による退去は20%である。  退去世帯のうち高齢者のいる世帯(退去時の家族構成 に高齢者が含まれていた世帯)4954 世帯の退去理由の 割合を見ると,死亡退去が27%と最も高く,次いで福 祉施設に入居と住替えが20%である注5)。死亡退去のう ち,注5① -1「高齢独居世帯で,本人死亡により退去」 は1162 世帯で,高齢者のいる世帯の死亡退去の23.5% にあたる(1162/4954 世帯)。一方,退去時家族構成に 高齢者が含まれない1301 世帯では,最も高い割合の退 去理由は賃貸住宅に入居の29%である。  退去時の家族構成に高齢者が含まれていたかどうか で,退去理由の内訳には明らかな相違がある。全世帯で 見た退去理由と高齢者のいる世帯の退去理由それぞれの 割合は近しく,また,高齢者のいる世帯は全退去世帯の 79%を占めていることから,既退去世帯全体の退去理由 割合は高齢者のいる世帯の傾向の側の影響を大きく受け ているとわかる。市営住宅の主たる2つの役割に照らし て,これら世帯構成による退去理由の差異を踏まえ,分 割しての理解が必要である。 4.2.福祉施設への入居による既退去世帯の世帯主の 退去時年齢  福祉施設への入居による既退去世帯の退去時における 世帯主の年齢(図4)は,80 代が51%を占めている。 平均年齢は82.02 歳と,全国の特養入居時平均年齢5)よ りも2 歳ほど高い。3.2 の「70 代で入居した世帯では居 住年数が高い場合に福祉施設に入居する割合が高い」傾 向とも併せて考えると,当該市営住宅が福祉施設入所に 至るまでのバッファの役割を担い,総じて自立支援と社 会保障費の低減に寄与している可能性が示唆されている と考える。  なお,関東圏では特異な東京都の特別養護老人ホーム 入所時平均年齢6)注6)は83.0 歳であり,こちらと比べ た場合には,差は小さい。 4.3. 退去理由と居住年数の関係  世帯の退去理由(退去先)と居住年数の関係(図5) を見る。戸建て住宅の購入等市営住宅以外への転居のた め退去した世帯の居住期間は,各退去先で平均16 ~ 20 年程度である。一方,親族と同居,死亡退去,福祉施設 に入居等の理由で退去した世帯は27 ~ 30 年と,10 年 程度長い期間,市営住宅に住み続けたことがわかる。先 述の通り,市営住宅以外への転居の推進の観点からは早 期からの支援が効果的であると推察するが,A市では「居 住者の流動化」をキーワードとした,対象世帯に対する 居住機会の拡大を企図した制度変更を行っている。一例 として,平成30 年12 月から子育て世帯向けの募集区 分を新設するとともに,この募集区分に定期借家制度(定 期使用許可)を適用した。これによって,居住者の流動 化,すなわちステップアップの効果の強化,および意図 しない居住の長期化・居住者の固定化を減じることによ る居住機会の拡大と,子育て世帯への支援としての入居 機会の拡大や団地内の自主的な管理活動やコミュニティ の活性化(コミュニティバランスの適正化)が期待され ている。この分析結果は,子育て世帯を想定した現在の 定期借家制度注7)の方針の裏付けになるとともに,若年 層への定期借家制度による入居機会の拡充の検討材料と なる。 4.4.世帯人数ごとの退去理由の割合  世帯人数ごとの退去理由の割合(表3)を見る。世帯 人数が5人の場合,一戸建て購入による退去の割合が最 も高い(35.1%)世帯人数が4人の場合,賃貸住宅に入 図5 退去理由と居住年数の関係 不明 仮転移 住替え その他 明渡し 死亡退去 親族と同居 福祉施設に入居 公営住宅に入居 賃貸住宅に入居 マンション購入 一戸建て購入 契約期間満了 11% 22% 7% 17% 2%4% 2% 7% 20% 27% 9% 4% 4% 20% 2%2% 1% 2% 2% 29% 1% 3% 9% 10% 15% 退去理由(全世帯) n=6255 高齢者の居る世帯の 退去理由の割合 n=4954 高齢者の居ない世帯の 退去理由の割合 n=1301 16% 10% 5% 1% 3% 7% 1%1% 8% 14% 2% 凡例 図3 退去理由の割合 80 代 70 代 24% 60 代 7% 凡例 51% 90 代 17% 100 代 0% 40 代 0% 50 代 1% ・A 市市営住宅退去者 平均年齢:82.02 歳 中央値 :83 歳 ・全国平均 特養 平均入所年齢:79.9 歳 老健 平均入所年齢:82.6 歳 ・東京都 特養 平均入所年齢:83.0 歳 老健 平均入所年齢:84.1 歳 有料老人ホーム 平均入所年齢:82.7 歳 クループホーム 平均入所年齢:82.6 歳 40 代 50 代 60 代 70 代 80 代 90 代 100 代 図4 福祉施設入居による退去世帯の退去時における 世帯主の年齢 − 54 − 図7 退去時における世帯主の年齢と政令月収の関係 22.6 24.1 21.8 10.2 5.9 11.4 7.4 26.0 16.6 9.4 11.3 9.1 22.2 23.1 19.9  9.2 5.0 8.7 5.6 21.0 12.7 7.5 8.6 6.3 政令月収(万円) 平均値 中央値 マンション購入 一戸建て購入 賃貸住宅に入居 公営住宅に入居 福祉施設に入居 親族と同居 明渡し 死亡退去 その他 仮転移 不明 住替え 160 140 120 100 80 60 40 20 0 図6 退去理由と政令月収の関係 0 9 5 4 74.8 69.6 56.6 48.1 78 72 54 48 373 95 8 3 0 8 3 1 0 0 77 3 1 1 15 17 21 16 32 56 49 58 46 120 123 125 126 79 195 178 124 90 41 528 276 62 29 10 1042 367 84 14 1312 382 44 3 平均年齢46.4 中央値45.5 10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80代 90代 100代 契約期間満了 一戸建て購入 マンション購入 賃貸住宅に入居 公営住宅に入居 福祉施設に入居 親族と同居 死亡退去 明渡し その他 住替え 仮移転 不明 退去理由 退去時年齢 世帯人数(人) 1 2 3 4 5以上 世帯人数(人) 1 2 3 4 5以上 0.1% 0.4% 0.7% 4.7% 1.6% 0.1% 3.5% 3.3% 17.5% 1.1% 0.0% 9.6% 10.6% 27.0% 1.0% 0.3% 21.2% 11.8% 27.6% 0.6% 0.0% 35.1% 6.2% 18.6% 1.5% 9.2% 10.8% 9.6% 8.8% 5.2% 0.9% 2.5% 2.1% 2.1% 5.2% 16.0%25.0%15.6% 6.8% 3.1% 1.9% 2.5% 2.1% 0.6% 0.5% 23.8% 9.2% 0.0% 0.0% 0.5% 32.3%10.0% 3.3% 0.6% 0.5% 2.4% 7.9% 10.8%11.2% 14.9% 6.1% 6.7% 8.3% 8.5% 8.8% 表3 世帯人数ごとの 退去理由の割合  (%)  表4 世帯人数ごとの 世帯主の退去時年齢  (世帯数) 居,一戸建て購入,マンション購入(27.6%,21.2%, 11.8%)の割合が比較的高い。世帯人数が3人の場合, 4 人の時と同様に,賃貸住宅に入居,マンション購入, 一戸建て購入(27.0%,10.6%,9.6%)の割合が比較 的高く,市営住宅内での住替えの割合も15.6%と比較 的高い。世帯人数が2 人の場合も,賃貸住宅への入居に よる退去(17.5%)が比較的高いが,最も割合の高い理 由は住替え(25.0%)である。一方,世帯人数1人(独 居)の場合は,死亡退去は32.3%,福祉施設への入居 による退去は23.8%で,単身の既退去世帯3702 件のう ち,約半数を占める。3 人以上の世帯で高い割合の賃貸 住宅への入居による退去は5%であり,これは,単身世 帯や2 人世帯は,単身高齢世帯や高齢夫婦世帯が多くを 占めているためと考えられる。 4.5.世帯人数ごとの世帯主の退去時年齢  世帯人数ごとの世帯主の退去時年齢(表4)を見ると, 1 人世帯では74.8 歳,2 人世帯では69.6 歳,3 人世帯 では56.6 歳,4 人世帯では48.1 歳,5 人以上の世帯で は46.4 歳と,世帯人数が多いとき退去時の年齢の平均 が低い傾向が見られた。世帯人数が3 人以上のとき,3 人: 125 世帯,4 人:126 世帯,5 人:79 世帯と,世帯主 が40 代である世帯が最も多い。また,世帯人数ごとの 退去理由の割合の分析での予測通り,単身世帯や2人世 帯は70 代80 代の高齢単身世帯や高齢夫婦世帯に偏っ ている。 4.6.退去理由と月収の関係  退去理由と政令月収の関係(図6)を見ると,公営住 宅以外への転居注8)によって退去した世帯の月収の中央 値は,一戸建て購入(22.2 万円),マンション購入(23.1 万円),賃貸住宅に入居(19.9 万円)と,他の退去理由 より20 万円前後高い。一方,福祉施設への入居による 退去は5.6 万円,死亡退去を行った世帯は5.0 万円と5 万円前後であり,公営住宅以外への転居による退去世帯 と比較すると月収あたり15 万円近くの差がある。  上記以外の月収の中央値が10 万円以下の退去理由を 見ると,公営住宅に入居,親族と同居,市営住宅内での 住替え,建て替えや工事に伴う仮移転である。4.3の 退去理由と居住年数の関係との関係より,月収が低い場 合に居住年数が長い傾向があると理解でき,これは市営 住宅の設置目的が低所得による住宅確保困難者に対する 居住支援にあることと矛盾しない(低所得である理由は, 世帯によって異なる)。 4.7.退去時年齢と収入の関係  退去時における世帯主の年齢と政令月収の関係(図7) では,月収は70 代までは増加し,80 代以降は減少する 傾向が見られる。4.6で指摘した退去理由と月収の関 係と合わせると,市営住宅以外への転居支援に実効性が 期待できるのは70 代までと考えられる。また,80 代以 降の居住者には「ステップアップ」ではなく「福祉施設 入所支援までのバッファ」としての機能に特化すること が妥当と考えられ,在宅生活・医療・介護の支援が重要 である。 4.8.退去時年齢と公営住宅以外への転居による退去 世帯  図8で退去時年齢と公営住宅以外への転居による退去 世帯数の割合の傾向を見ると,36 歳を境に賃貸入居の 割合が増加し戸建て・マンション購入と入れ替わる。ま た,賃貸入居が80%に達するのは70 歳,戸建て・マン ション購入は62 歳で,最高齢は戸建て・マンション購 入が94 歳,賃貸住宅が100 歳である。  退去時年齢と世帯数の傾向(図9)では,戸建て・マ ンション購入と賃貸入居の双方で,46 ~ 49 歳を境に増 − 55 − 加の傾向(傾き)が異なる。これは,世帯主が46 ~ 49 歳の時,子供が20 代になり自立する時期に重なるため と推測でき,この年代,または家族構成を把握した上で ライフステージの変化が予期される時期入居世帯には転 居に対する積極的な支援が有効である可能性が考えられ る。 5.市営住宅ごとの課題の検討 5.1.市営住宅の類型化 1)居住世帯特性の類型化 各住宅の現居住世帯の高齢化率と単身世帯の割合注9) でクラスター分析を行い,5 類型(CL-R)を得た(表5)。 CL-R1:高齢化率,単身世帯の割合が平均以上 CL-R2:高齢化率,単身世帯の割合が平均以上かつ CL-R1 より低い CL-R3:高齢化率が平均以下, 単身世帯の割合が平均以上 CL-R4:高齢化率,単身世帯の割合が平均以下 CL-R5:高齢化率が平均以上, 単身世帯の割合が平均以下  また,以降の分析では,カテゴリごとの事例数を近 づけるとともにより概要を理解しやすく整える観点か ら,クラスター分析の結果では別の類型となったが高齢 化率と単身世帯の割合の関係が類似したCL-R1 とCL-R2 (高齢化率,単身世帯の割合が共に平均以上),CL-R3 と CL-R4(高齢化率が平均以下)は,それぞれ1 つの類型 として扱い,計3 類型として分析を行う。高 齢 化 率 (%) 単身世帯の割 合(%) 住宅名 1 2 5 4 3 CL-R 84.4 90.6 88.3 80.4 76.9 77.2 80.1 73.3 84.5 72.7 82.0 71.4 84.2 69.3 71.8 67.7 75.9 65.5 85.3 65.2 78.6 64.0 78.0 63.8 72.8 61.1 82.1 60.7 74.9 59.6 72.5 59.0 70.1 58.9 70.7 56.6 81.6 55.6 81.1 52.9 80.6 51.9 62.1 54.8 55.6 54.5 35.0 54.3 49.2 53.2 45.2 53.0 42.3 49.6 42.2 43.8 47.5 42.7 58.3 40.8 57.6 40.5 57.1 39.5 63.3 38.7 62.1 36.7 61.6 35.9 65.2 34.8 65.9 34.6 57.2 34.2 60.0 34.0 51.5 34.0 56.4 33.8 57.1 33.3 59.4 31.6 52.9 31.3 64.9 31.1 57.3 30.0 60.4 29.9 64.9 29.8 63.0 29.3 67.3 28.9 64.3 28.8 68.5 28.6 56.4 28.2 57.1 28.2 57.2 27.9 59.5 27.7 56.5 27.1 66.0 27.1 57.3 26.5 65.9 26.3 53.7 24.1 50.8 22.4 64.2 21.2 68.1 51.0 71.6 47.7 78.4 45.5 78.1 44.6 72.6 43.0 77.0 42.3 70.8 42.1 68.6 41.2 78.9 40.0 70.5 38.4 70.0 36.8 69.6 36.8 85.7 36.6 78.3 36.6 81.4 34.9 68.5 34.4 90.6 33.9 74.4 32.8 71.1 32.8 71.0 32.4 76.5 32.2 71.0 32.1 74.8 29.3 平均 75.0 27.1 67.4 42.9 AH CE AP CT CU DE AQ CD CA CI DC DG DA CK CF DH AS AW BA AJ BK BI BO BP CZ CX DB AK DF AX AA BZ CV CM AG BF AN CS BB CL AV CC BS BE BN AL CP BU BD BC BJ BR BX BY CQ BH BG AB AO CO AE CY DK AZ AT AU AY BQ AM AI CJ BM DJ CN DI CH AR CR AC CB CW BL DD BW BT BV AD CL-A 244 35 60.9 2110 110 〇△ ▲ 151 47 40 1870 45 〇△ ▲ 45 34 61.9 1600 233 ◎ △ 〇 177 38 60.8 1500 172 ◎ △ 〇 100 38 58.8 1500 172 ◎ △ 〇 352 12 44.5 1130 152 ◎ 〇〇 230 15 62.7 1400 196 〇〇▲ 84 32 61.9 1990 65 ◎ 〇〇 202 32 65 1885 105 〇◎ 〇 342 24 68.4 2330 140 ◎ 〇〇 83 26 61.9 1910 67 〇△ ▲ 75 19 67.8 1340 244 △ 〇▲ 56 24 66.7 1320 288 ▲ △ 〇 48 27 65.7 1190 332 △ 〇▲ 160 6 51.9 1860 133 〇△ 〇 533 21 68.4 1610 133 △ △ ▲ 116 37 58.7 1570 155 ◎ 〇〇 88 39 56.3 985 80 ◎ ◎ 〇 20 30 59.1 1260 109 ◎ ◎ 〇 30 32 60.8 1300 173 ◎ ◎ 〇 64 8 33.6 478 161 ◎ 〇▲ 106 33 62.9 1080 173 ◎ ◎ 〇 168 21 69.3 443 334 ◎ ◎ 〇 44 40 56.3 495 377 ◎ 〇〇 72 5 33.6 431 42 ◎ ◎ 〇 278 20 68 807 70 ◎ ◎ 〇 56 39 58.8 716 178 ◎ ◎ 〇 335 30 66.4 643 163 ◎ ◎ 〇 60 23 66.8 550 122 ◎ ◎ 〇 121 16 62.7 973 159 ◎ ◎ 〇 192 4 35.8 1200 86 ◎ ◎ 〇 158 18 65.4 681 699 ◎ △ 〇 231 37 58.8 199 128 ◎ ◎ 〇 50 36 58.8 480 191 ◎ ◎ 〇 87 6 47.9 1500 308 ◎ ◎ ▲ 230 34 60.9 1150 381 ◎ ◎ 〇 114 39 52.5 526 222 △ ◎ 〇 60 31 60.8 894 35 ◎ ◎ 〇 47 17 63.3 582 663 ◎ ◎ 〇 85 21 69 800 125 ◎ ◎ 〇 131 34 60.9 440 152 ◎ ◎ 〇 20 27 59 415 230 ◎ ◎ 〇 72 40 53.5 524 326 〇◎ 〇 160 37 60.9 1140 220 ◎ ◎ 〇 146 33 61.6 672 29 ◎ ◎ 〇 24 29 58.7 967 102 ◎ ◎ 〇 34 23 67.6 949 85 ◎ ◎ 〇 74 38 56.3 1170 62 ◎ ◎ 〇 117 13 61.2 1050 116 ◎ ◎ 〇 167 3 27.7 1300 52 ◎ ◎ 〇 16 31 57.6 535 140 ◎ ◎ 〇 60 52 30 420 54 ◎ ◎ ▲ 176 58 37 886 70 ◎ ◎ ▲ 324 57 35.4 1550 342 ◎ ◎ ▲ 180 51 31.9 1300 109 ◎ ◎ ▲ 457 57 61 1530 144 ◎ ◎ ▲ 32 48 44.9 311 118 ◎ ◎ 〇 29 49 35.1 559 80 ◎ ◎ 〇 124 41 44.9 271 438 ◎ ◎ ▲ 155 27 69.4 1520 27 〇◎ ▲ 322 54 36.3 1850 248 ◎ 〇▲ 392 47 37.9 1570 185 ◎ 〇▲ 64 49 30 417 61 △ ◎ 〇 268 56 32.9 426 399 ◎ 〇〇 191 52 32.1 1720 72 △ ◎ 〇 708 50 36.3 1500 317 ◎ ◎ ▲ 226 54 36 658 221 ◎ ◎ ▲ 163 39 50.6 1200 112 ◎ ◎ ▲ 242 52 36.3 1210 188 ◎ ◎ ▲ 90 33 60.8 469 18 △ ◎ ▲ 160 44 42.7 1700 39 ◎ ◎ 〇 244 52 54.3 850 102 ◎ ◎ 〇 114 42 44.5 1060 178 ◎ ◎ 〇 40 53 29.2 742 168 △ ◎ 〇 123 37 58.8 828 66 △ ◎ ▲ 106 44 41 1280 123 ◎ ◎ 〇 85 35 60.9 1090 208 ◎ ◎ ▲ 158 47 43.3 897 224 ◎ ◎ ▲ 158 43 44.4 912 345 〇◎ ▲ 57 45 41.6 757 213 ◎ ◎ 〇 120 48 36.6 1570 210 ▲ △ ▲ 345 55 36.3 1230 110 △ 〇▲ 100 46 43.3 734 51 ▲ △ ▲ 377 52 36.3 1090 248 △ 〇▲ 612 49 32.1 1150 88 △ ◎ ▲ 530 51 31.9 1010 220 △ ◎ ▲ 318 53 36.3 1640 240 △ △ ▲ ◎…○△双方あり ○…500m以内にスーパー △…300m以内にコンビニ ▲…どちらもなし ◎…300m以内 ○…500m以内 △…1km以内 ▲…1km以遠 ○…周辺に 等高線なし ▲…周辺に 等高線あり 管理戸数 (戸) 経過年数 (年) 保育所等 近接性 地形 買い物利便性 最寄駅からの 距離(m) 最寄バス停から の距離(m) 住戸面積 (㎡) 住宅名 1 2 4 3 保育所等 近接性 地形 買い物 利便性 DK DJ CR CQ CP AS AK AN AO DF BX BY AE AD AZ AG BC CO CN CM CZ CL CX CH CI BZ CJ BS BU DB DA AX AC AB AW AV DD CY BO BP BN BM BJ BH BG BF BE BB BI CD CC AP AQ CT CU CS CV CK CW AL AY DE CE CF CA AT AU BT BQ AA BV AR AI AH BL BA BD BW DI CB AM AJ BR BK DH DG DC ※保育所等近接性や地形等の地域環境に関する項目は,A市の 住宅分類において集計が行われている項目に倣い選定している。 表5 居住世帯特性 クラスター 表6 建築条件 クラスター 賃貸住宅に入居 戸建て購入 マンション購入 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 36歳 世帯主の退去時年齢(歳) 退去世帯の割合(%) 賃貸住宅に入居 戸建て購入 マンション購入 世帯主の退去時年齢(歳) 退去世帯の数(世帯) 46~49歳 800 700 600 500 400 300 200 100 0 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 図8 公営住宅以外へ退去した世帯の世帯主の退去時年齢と 退去世帯の割合 図9 公営住宅以外へ退去した世帯の世帯主の退去時年齢と 退去世帯の数 − 56 − 2)建築条件の類型化 各住宅の住戸面積等の建物情報注10)や利便性について クラスター分析を行い,4類型(CL-A)を得た(表6)。 CL-A1:住戸面積が平均以上,駅から遠い CL-A2:住戸面積が平均以上, 交通や買い物の利便性が高い CL-A3:経過年数が平均以上,買い物の利便性が高い CL-A4:経過年数が平均以上,住戸面積が平均以下, 利便性が悪い  類型化に際し,買い物利便性,保育所等近接性,坂 の有無等の立地による利便性,の3要素が比較的大き く影響した。また,経過年数と住戸面積から,CL-A1 と CL-A2 では経過年数が平均以下,住戸面積が平均以上, CL-A3 とCL-A4 では経過年数が平均以上,住戸面積が平 均以下と,二分されていることがわかる。また,管理戸 数は平均以上の事例がCL-A4 に集中している。一方,最 寄り駅からの距離,バス停からの距離は類型化にあまり 影響していない様子が見られる。また,入居希望のニー ズの大きさを示す応募倍率の平均は,各類型で異なり CL-A1 は14.6 倍,CL-A2 は25.0 倍,CL-A3 は15.4 倍, CL-A4 は4.9 倍である。 5.2.居住世帯特性と建築条件のクロス集計  表7にCL-R とCL-A のクロス集計結果注11)を示す。各 類型を見ると,CL-R ではCL-R1,2 が高齢化率と単身率 が平均以上,CL-R3,4 が高齢化率が平均以下,CL-R5 が高齢化率は平均以上だが単身率は平均以下と,大き く3 つに分けられる。経過年数が平均以上の住宅群(CLA3) に,高齢化率が平均以上の居住世帯(CL-R1,2 と CL-R5)が集中している。この背景には,住戸の規模に よらず,同じ住宅に長期間住み続けている居住者の影響 を推察できる。また,住戸面積の大きい住宅群(CL-A1 とCL-A2)には高齢化率,単身率が平均以下の居住世帯 (CL-R3,4)が集中している。家族規模が比較的大きい, 比較的若年である世帯が住戸面積の大きい住宅群に居住 しているという対応関係を読み取れる。  建築条件クラスター(CL-A)を元にクロス集計の結果 を見ると,CL-A1 では,「駅から遠い」,「保育所等の近 接性が低い」という特性をもつ住宅の割合が高い。その ため,働きに行く際に駅を使う等の交通の便が悪い,保 育園が遠く子育て世帯に向かない等の課題が推察でき る。これらの住宅の住戸面積は家族向けと考えられ,子 育て世帯向けの支援施設の併設等が居住環境の向上に有 効と考えられる。 高齢化率平均以上 単身世帯平均以下 FI SN HO2 1 1 1 1 4 4 5 5 6 11 n n n 2 3 4 1,2 3,4 居住世帯特性(CL-R) 5 建築条件(CL-A) WN, MK2, MK3, HST, HSY, HO, NH, NN, CT, SK, KY, OG2 HSN, NP, OG3, FT, SSN OO, TG, SE, SA FS, NS, KR, NM, OGN, MZ, NPT, NP2, NGN, MU, CM MJ2, NSM, TJ, SH, KZT, KD MJ, MK1, HC, FJ, NC, CS, SB, SKU, SNS, SG, SSM, SD, KK, KF, KG, KDT, OD, OGM, OGH, OGC, OG4, OG1, OGK, AD2 KS2, TY, TI, HY, SS, SZ, IT, SO, AD, KN, KM, HN, AR3 WM, MT, ST, KO AK, AR1, AR2, KS, HS 11 24 13 ・経過年数 平均以上 ・住戸面積 平均以下 ・住戸面積  平均以上 ・駅から遠い ・住戸面積  平均以上 ・利便性良 ・経過年数 平均以上 ・買い物 利便性良 高齢化率平均以上 単身世帯平均以上 高齢化率平均 78.9 特徴 57.6 74.6 高齢化率平均以下 ① ② 表7 居住世帯特性クラスターと建築条件クラスターの クロス集計  次に,CL-A2 は,全体では住戸面積が平均以上である が,CL-A2 の中でもCL-R2 と対応する4 事例の住戸面 積はCL-A2 のなかでは特異的に50㎡以下である。この 住戸面積のコンパクトさは家族形成期にある世帯の入居 ニーズが低い要因の一端と考えられる。そのため,立地 条件等からは子育て・若年世代が入居可能であるものの 住戸面積が小さい住戸の比率が高い住宅では,その更新 やメンテナンスに際し,2 戸1化改修や2 戸利用可能制 度など住戸面積の拡大が,若年層世帯の呼び込みにつな がり,その結果,高齢化率や単身率上昇を緩和し,コミュ ニティバランスの向上が図れると考えられる。 CL-A3 に含まれる住宅は40㎡前後の住戸が半数以上 を占めており,単身世帯の入居決定や,住戸面積と世帯 規模の不適合による住替え誘導が起きないなど,高い単 身率の要因のひとつと考えられる。全国的な統計と同様, A 市でも単身世帯が増加しており,単身世帯向けの住戸 が充分に供給されることは,大局的に見たニーズには即 している注12)。住宅規模が小さい場合には周辺地域を含 めたコミュニティバランスが取れれば良いという考え方 によれば,住宅内で多世代網羅する必要性は必ずしもな い。住宅の条件や周囲の状況をみながら,必要であれば 住戸面積やその選択肢の拡大は,単身率や高齢化率の低 減に寄与しうると考えられる。また,現状ではこのカテ ゴリの住宅群は高齢化率が高いため,在宅医療や居宅介 護支援の充実が,自立生活期の延伸やQOL の向上の視 点からより重要であるカテゴリと言える。 CL-A4 に含まれる住宅は,交通利便性が低く住戸面積 は8割が40㎡以下である。単身高齢世帯の割合が高く, 上記と同様に単身高齢者向けの居宅介護支援に力を入れ る必要があると考えられる。 5.3.類型の組み合わせごとの退去理由 クロス集計で得られた類型の組み合わせごとの世帯 主の退去時平均年齢と退去理由の割合を見る(表8)。 CL-R での偏りをもとにCL-A を見ると,CL-A1,2 は住 − 57 − 戸面積が広い住宅群,CL-A3,4 は住戸面積が狭く経過 年数が平均以上の住宅群となっており,大きく2つに分 けられる。この6分類の中で特に事例が集中し,実測値 / 期待値が1 を超えている注11)CL-R1,2 とCL-A3,4 の 組み合わせ①(高齢化率・単身率が平均以上,経過年数 が平均以上)と,CL-R3,4 とCL-A1,2 の組み合わせ②(高 齢化率が低く,住戸面積が平均以上)の2箇所に着目す る。世帯主の退去時平均年齢を見ると,高齢化率が平均 以上である①が71.3 歳,平均以下である②が66.2 歳と, 5 歳程の差がある。また,①は,福祉施設への入居によ る退去が16.3%,死亡退去が24.3%だが,市営住宅内 での住替えによる退去が21.9%で,多くの居住世帯が長 期間市営住宅に住み続けているとわかる。一方,②では, 市営住宅以外への転居28.5%,福祉施設への入居による 退去18.2%,死亡退去20.3%と,居住者の年齢層が高 齢者に偏っていない。 ②は,住民の流動性が高い住宅群と説明できる。A 市 では市営住宅のあり方として,住民の流動性を高める方 針であるが,既に見てきたように各住宅の立地・住戸面 積等の特性やそれに対応した居住世帯像が異なるため, すべての住宅で,すべての世帯類型の流動性を高めるこ とは現実的ではない。当然,住宅の特性や,世帯の年齢 や各種事情に応じたグラデーションが生じることが予期 されるため,こうした建築条件(CL-A)と世帯像(CL-R) の対応や,さらにその結果として表れる退去理由の対応 関係の整理を踏まえた方針策定が重要であると指摘でき る。 5.4.類型の組み合わせによるマッピング  以上のクラスターから,各住宅の所在地のマッピング を行った(図10)。この図は,A 市との協議により匿名 性に配慮し単純化して表示している。A 市は,図の右側 より発展した経緯があり,現在でもそちらに主要な人口 集積地が集中している。また,図の左側は他市に抜ける 鉄道が繋がっているが,丘陵地帯で高度経済成長期以降 に開発された新興住宅地等が点在している。  A 市の市営住宅は必ずしも駅の周辺にはなく,主要な 道路沿いに集中していることがわかり,居住者の移動手 段は車やバスが主であると推察できる。また,市営住宅 が集中している場所には,コンビニやスーパーが近接し ており,駅からの距離等交通利便性が高くなくとも人口 集積地であり,これらは買い物等の利便性は確保されて いる住宅であると理解できる。また,高齢化率や単身率 の低い居住者が集中している住宅(CL-R3,4,5)は, 図10 の右側にある主要な駅からのバス圏内に集中して いる。  一方,経過年数が長く,高齢化率と単身率が平均より 高い住宅(CL-R1,2 かつCL-A3,4)は,主要な駅から 離れた図10 の左側に集中している。市の人口が急増し た時代,居住地の拡大と開発圧とともに建設された住宅 が,住戸面積や通勤等の若年居住者層のニーズへのアッ プデートが困難であるなどの要因で,現在に至る長期入 居・高齢居住者層につながっていることが確認できる。 A 市の市営住宅ではこうした,地理的条件も踏まえた検 討が必要であると言え,今後は市営住宅の適切な管理・ 運営において,生活利便施設や支援機能の誘致など他の 要素を変更しても地理的条件の変更がなければ長期的な 居住ニーズへの適切性を確保できない場合には,統合移 転も含めた再編計画の検討も必要である。 6.まとめ  本稿では,A 市が管理する市営住宅を対象に,居住者 特性等の現状把握と,住宅の更新を効率的に行うための 情報の整理・方法の検討を行った。居住者特性等の現 状把握では,A 市提供の市営住宅の居住者及び退去者の データを用いて分析を行い,年齢や居住期間によって退 去理由が異なり,居住者の属性によって必要な支援が異 なると理解できた。支援の内容とタイミングとして,市 営住宅以外への転居の推進の観点からは早期からの支援 図10 クラスターごとの市営住宅のマッピング 0.0% 1.1% 1.6% 6.9% 0.5%25.9%11.1% 41.3% 3.2% 7.4% 1.1% 0.0% 0.0% 0.0% 2.0% 2.7% 7.5% 2.4%16.3% 9.0% 24.3% 4.9% 5.5% 21.9% 3.3% 0.1% 0.4% 8.4% 3.1% 15.6% 1.4% 18.2%11.0%20.3% 6.3% 7.6% 6.5% 0.4% 0.7% 0.0% 7.1% 4.3% 21.6% 0.4%16.9% 9.4% 19.6% 7.5% 11.4% 2.0% 0.0% 0.0% 0.0% 2.6% 2.6% 17.1% 2.6%19.3%11.4%24.1% 5.7% 11.0% 3.5% 0.0% 0.0% 0.0% 76.4 71.3 66.2 66.9 68.0 66.8 4.1% 3.8% 14.3% 2.5% 11.7%11.7%19.5% 6.0% 7.1% 16.1% 2.4% 0.8% CL-R1,2 CL-A1,2 CL-R1,2 CL-A3,4 CL-R3,4 CL-A1,2 CL-R3,4 CL-A3,4 CL-R5 CL-A1,2 CL-R5 CL-A3,4 契約期間満了 世帯主の退去時 平均年齢 一戸建て購入 マンション購入 賃貸住宅に入居 公営住宅に入居 親族と同居 死亡退去 明渡し その他 住替え 仮転移 不明 福祉施設に入居 ① ② 表8 類型ごとの退去理由の割合 ■ ■ ● ▲ ■ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●●▲ ▲ ▲ ▲■ ▲ ▲ ▲● ▲▲ ■ ■ ■ ● ●▲ ▲▲ ▲ :高齢化率,単身率ともに低 (CL-R3,4) :高齢化率,単身率ともに高 (CL-R1,2) :高齢化率高・単身率低 (CL-R5) :主要路線 :主要道路 :主要な駅 ■ 等:経過年数平均以上 (CL-A3,4) :丘陵地帯 凡例 − 58 − が効果的であると推察でき,また,転居支援が有効なの は70 代まで,80 代以降は在宅生活・医療・介護の支援 が重要であるとわかった。また,各住宅の情報をもとに クラスター分析を行い,居住世帯特性(高齢化率,単身 世帯の割合)で5 類型,建築条件(住戸面積等の建物情報, 利便性)で4 類型を得た。その後,クラスターのクロス 集計から,それぞれの住宅群の特徴や課題を抽出し,有 効な対策や支援を整理した。その結果,A 市の市営住宅 は,主に居住世帯の単身高齢者率が高く経過年数が50 年弱で,住戸面積が小さく単身向けの住宅と,住戸面積 が大きく比較的家族規模が大きく若年である世帯が居住 し,ある程度コミュニティバランスの取れた住宅に二分 化できると分かった。  類型ごとの特徴と今後求められる介入方法の考察を表 9に整理した。CL-R1,2 とCL-A3,4 の組み合わせ① のように単身世帯が多く居住し高齢化率の高い住宅で は,高齢者に向けた在宅介護支援の拡充や,更新に伴う 建て替えでの高齢者支援施設の併設ないし近隣の高齢者 支援事業や医療機関との連携等,在宅医療や居宅介護支 援の充実が有効と考えられる。また,住宅の条件や周囲 の状況より,住戸面積やその選択肢の拡大が単身率や高 齢化率の低減に有効であると考える。  一方で,CL-R3,4(高齢化率が平均以下)の住宅では, ステップアップ居住支援やスキルアップなど就労関係の 支援,子育て世代に向けた子育て支援の拡充が有効と考 える。これらの施策には,民間住宅とのマッチングや関 連福祉団体などとの連携が必要であり,A 市では実際に そうした連携の強化が検討されている。中でも,立地条 件等からは子育て・若年世代が入居可能であるものの住 戸面積が小さい住戸の比率が高い住宅では,2戸1化等 の住戸面積の拡張ないし住戸面積の選択肢の拡大による 若年家族世帯向け住戸の提供等が有効と考える。 謝辞  本研究をまとめるにあたり,データの提供等で ご協力いただいたA 市市役所の皆様に,深く感謝申し上 げます。なお,本研究は,科学研究費補助金(基盤B) 「「利用縁」がつなぐ福祉起点型共生コミュニティの拠点 のあり方に関する包括的研究(研究代表者:山田あすか)」 の一環として行われました。 注釈 注1)坂の有無は,A 市担当部局において各住宅の特性把握や住 宅整備の基礎資料として,建物周囲の等高線の間隔を判断材 料として分類・整理しているデータによる。 注2)図1は平成26 年度から平成30 年度の5年間の退去世帯 についてまとめた退去理由である。  ・「住替え」は市営住宅の建替えによる,別の市営住宅への住 み替え  ・「仮移転」は市営住宅の建替えによる,建替後の住宅に戻る までの仮移転(市営住宅からは退去していないため,「市営 住宅の退去理由」の分類としては,対象から除外)  また,図1は,A 市から提供可能であった平成26 年度から 平成30 年度の5年間のデータをもとに作成されており,そ の間に「契約期間満了」が退去理由となる世帯はない。 注3)横軸を説明変数,縦軸を被説明変数(カテゴリ)とする。 注4)「市営住宅以外への転居」とは,「戸建て住宅購入」「マンショ ン購入」「賃貸住宅に入居」「(市営住宅以外の)公営住宅に 入居」の4項目を示す。 注5)「退去時の家族構成に高齢者のいる世帯(4954 世帯)」には, 都合,次の5つの類型が想定される。 ① 高齢独居世帯で,本人死亡により退去(① -1)。または,高 齢者のみの同居世帯で,相次いで居住者が亡くなったため退 去(① -2)。存命の居住者はいない。 ② 高齢者のみの同居世帯。1名(以上)が亡くなり,残る1 名以上の高齢者も退去。施設等への入所が想定される。 ③ 高齢者2名以上を含む同居世帯。1名(以上)が亡くなり, 残る1名以上の高齢者とともに,世帯ごと退去。転居,住替 えが想定される。 ④ 高齢者1名を含む同居世帯。高齢者本人が亡くなり,残る 非高齢者家族は退去。転居,住替えが想定される。 ⑤ 高齢者1 名以上を含む同居世帯。高齢者以外の同居家族が 亡くなり,存命の高齢者とともに世帯ごと退去。家計保持 者の死去や障碍のある子のケアのフェーズ変化等を契機とし た,転居,住替え,施設等への入所が想定される。 これらの詳細は源データのうちさらに個人情報に踏み込む内 容であるので,この段階では① -1 とそれ以外の記述のみに 留める。 注6)福祉保健局のデータより算出。また,A 市の所在する県の 特養入居時平均年齢は公開されていない。 注7)定期借家 ( 定期使用許可):従来型の賃貸借契約は,正当 事由が存在しない限り家主からの更新拒絶ができず自動的に 契約が更新されるのに対し,定期賃貸住宅契約は,契約で定 めた期間の満了により,更新されることなく確定的に賃貸借 契約が終了する。A 市では,同居している末子の義務教育が 終了する年度末までが入居可能期間で,期間満了時に退去す る。なお,市営住宅の収入基準を充たしており,住宅に困窮 している場合は,期間満了前に他の市営住宅の募集への申込 も可能。 注8)「公営住宅以外への転居」とは,「戸建て住宅購入」「マンショ ン購入」「賃貸住宅に入居」の3項目を示す。 注9)充足率について,応募倍率が1 を下回ることはごく稀で ・経過年数平均 47.8年 ・住戸面積平均 41.4㎡ ・高齢化率平均 78.9% ・単身率平均 65.6% 建物が古い 単身高齢者多 家族世帯向 住戸面積大 ・単身高齢世帯 への支援 ・コミュニティ バランスの向上 2戸1化 建て替え 高齢者支援の拡充 転居支援 子育て支援の拡充 ・経過年数平均 26.5年 ・住戸面積平均 58.4㎡ ・高齢化率平均 57.6% ・単身率平均 34.8% CL-R1,2/ CL-A3,4 類型の組み合わせ特徴課題介入方法 CL-R3,4/ CL-A1,2 ・高齢化/単身率の 現状維持 ・居住支援の強化 表9 類型ごとの各市営住宅への介入方法 − 59 − あり,その場合随時募集を行って充足している(建替・修繕, 災害対応などの緊急時に備えた予備などの政策空き家以外に 空き室はない)ため,本稿では検討を行っていない。 注10)経過年数は,最終改築後からの経過年数である。 注11)クロス集計における独立性検定の計算方法について表10 に示す。 注12)現在までのA 市市営住宅の入居基準では所得が基準以下 であることを前提に,単身高齢者,単身障害者,養育が必要 な子がいるなどの家族世帯が入居対象者となっている。今後, 社会的動向を踏まえて,若年単身者への枠の拡大(児童養護 施設出身者や保護観察の対象者等の受け皿,ステップアップ の場として)をはかる方針が検討されており,婚姻関係・血 縁関係にない単身者どうしなどのパートナーシップ入居等の 他の自治体の事例についても,あり方検討の審議会では情報 収集が行われている。 参考文献 1)国土交通省,住生活基本法の公布・施行について<https:// www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jyuseikatsuho/ jyuseikatsuhyodai.html>2021.1.12 参照 2)国土交通省,住宅セーフティネット制度について,<https:// www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_ tk3_000055.html>2021.1.12 参照 3)米野 史健, 五十嵐 敦子,民間賃貸住宅における高齢者等を 対象とした居住支援の特徴と効果-特定非営利活動法人が福 岡市で実施する居住支援活動の事例より-,日本建築学会計 画系論文集,2011 年 76 巻 661 号 p. 663-671 4)中園 眞人, 大庭 知子, 佐々木 俊寿,RC 造2K 型住戸におけ る住戸改善前の高齢世帯の住まい方 : 公営住宅ストックの高 齢世帯向け住戸改善に関する研究 その1,日本建築学会計画 系論文集,2006 年 71 巻 609 号 p. 107-114 5)厚生労働省,参考表 老人保健施設の入(在)所者と特別養 護老人ホームの入所者の比較 ,<https://www.mhlw.go.jp/ www1/toukei/rhoken99_8/sankou.html>2020.11.10 参照 6) 東京都福祉保健局, 東京の高齢者と介護保険 データ 集,<https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kourei/ shisaku/koureisyakeikaku/08keikaku0305/08sakutei/ iinkai01.files/data6.pdf>2020.11.10 参照 0.24 1.46 0.85 0.48 1.46 0.64 1.57 0.36 1.63 2.96 0.30 0.52 1 2 3 4 1,2 3,4 5 CL-A 実数値/ 期待値 CL-R 各類型の組み合わせにおいて, 独立性検定をカイ二乗検定で 行った。 有意水準は5%未満とした。 類型 CL-R1,2 CL-R3,4 期待値 実数値 CL-R5 合計 P 値 <0.05 0.000026 独立性検定(カイ二乗検定)計算例 1 12 4 17 4 24 6 34 11 5 13 29 5 1 1 7 17 34 29 7 21 42 24 21 42 24 4.10 8.21 4.69 8.21 16.41 9.38 7.00 14.00 8.00 1.69 3.38 1.93 87 87 合計 CL-A1 CL-A2 CL-A3 CL-A4 合計 CL-A1 CL-A2 CL-A3 CL-A4 表10 カイ二乗検定の計算例 − 60 −

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大学生を対象とした成長期の住環境の評価 −「振り返り」に基づいた住環境の有り様に関する研究(1)

2020-07-16 16:43:24 | 書架(住宅関係)

こちらからダウンロードできます

地域施設計画研究38 20207月日本建築学会
建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.38, Jul., 2020

 

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