建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

建築・環境計画研究室

この研究室は,2006年4月に立命館大学にて開設され,2009年10月に東京電機大学に移りました.研究テーマは,建築計画,環境行動です. 特に,こどもや高齢者,障碍をもつ人々への環境によるサポートや,都市空間における人々の行動特性などについて,研究をしています.

*当ページの文章や画像の無断引用・転載を禁じます*

(記事紹介)日本社会が直面する、認知症「1300万人」時代

2019-08-28 09:52:37 | 書架(高齢者関係)

『日本社会が直面する、認知症「1300万人」時代』

Yahoo!ニュース『日本社会が直面する、認知症「1300万人」時代』〈https://news.yahoo.co.jp/feature/565?utm_source=news.yahoo.co.jp&utm_medium=yahoo&utm_campaign=163260〉(参照 2019.8.27)

 

 団塊世代が75歳以上の後期高齢者に達する2025年に、認知症の人が最大730万人にのぼると厚生労働省が発表している。軽度認知障害と合わせると総数は1300万人に達する。

 

・「認知症社会」で顕在化する問題

 認知症社会となることで顕在化する問題として、例えば、高齢ドライバーの問題がある。認知症の人が被害者ではなく、加害者になる側面が大きくなる。免許証の自主返納制度を推し進めているが、地方では鉄道やバスの路線廃止によって、高齢ドライバーが運転を止められない背景も浮かんでくる。

 さらに、「認知症社会」は、救急医療の現場にも影響を及ぼす。2025年、救急搬送の3~4人に1人が認知症の疑いがある人になると予測されている。現状でもすでに救急医療は逼迫しているが、それがさらに悪化し救急医療を崩壊させてしまうのではという懸念も強まっている。加えて、認知症の人を受け入れる施設の不足も深刻になり、特別養護老人ホームへ入所を望みながらも叶わない人は62万人に達するとみられる。また、介護人材も38万人足りなくなると推測されている。

 

・「認知症社会」への各所での対策

 対策として注目されているのが、軽度認知障害の人にアプローチすることである。最新の研究では具体的な手立ても明らかになり、愛知県大府市で取り入れられている。その結果、注意力や処理能力などの認知機能が回復するなどエビデンスも数多く出ており、早期対応の効果が認められている。

 しかし、早期対応の必要性はわかっていても、認知症の疑いがあることを認めたがらない傾向があり、検査に踏み切れない人がいる。それを解消するため、埼玉県幸手市では、認知機能の検査を受けるよう呼びかけるのではなく、普段から高齢者が集まる公共施設などを探し、医師や看護師が出向き会話することをきっかけに健康相談を行うことで、早期対応へと結びつけるという取り組みを行っている。さらに同市ではお年寄り同士が集まることができ、会話の糸口から自然に相談できる場を作るプロジェクトも行っており、的を絞らずみんな丸ごと面倒を見るという方法が対策の参考になると評価されている。

 企業でも、「認知症社会」を見据え、商品やサービスのあり方を「認知症社会」を前提としたものに転換すべきという考え方が出てきている。ヘルスケアや介護といった従来のジャンルにとらわれない企業の対応が「認知症社会」を支える上で重要な役割を持つといえる。

 

 

・要約元記事

Yahoo!ニュース『日本社会が直面する、認知症「1300万人」時代』https://news.yahoo.co.jp/feature/565?utm_source=news.yahoo.co.jp&utm_medium=yahoo&utm_campaign=163260〉(参照 2019.8.27)

(本記事はゼミで行った要約練習です。)

 

(押尾萌加)

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実際にものをつくると見えること。

2019-08-23 17:25:40 | 雑記
ゼミ合宿も終わり、M2は新技術展示会のブース設計&設営の
プロジェクトの追い込みです。


出展される、ロボット・メカトロニクス学科や理工学部の先生方と打ち合わせをしながら、展示品の大きさや数、見せ方を共有し、動線や滞留(技術協力や共同研究につなげるための話し合いに持ち込みたいわけなので)の場所を設計し…
そして実際に作ります。

大型制作は、一年生の「ワークショップ」で木工のスタジオにいて経験のある人も、高校の技術家庭科以来という人もいます。


今日は木材への着色で、水性塗料をムラなく塗るには?→全体に水を塗るか霧吹きで湿らせてから塗ると、ムラにならないよね。とか、やりとりがあって面白かったです。
当たり前のようでいて、CADやイラレで「塗り」マークを押すのとは全く違う、ものづくりです。


今度は次の学年を中心に、住宅のDIY改修プロジェクトもあるので、それも楽しみ。
千葉のキャンパスの工房が使えなくなったのは残念だけれど、このキャンパスならではのやり方を模索中です。









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2019ゼミ合宿3日目(すみれ乳児院、道の駅益子他)

2019-08-22 18:30:41 | 研究日誌
おはようございます。ゼミ合宿3日目です。朝食がバイキングなのですが、うちの人たちの場所取り小物、ホチキス…ホチキスか。静かにツボです。
(人は物を置くことで空間の占有権を主張する。ある場所に置かれた物は、それを置いた人の存在と権利の象徴である)


今日はまず、すみれ乳児院 さんを見学。


家型の建築、五人定員のユニットを「子供たちの家」として、それらが連なる長屋のようなあり方を、というコンセプトとのこと。
(中の写真や詳細は施設の特性上、載せませんので、ご興味おありであれば設計者さんからのご紹介などを参照いただければ)
現場レベルでは環境づくりには悩みもあるようで、これからも使いながら育っていくのですね、ステップ・バイ・ステップ。

ありがとうございました。



さて、施設見学の日程はここまで。


かぼ茶庵 さんでおしゃれ&美味しいお昼をいただき、

陶芸体験。


・(形を作るときは)優しさが大事
・厚みが大事(薄いと欠ける)
・(馴染ませるときは)優しいだけじゃダメ
・(広げたあとはすぼめられない)取り返しはつかない、しかしやり直しはできる
・人間と同じ
とのことです。


確かに。性格が出る感じします。

出来上がりは1ヶ月半後。焼き上がり楽しみ。三年生に評価してもらって、コンテストにするそうです。


みんなして落ち込んでいるヒマワリの横を通って、

道の駅益子 へ。



これも構造面白いですね。


ディスプレイがおしゃれ。

おしゃれ。

移住促進センターもあります。

先日、仙台の多世代複合施設アンダンチさんで「デザインで、施設(福祉)と地域をつなぐ」というコンセプトをうかがいましたが、おしゃれであること、は本当に力を与えると感じます。
価値観や、誰に向かって発信しているかのメッセージも含みますし。


ゴミ箱もおしゃれ。


そして去年に続き大雨に降られるゼミ合宿、こちらで日程終了です。


帰ってきました。


恒例、一本締めにて。
おつかれさまでした。

幹事さん、企画や連絡調整、準備、しきり等々、ありがとうございました。



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2019ゼミ合宿2日目(ふみの森もてぎ、茂木中学校、他)

2019-08-21 23:12:23 | 研究日誌

おはようございます。ゼミ合宿2日目です。

誰一人起きていません

2時間弱の行程、午前中はこちら



図書館を中心とした複合文化施設「ふみの森もてぎ」さん見学。

 

元々この場所には創業320年の造り酒屋さんがあり,その建物の一部や景観を町の歴史・文化として残しています。

写真のように,外から見ると蔵の存在が認識されますが,建物の中に入ると空間が繋がっていて,「蔵」のようには感じられません。

 

「仕込み蔵」を一旦解体し,再び組み立てて作られたギャラリー。アート作品の展示等を行なっています。町にアーティストを育てることも企図しているとのこと。

(元々は一部二階建てで床があったが,その床板は取って,「質蔵」の方に使われている)

 

「質蔵」を引きやで移動し,改修してギャラリースペースに隣接して設置。柱がすごい。

 

茂木町は,町の面積の7割を森林が占める「森と木の町」。

林業の活性化の意味でも,町有林産(合併された村が,村の財産として植林し,その後3村1町の統合時に町の財産となった)の木材を使い、さまざまな構造形式で大空間をつくっています。

それも一般に流通する径の材で、準耐火地域に中規模建築を実現することにより、都市部や公共施設での木材の活用のモデルになることをコンセプトにしているそうです。

この空間体験は,木や構造への興味関心を育ててくれそうです。

 

図書館の運営上の特徴として,こちらでは一般的に使われる十進分類ではなく,独自の図書整理システムを採用しています。





この独自の図書整理システムによって,本と人との出会いを演出し,他の図書館とは異なる,この町ならではの「楽しい」図書館を実現したいと考えられたそうです。


例えば、子供の本のゾーンの前に子育て世代の関心事である料理や子育て、教育の本棚が配置されています。

まちづくり・都市問題と教育が配架されていることに目が向きます。

子育て世代に地域の担い手としての活躍を期待するメッセージ?



充実のラインナップです。

 


ロゴを立体化した書棚は,図書館エントランスに象徴的に置かれています。

高校生さんの特集棚があるなど,利用者との関係づくりを考えられているのも特徴です。

 

元々,茂木町には正式な図書館がなかったでそうです。

カフェ(集いと食べることを共にする場),情報発信やアートという機能を複合した図書館は,人と人,本と人,アートと人との出会いの場として,本を介した豊かさを町にもたらしています。







 

 

 

ふみの森でご紹介いただいて,こちらのプロジェクトの際に参考にした先行プロジェクトである「茂木町立茂木中学校」さんを見学。







町有林産の木材を使ったRC+木の混構造校舎(純木造にしたかったが,法令との兼ね合いでこの構造に落ち着いたとのこと)。

なるべく丸太のままの姿を活かす、シンプルな矩形で使い勝手の良い教室周りをコンセプトに。

平面は単純ながら空間は丸太がリズムを、丸太の柱と壁の間の空隙が陰とバッファをつくり、独特の心地よさ。

 

 

 

電車と路線バスを乗り継いで,宿に戻ります。ローカル線の旅,いいですねえ。

 


予定になかったルートですが途中途中にいいものが見られて楽しい。益子駅,構造が素敵。

 

2日目のゼミ,の横ではまったりタイム。

ちなみにみんなが着ているこのTシャツ,


昨年の卒業記念パーティに合わせて学生さんたちが作った特製。すごい,そしてすごい。

では また明日。おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

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2019ゼミ合宿1日目(小俣幼児生活團、鹿沼市立粟野小学校、他)

2019-08-21 01:32:59 | 研究日誌

今日から二泊三日のシン・ゼミ合宿です。

 *シンじゃないゼミ合宿の話はこちら



全員集合〜。
定刻通りの出発 今年は栃木方面。行ってきます。



ナンバーがぴったりじゃないですか?
1010=せんじゅう=千住 狙ってくれたに違いない。



おー、今年は大型バス 余裕があります 研究室より広いんじゃないですかこれは?(泣)

 

今年のゼミ合宿はこちらから。


‪栃木の「小俣幼児生活團」さん訪問(3年ぶり3回目)。



江戸幕末期からの古民家(元機屋敷)を利用して、太平洋戦争直後期に保育所を始めた事例。元のお屋敷の方は、建築史の先生と、歴史的建築物の福祉用途での動態保存について研究したとき、その契機になるヒントをいただいた事例なんです。

 

モンテッソーリ教育とアドラー心理学を取り入れた保育が特徴。

なお、こちらの園舎の歴史的価値、また歴史的建築物の動態保存のあり様は書籍『福祉転用』に詳しいです。

34回35回の地域施設計画研究シンポジウムで論文も出しているので興味があれば論文誌「地域施設計画」をどうぞ。

新棟は、佐賀井尚先生の設計で、栃木のマロニエ建築賞もとられています。

モンテッソーリ教育の考え方に基づき,0〜1,2,3〜5の異年齢保育を実施,

3〜5の保育集団は2つに分かれ(それぞれ,保育者の名前をとった組名前。例えば山田組みたいな。こういう考え方はユニットケアでも採用されることがある),それぞれの保育集団が一つの「家」を拠点とします。

その思想を体現した建築空間(群)。設計にあたっては,設計者と保育の話を徹底して行い,なんのための建築を作るのかということを共有することを大切にされたそうです。

5歳児の就学準備以降のための1日1時間の設定保育のほかは全くの自由保育としており,こどもは自分の保育集団を離れて他の集団に混ざることも自由。





特別支援も気負わずに。そもそも個を大事にしている,そもそも「できないこと」ではなく「できること」に着目する保育,であるので,特別支援教育だなんだと競う必要がないそうです。

小俣幼児生活團さんは、個の自立を大切に、普通であることを目指した本物のナチュラルな保育所です。

(本物であることが「普通」じゃないのが問題なのかも)

 

ありがとうございました。

 

 

 

お昼ご飯。銀釜さんで釜飯。

めいめい,好みの釜飯をいただきました(めちゃくちゃたくさん種類がある)。女将さんご自慢の通り,おこげが美味しい。ごちそうさまです。

 

銀釜さんの並びには閉鎖された元映画館がありました。これまたグッとくる景色。

 

午後は鹿沼市立粟野小学校さん見学。こちらも栃木県マロニエ建築賞受賞(近代建築2017年に掲載)。

(パノラマ撮影で歪んでいますがもちろんまっすぐです…)

公募式プロポーザルで設計者を選定。

市域の7割が森林という鹿沼市,「木のまち鹿沼」ならではの学校として,地場産材にこだわった木造二階建校舎。

 

オープン図書室(仕切れる部分と、動線空間を兼ねる本棚スペースが連続)が良いです。



 

こちらは,校舎の目玉である「夢階段」。

2階に配置された図書スペースはこの大階段とつながっていて、「めいめい好きな本を手に取り、座って読む」が日常的な風景になる。

 

学校建築にとって,行事や節目などに「記念撮影ができる場所が大事」とはよく言われますが,ここももちろん記念撮影スポットなので。

なんか半端なタイミングの一枚ですが? 粟野小学校の随所に木のブレースが使われていて印象的なので,ブレースのゼスチャーをしてみました,Xではありません(ジャンプしません)。


各所,それぞれのスパン等の特性に合わせたトラスが組まれています。

 

建築として,あまり凝った仕上げや納め方をしていないので固くなさ、素朴さが全体的な魅力に繋がっていると思います。

全校児童120人弱の,基準上「小規模校」ですが,特別教室の兼用などの計画要件の整理も確認できました。

 

ありがとうございました。

 

 

 

一路,今日の宿へ。鬼怒川温泉です。

夕食はバイキングだったのですが・・



日本酒のバイキングっていうのは困りますねえ(ニコニコ)。日替わりで6種類なんですって。困りますねえ。

わいわい食事を楽しみ,

研究テーマが近い学生さんたちのグループごとでのゼミを12時過ぎまで。他の人たちは裏番組で宴会。

お疲れ様でした。また明日。

 

 

 

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既往研究レビュー、大量に読む(ざっくり関連論文の概要を把握する)の、どうやってますか?

2019-08-16 18:47:55 | 研究日誌

研究テーマの設定と、研究を進めたあとの論文まとめのあたりで(初学者は)特に取り組むことになると思われる既往研究レビュー。
先日,既往研究レビュー(論文引用)を終わらない食物連鎖に例えましたが,具体的にはどんな感じでやってますでしょうか。
論文読んでね調べてからゼミで発表してねと言われて「えっ、どうすれば?」な学生さんが大量発生する季節が間近では?

いろいろ思想も流派もあると思うのですが、それぞれ自分はこういう風にやってるよ、を開陳するといいかなと思いまして。
経験則なので、またこの分野ではということなのでどなたにでもあてはまるわけではないと思いますが、一例まで。

1、何で調べる?
2、まず関連分野の論文の概要を把握したい!
3、主要な論文をピックアップする
4、関連論文が見つからないときは?
5、「検索」を超えるのは…

の順で簡単にまとめます。

 


1、何で調べる?

まずは検索ですね。

分野にもよりますが、日本の論文を探すのに、初心者にとっても使いやすいサイトとして,個人的には CiNii をお勧めします。好みがあると思いますが、個人的にはこのサイトが見やすいと思っています(慣れかも?)。
廃止の危機を乗り越えてくれて良かったです。

他に、 J-STAGE も日本の論文検索では基本。

 * 手前の話で恐縮ですが,建築関連の論文を調べるならば日本建築学会の論文検索を使ってみてください。上記サイトよりも幅広く,学会関連の論文(査読付論文集である各系論文集や技術報告集の他に,準査読付論文誌である各委員会が開催するシンポジウムや支部大会などを含む)がヒットします。

海外文献も含めて調べるには、 Google Scholar 、 Web of Science がスタンダードかと。

検索の際には,キーワードが想像と異なると,思うような内容がヒットしないことがあるので要注意。できるだけ,「他の言い回し」を想定して調べます。

例えば,「集合住宅」の「改修」について扱った論文を調べたいときは「集合住宅/マンション/共同住宅」「改修/リフォーム/リノベーション」のように,語の幅を広く設定します。

 * /(半角スラッシュ)は or検索(○○または△△の語を含む)です → サイトごとに入力のガイドラインないしフォーマットがあるので,その方式に従います。

なお,論文等の文献を検索したときは,「どのような設定で,何月何日に検索したか」を,必ず記録しておきましょう。再現性がない結果は信用できないからです。検索した結果(検索結果の画面)を「pdfに印刷」してデータとして残しておくことでも,替えられます。

 

 

2、まず関連分野の論文の概要を把握したい!

上記のサイトのいずれか(複数のサイトで調べることをおすすめしますが,まずは一つだけでも)で,論文が30件ヒットしたとします。

その「本文」を全て読むのは正直なところ大変だと思います。もちろん読んだ方が良いのは間違いないですが,それを最初からやってみよう!というのは素人が準備もなく富士登山に出かけるようなものかな,と思います。サンダル薄着で富士登山はちょっと待った。

まずは富士山も含めて,どんな山(論文)があるのかを知りたいですよね,登るにしても登らないにしても。

 

それで 「ざっくり読み」のコツ ですが,まずは論文の「目的」「手法」「まとめ」だけ読む。査読付の論文って8pとか10pとかあります,小さい字で。最初はとっつきにくし,読みにくいものです。ですからざーっくりいってみましょう,最初は。

    1. なんのために(目的):だいたい,第1章の最後の方に書いてあります。研究の「背景」を受けて,「そこでこの論文は〜を目的とする。」とか,「本稿では〜を明らかにする。」などのように書いてあります。そこが目的。
    2. どのように(手法):だいたい,第2章くらいに書いてあります。「研究方法」とか「研究の手法」などの章/節タイトルがついています。観察,実験,アンケート,インタビュー/ヒアリング,などの手法が記載されています。
    3. まとめ:論文の最後の章です。「本稿のまとめ」「まとめ」「成果と提言」などの章/節タイトルがついています。

ここだけ! まずは ここだけ読む=その論文の目的・手法・まとめ(成果と提言)を見つけられるようになる ことを目指してみましょう。これなら本文をまるまる1本読む時間で,10本の論文の概要を把握できます。

これは,本文全てを読み込むのはそれくらい大変だということの裏返しでもあります。

 

最初から一つの論文の全てを理解することは難しいですし,その論文も書かれるためには他の多くの論文との関連の中で成り立っているので,「一つを深く」の前に「複数を概要で」理解してから,深く読むべき1本を決めることをお勧めします。

30の論文から論文タイトルだけで3本読もう!と決めないで,30の論文の概要だけでも把握することで全体像の枠組みを自分のなかにもつ。おぼろげでも。そこから始める方が良いと思います。

 

 

3、主要な論文をピックアップする

例えば30の論文の概要が把握できたところで,では3つの論文をピックアップしてじっくり読んでみることにした,とします。2つではなく3つです。相互の関係を理解するには3からです。

3つの論文のピックアップはどのようにしましょうか。作戦を考えてみましょう。

以下は例です。要は「その論文3つをピックアップしたのはなぜ?」と聞かれたときに,その理由をきちんと説明できるように決める=コンセプトを持つ,ということです。

    1. 直近からさかのぼって系譜で読んでみる:直近5年間の論文のなかで,興味のあるテーマに一番近いと思われる論文を一つ選ぶ。その論文の「参考文献」として挙げられている論文を一つ選ぶ(遡及1)。選ばれた遡及1論文の参考文献となっている論文から一つ選ぶ。ここまで行くと,おそらく最初のリスト(例で挙げた,検索でヒットした30本の論文)からは外れている可能性も高いと思います。そのくらいさかのぼることで,研究論文が幅広い関心や関連のなかで位置づけられていること,テーマの拡がり,に気づくことができます。
    2. グループの研究成果をたどってみる:論文リストの中で,著者(のグループ)が重複していることがあります。その数が複数である場合,そのテーマについてまとまった研究成果,特に一連の研究成果(○○に関する研究その1,その2 のようにナンバリングされているなど)がつくられていると判断できます。そのような一団の研究論文を読むと,大きなテーマの中での課題の設定(大きな問題を,小さな課題に切り分けて,研究を組み立てていく)の仕方や,研究の発展の例として,理解することができます。
      • 研究論文の筆頭者が異なる場合でも,セカンドやラストの著者が同じ名前であることで,判断します。研究室のPI(Principal Investigator ラボの責任者)のもとで,学生さんや研究員さんが筆頭著者となって論文を書くので,同じ研究グループのなかで筆頭著者の名前が異なるのです。
    3. なるべく分散して読んでみる:著者(研究グループ),年代,着眼点,のいずれも重複しない論文を選ぶ。その読み方ですとお盆(設定したテーマの範囲)のなかに豆粒を投げ入れたような,「点」の読み方になりますが,これはこれで,テーマのなかの拡がりを散漫ながら眺めることができます。
    4. 指導教員に聞く!:なんだかんだ言って,最終兵器はこれ。指導教員は学生さんよりもたくさん論文を読んでいますし,著者を知っている=どのような研究テーマ/方針のもとで各論文を発表しているかを概観しています。そういう人でなければ学生さんを指導する資格はないわけですが。 ただ,手ぶらで行って「何を読めば良いですか?」という姿勢では,自分の身につきませんから,もちろん上記のような概観レビューがあって,このなかから「こういうことに興味がある」ので,「まずこの3つの論文を精読しようと思うが,ご意見ください」のような【方針案を提示した上で意見を求める】聞き方が良いと思います。

最初に3つ読んでみたら,つぎの3つ,となっていきますから結局はおおかたに目を通さないといけないのですが,最初の道筋があると,イメージがしやすいですね。

 

 

4、関連論文が見つからないときは?

 「この研究テーマについて,関連研究はない」と断言している論文や発表が時々あるのですが・・「ないわけないでしょう」が大方の研究者の反応(心境)ではないかなと思います。

うまく見つけられない,というときは,次のような視点で考え直します。

・調査対象が異なっても同じ研究手法を使っている論文はないか?

  • 調査手法や分析手法,評価指標などが例として挙げられます

・調査対象が全く同じではないが類似しているので,関連研究と見なせる(=むしろ「読まないといけない」でしょう・・)論文はないか?

  • 私どもの分野では例えば,「ユニットケア型特養のユニットの空間構成」をテーマにする時に,「グループホーム」の研究を調べないわけにいかない,とか,「認定こども園」をテーマにする時に「保育所」や「幼稚園」を外せないとか,そんなイメージです

・調べている論文誌が少ない,違う可能性があるのでは?

  • 私どもの分野では例えば,「日本建築学会」にはなくても,「都市住宅学会」や「日本都市計画学会」ではメジャーなテーマである,など。また,例えば保育所の空間構成についての研究であれば計画系の論文の他,保育系の論文(保育学会,こども環境学会等)にもあたるべき

 

また,一つでも論文などの文献を見つけたら,その文献が参考文献としている論文・書籍等をたどります

 

「ある」ことを言うのは簡単なのですが「ない」ことを言うのは本当に難しいです。どう調べても見つからない,というときは「管見では見られない」などと書くのが通例です。これは「自分の視野が狭いので見つけられません,査読者や読者諸兄には思い当たるかもしれませんが著者の調べではこれが限界なのでご寛恕ください」ほどの意味で,ことほどさように「ない」を断言することは難しいです。

 


5、「検索」を超えるのは…

以下は上級編です。卒論生の方は興味半分でどうぞ。修論生の方は無理にでも興味を持って,そして博論の必要のある方は興味があろうがなかろうが必要ですから,どうぞ。

 

上記で基本としたのは「検索」による論文の調べ方ですが,検索には限界にして最も大きな欠点があります。

それは,検索する人の経験や想像力を超える知識が得られない,「想定」の少し外側にある,または自分の想像を大きく拡げてくれる論文には出逢えないということです。

論文検索サイトには,大手通販サイトのような「その論文を読んだ人はこんな論文を読んでいます」というような お勧め は表示されません。

例えば集合住宅のことを「共同住宅(法律上の呼び名)」とも表記するということを,検索する本人が「知らない」場合には,そのキーワードを使った論文はヒットしません。実態としては自分の興味にぴったり合う論文であったとしてもです。

知識や経験のない人と,ある人とでは同じ検索サイトを使ったとしても見つけられる論文の数や質には大きな差異があります。まだ「検索」を十分に使いこなせない,すなわちキーワードとなりうる語,関連する分野の語彙に自信のない方,また自分の可能性を拡げたいと思っている人に個人的にお勧めするのは,

あまりにアナログで非効率的に思われると思いますが,結局のところ「全て読む」です。

 

全てと言っても世界中で発行されている論文の全てを知るのは不可能なので,まずは和文,自分の分野に最も近い学会の,それも主要な論文誌(どこの学会にも,複数の論文誌の中でもフラッグシップとなる査読付論文誌があります)だけでも,さらに目次(論文のタイトルの一覧)だけでも,そのうち最近の10年分だけでも,のように絞り込んででも全部読む。 

 =属性別サンプリング(興味を持った論文をピックアップ)ではなく,集落サンプリング(興味があるかどうかはともかくある範囲の論文を全てピックアップ)を試してください という意味です

論文のタイトルは,その論文の主題=やりたいこと分かったこと主張したいことのエッセンスが詰まった,最高のキーワード集です。論文タイトルには「対象(フィールド)・着眼点(視点)・調査や分析の手法・提言」がコンパクトにまとめられています。

(‥論文を書く側になったときにも思い出してくださいね,論文タイトルにはそれらをまとめます。)

 

どんな言葉が論文のタイトルとなりうるのか,そもそも研究方法や視点にはどんなものがあるのか。それを知るにも論文の「全部読み」は効きます。時間はかかりますが,研究を始めるとき(できれば卒論レベルからでも)と,論文をまとめるとき(想定するレベルは博論相当です)の2回,最初はタイトルだけ。論文をまとめるときにはより多くの論文が自分の興味関心の網にかかってくるでしょうからそのつもりで,本文まで。最低限その2回は機会をもつことをお勧めします。

  

  

既往研究レビューや文献探し,こんな風にやった方が良い,やるべきだ,こんなアイディアもある,等々あればぜひ教えてください。 

 

 

 

 

 

 

 

 

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食物連鎖と論文引用の連鎖の話 〜お魚こわい人は途中までにしてください〜

2019-08-15 21:03:02 | 雑記

この話知ってますか、昔話の。

よいしあん谷、これは漁師が食物連鎖を目にして、自分もとって喰われるのではと、殺生をやめたというお話。

 

類話もいろいろあります。漁師が見ている前で水面に虫が落ちた。その虫を食べた小魚を少し大きな魚が食べ、それを鳥が食べ、ちょうど良いと漁師は鳥を撃ち取った。

その鳥を成果に帰ろうとしたが、これを食べたら次に食べられるのは自分ではと思い、鳥を置いて帰ろうとすると、頭の後ろで大きな舌打ちの音がした、とか哄笑の声がしたとか、そんな類話もあります。そちらの方をご存知の方もおいでかも。



これらの日本昔話では、食物連鎖から降りることをオチにしていますが、研究論文においては、次々に引用が進み続けることが理想形だと思います。研究の発展、純粋な積み上げの意味でも、テーマが次第に変容しながらの派生の意味でも。

論文Aを引いた論文Bが次に論文Cに引かれる。その論文Cはどうなるか?

それが良い論文なら、続いて他の人が論文Dに引いてくださるでしょう。光栄なことです。

ちなみに、いつまでもコレは外せないと引かれ続けるバケモノ論文Λ(ラムダ)みたいなのもあります。

この引用される件数は,被引用件数といって,論文の質を測る指標の一つになっています。どれくらい読まれているか,どれくらい他の人の研究に影響を与えたか,という指標になる,という意味です。

(なお,被引用件数は,それだけが単体で論文や研究の指標にはなるわけではありません。分かる人にだけ分かるという論文なのかもしれないし,いつ,誰に,その価値が見出されるのかによって,論文の評価のすべてが決まるわけではないので。上記は,ひとつの指標として見られていますよ,程度の記述です)

 

いつまでもこれは外せませんねと引かれる論文Λは特殊ケースですが(そんな論文はなかなか出現しない)、引用の連鎖が後進にはとても勉強になります。

こういうテーマなら、こんな論文を参照して自論文の位置付けを得れば良いんだな。ということもわかりますし、関連の話題がどのような広がりを持っていて、どこまで明らかにされているか、自分がオリジナリティを発揮すべきはどのポイントか、ということのガイドでもあります。

山に登るときに、先人が残してくれたロープみたいなものですね、ときどき古いアンカーは無意識に頼ると体重かけたところでボロっといったりして、信用しきってはいけないよってところもそっくり(常識は上書き更新されていたりするので、古い論文の前提や成果をそのまま信用すると危ない☆)

参考文献レビューには私の場合は2段階あって、最初にテーマ設定をするとき。「どこにテーマを据えるか」を探索する段階で、いろいろ読みます。研究企画書を書くときに、ザーッと調べるイメージです。
最後に、論文を書き上げるときに、改めて得られた成果から逆照射して,関連する論文を洗い直して「今書いている論文の位置付け」を建てた上での論旨構成を組み立てます。その時にもう一度調べます。

 

本学は3年生の後期から研究室配属されて研究に取り組むスケジュールですが,そのように研究に取り組む時期が早まっている大学が多いように聞きます。お盆明けから気合入れて研究テーマを探すぞという学生さん,また卒論修論の終盤半年にかかる学生さん,既往研究レビュー,がっつりやりましょう。

引用する者は引用される,です。

 

で、なんで今日はこんな記事になったかってことなんですけど,食物連鎖系苦手な方、魚さばくの見るの苦手な方は以下パスしてください。

 

 

 

 

 

 

 

 
























もういいですかね? ちゃんと自主避難しました?






 

 

 

 

 





今日買い物行ったんですね。立派なハマチですねえ,安いですねこれが一尾980円ですよ。

そしたらね、

あ…コレ食物連鎖じゃん… ってことで、

買ってきた。どーん

さばくぞー

まずその口に入ってるやつをとるぞ。

えー、ずいぶん食べてるねキミ
この豆アジもずいぶん新鮮です。からだも目もキラキラ

 

…もしかして,これ口に入っているだけじゃないんじゃないの? 飲み込んでるやつもあったりす,


いやこわ こわいわ こんなん想定外だわ(胃袋あまりにグロいので途中省略しました

こわ,なにいやこんなん初めて見た・・ 

 

で,なんやかんやあって、

この立派なハマチは、

お造りになりました。精霊送りの晩の食事で皆さんが集まるので、家紋(下がり藤)に見立ててみました。

(中落ちのところとかをなめろうにして添えてある)


思いつきで盛り付けたんだが思いのほか似てた。

 

豆アジの方は,カラッと唐揚げにして南蛮漬けにしました。骨まで食べられる。

食物連鎖、めぐる命の盆の終わり。明日から東京復帰です。原稿書かなきゃ。


 



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裏ゼミ合宿2019〜川で戯れ、肉をむさぼり食う休暇〜

2019-08-13 14:26:46 | 研究日誌

 

こんにちは。M2岩波です。

 

先日裏ゼミ合宿へ行ってきました。

裏ゼミ合宿とは、お盆休みで大学に入れない期間に全力で遊ぼうという毎年恒例の行事です。(たぶん)

お盆期間なので毎年割と少数らしいのですが今年はなんと、総勢16人の大所帯で参戦でした!


今年は東京の外れ(?)で川遊び&コテージでBBQを楽しみました〜〜

お天気にも恵まれ、はしゃぎまくりでございました。

滝行する人、寝だす人、川遊びには様々な楽しみ方が存在しますね。

研究以外でも常に全力のあすか研。夏を満喫した川遊びでした〜

タイムリーな「こがまさんおめでとうポーズ」でもパシャリ。


 

そして、そして、、肉!!

 

川遊びのあとはBBQの時間です。

コストコで大量買いしたお肉や海鮮を焼きまくって食べまくりました。

肉を焼く人々。ひたすら食べる人々。

性格が出ますね。

卒業生の高橋も参戦。ずっと楽しみにしていたらしいです。

肉焼き隊。

学年問わずみんな仲が良くて素敵な研究室です!(アピール)

花火もちゃんとしました〜〜

食後のゲームタイムはイントロドン。

M2が圧勝。さすが、生きてきた年数が違いますね。(私は戦力外)

翌朝は料理男子たちが余った肉を調理してくれました〜

よくできた方々です。ちなみに女子ーズはテーブルで出来上がるのをただただ待っておりました。


盛りだくさんな2日間、とっても楽しめました!

素敵な思い出を胸に、それぞれまた怒涛の日々を頑張って生き抜きましょう〜〜!!


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【設計コンペ】(課題:「ダンチを再考する」) そして家族(イエゾク)になる。

2019-08-12 13:08:39 | □研究・設計業績(論文/プロジェクト等)

2019年度支部共通事業 日本建築学会設計競技 課題:「ダンチを再考する」

 

設計趣旨

ダンチを再考する。

かつて,ダンチは団地族と呼ばれる,小家族で比較的世帯年収の高い,家族形成期の人々の住まいとして,人々の羨望の的であった。そこには,居住者相互の類似性に依拠する暮らしの共同体があった。

時代は流れ,家族の構成や就労状況、生活時間が多様化し,「標準世帯」用住戸群から成るダンチのあり方との齟齬,コミュニティバランスの崩壊が生じている。そこで,一住戸=一家族の住まいを脱却し,その境界線を融かし,一住棟を家とすることで多様な住まい方と家族のための住まいをつくる。

 

階段室ごとの1階から最上階までが,一つの家である。

アプローチを北側から南側に反転し,階段室をセミプライベートスポットとする。既存の骨格を残し、住戸の南北にアタッチドフレームを 設置して耐震性を高め,かつ階段室の踊り場を拡張することで趣味や勉強などの時間・空間を共有する活動の場をつくる。

各家族の部屋を必要最小限とする。セミプライベートフロアには吹抜けを設け,建物荷重を軽減するともに,住まいの機能を選択的に利用する多様な住まい方と,居住者が聴覚や嗅覚、視覚で気配を感じるつかずはなれずの距離感をつくる。暮らしが表出するプライベートスペースは,人々の寄りあいの場となる。

 

住戸=家と従来の家族の境界の融解により,一つの家にともに暮らす「イエゾク」という新しい関係性が生み出される。これは,分解と再構築の時代の新たなコミュニティである。    

 

 

2019年7月

榎村賢,齋藤美優,押尾萌加,張尚灝,岡田一希

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なんでもいろいろ集めて比べてみると面白い。〜トイレの男女サイン

2019-08-11 18:36:27 | 雑記

こんにちは、突然ですがトイレの男女のサインについてどう思われますか?
どうも思わないですか、そうですか、だいたいそんな反応です。
しかし、数を揃えてみるとそれなりに面白いです。というわけで細々と,目についたら事例収集しています。

なんでもそうだと思いますが,いろいろ集めて比べてみると,面白いです。

こちらは講義でも研究でもなく思ったことをメモしておくブログ記事ですので、その程度でお気楽にどうぞ。

今日はここ1ヶ月くらいの収集事例を並べてみようかと思います。

 

基本情報として、トイレの男女の別を、赤=女性、青または黒=男性、の固定された色分けでこれほど しつこく 、公式に示すのは管見では日本だけです。
(観察件数は計30カ国くらいかな?)
アジア各国でも色分けはありませんので、日本だけなんだろうなあと思っています。
なお、ODAなど日本の会社が作った空港ターミナルや高速PA、日本企業に買われたデパートなどではしつこく色分けしているのを目にすることがあります。
その国の文化には(その時点では)合わないものですが、設計者さんは良いものと信じておられるのでしょう。そしてそのまま施工されているところを見ると,「ここの色が違ったところで,何かの思想を強制されているわけではない」ので「特に気にされない」のではないかと思われます。

あれ? になるのは,それが「複数の公共施設を含むどこの施設でも」「常に同じ色で」わけられている時なんだと思います。


なお、男女の別が色分けじゃないってどういうこと? というと、

こんな感じで、というか(これは5月のNYC大学)、「特に色でわけない」。
最近は日本の公共建築でも、両方黒で、かたちだけで区別を示す例は増えているように感じます。
(が、意識が向いているからそう見えるだけかも? 統計を取ったわけではありません。)

 

最近注目して拾っているのは,ポーズ。

「男性と女性の色分け」についてはもう飽和してきた感があるので=先述のように,意識のあるところでは色分けに頼らないようになっているので,今度は「ポーズ」が気になっています。

 

ポーズってなんじゃらほい,というと,


これ…わかりますか,公共交通機関の駅のトイレサインは,だいたいこのポーズです。こちらは関東の地下鉄。

 

某ペンギンの最大手鉄道会社。こちらは構内図から持ってきました。

 

新東名PA。ちなみにこの床サインは「ここなんの事件現場?」な風情をまとっていますが,それはまた別の話。

関東の某私鉄。

 

これらのサインの「ポーズ」,共通しているのは「男性は足を開いて立っている。女性は足を閉じて立っている」ということです。



別のPA。mankindとしての基本のポーズは「脚を開いている」であることが,この「性別を問わない子供」のピクトグラムから理解できます。そして一定年齢以上の女性は「脚を閉じる」。このデザインの思想がわかってきましたね。

 

鉄道駅や車内では乗客に対して,足を開いて座らないでください,周りの人のことも考えましょうというポスターが掲示されることもありますし,車内放送が入ることもある。電車内のマナーといえば,の話題でもしばしば取り上げられます。

一方で,公共交通機関では男性は足を開いているもの,女性は足を閉じているものという無意識へのメッセージをピクトグラムが送ってしまっている。どうなんでしょうこの現象。

 

でもこれは公共交通各社さんが悪いのではなくて,JIS規格の通りのサインを使っているからですね。そちらには色の指定はありませんが。

このように。

ここです。そもそも女性=スカート,男性=パンツ,の「服装の固定観念の強化」についてはまた別の話として,ポーズのことだけ話題を進めます。話題がとっ散らかるとよくわからなくなりますから。

 

ではJISがそう言っているのだから,しょうがないじゃないかというと,こういうピクトグラムを採用している例もあります。


某デパート。関東圏に強いですが多くの店舗を持つ大手です。男性と女性の両足の間隔は,同じです(男性の方の足が太く,パンツルックの表現だと思います)。

同様事例。都内某役所。同じものを使っているかも。



さらに,関東圏某役所。女性の方が脚を開いているピクトグラムはちょっと珍しい。そんなことを見る人はいないと思っているのかもしれない,好感が持てます。

 

ちなみに脚を閉じるピクトグラムの類例ではこちら,


男性はこれは短パンってことでしょうか。伊豆に向かう電車なので…海パンってことなんでしょうか。


私にはHUNTER×HUNTERのギドにしか見えないんですけど,誰も気になりませんか,そうですか。

こんな感じで,例えばトイレのサイン一つに着目して見比べるのも面白いです。サインだけでもいろいろな思想の現れだったりしますよね,「ちょっとしたこと観察」の仲間が増えると楽しいなあ。

面白違和感観察仲間も。

 

これは踏めないでしょ入っていいのこれ? とか



実験なんだと思うんですけどねえ,このサインは。床に描かれたサインは,高齢者や子供への情報提示としては有効だと言われているので(視線が低い),この後各地に増えたら,自信作だったってことなんでしょうね。

ただ別の話,病院のサイン計画で高齢者対応のためにサインの定時位置を思い切って下げたんですよという説明を受けながら見学をした3年後に再訪したら,サインが上の方に付け替えられていて「まあ遠くから見えにくかったってことだろうな」って事象もあったので,どんなものでしょう。要経過観察。

  

 

 

あとサインの話とは全く関係ないのですが,先日訪れたとある駅のトイレは静かな怒りに満ちていて,いろいろとお困りのご様子が伝わってきました。

みんな平和に暮らせるように,お互いに気遣いやマナーができるといいですね。








あまりにも注意書きが多くて,大変なんだなあって思うと同時に,知らない人の分も怒りを向けられているようでちょっと居心地が悪かったです。この駅の方は本当に大変なんだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 





 

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建築計画の変化の最前線を見る。どこにでもある、ある種のクラスタにとっての衝撃

2019-08-10 21:48:28 | 雑記

建築計画は、生まれからして新築の建物のための学問なんです、と、言われています。

 

機能にはそれにふさわしいかたちがあり、機能をかたち化するために整理すること(ゾーニング、ブロックプランなどと)、

機能を効率よく実現しつつ利用者の快適性と両立させること、それを建築のプログラムとして定義すること,を命題として

組み立てられてきた学問だから。決まったルールのもとでレベルを合わせて平等を図る,制度を空間化することと足並みを

揃えてきたから。といった説明がなされます。

(これはある意味で原理的な設定なので,そういうものじゃないでしょ,というクラスタもいます。私も建築計画の大元は

理解しつつ,原理派として建築計画を理解するにはひと世代遅かった)

 

建築計画をそういった(大元として)理解するクラスタに対して,「建築計画ってなんなんだ…? 要らないってこと?」

という疑問を突きつける建物が時々あります,例えば人口動態など建築が担う機能/ニーズの変化が著しい地域に。

また,産業構造が変わって,必要な数量や密度(単位面積当たりの必要数)が刻々と変わっていく水際に。

どんな建物かというと,転用の建物です。それも機能によって導かれる形態とは異なる用途に転用された建物です。

 

そういった建物は,普通のような顔をしてそこにあるので,パッと見ても特に何も思わないかもしれません。

ああ転用なのかな,くらいの感想かもしれません。が,多分こんな記事を読んだ後だと,探してみたくなると思います。

面白いところだと,元銀行のデイサービス。元回転寿司のグループホーム。元コンビニの保育所,元酒蔵の小規模多機能。

 

それから,

元ガソリンスタンドの唐揚げ屋さん(テイクアウト専門)。

電動自動車の増加や人口減で,地方だとガソリンスタンドって減っていってるんですよね。

それについては撤退による地域の持続可能性への影響についての研究もあって深刻な問題なんですが,

後に入る機能があるということはまだそれほど人口減の影響が直撃していない地域ということなのでしょう。

 

ガソリンスタンドは都心部でも撤退の事例があって,


こちらは名古屋の市街地にある元ガソリンスタンドのマッサージ屋さん。

こちらもギャップにちょっと突っ込みたくなる感じですが。

ガソリンスタンドは設備が重装備なので(地下にタンクが埋まっている),簡単に撤去もできないため

解体・大規模改修の手前にちょっとした改修での,なんと表現したらいいか,ヤドカリ的住み着きのような

転用が生じるのでしょうか。

 

いつでも探しているよ,どっかにギャップ萌え転用事例を。交差点でも,街の中でも,こんなとこに意外とあるんです。

明け方の街,桜木町にも多分。ぜひ探してみてください。建築計画の変化の最前線が,そこここに見えるはずです。 

 

 

 

 

 

 

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ラ コリーナ近江八幡 農・製・売、六次産業がつくる不思議な「未来の」原風景

2019-08-09 11:57:00 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪

今日はこちら、近江八幡のラ コリーナ(クラブハリエ)

たねやの栗の巾着に滋賀時代えらい感動しまして…。あれはもう10年以上前なのか。
栗の季節しか食べられないので、また来ないとなんですけど。

この駐車場からのアプローチの草原、上から見ると葉脈の形で、

ゆるやかなカーブが自然に感じられます。


広い。まだ拡張中とのこと、それぞれ趣の異なる棟で、売っているお菓子も違います(だから、全部回らないといけないですね? まあたいへん)。


草屋根の棟の内観(お客さんが多すぎて、吹き抜け左右の販売カウンタースペースは載せられず)。


味のあるガラスが使われている。鋳物風の鉄部もすてき。


二階。

‪バームクーヘンで有名なクラブハリエさんなので、木炭を内装に使っているのですね。
それにしてもすごい人出。まだお盆休暇前で、しかもそこまで交通の便の良くないところなのに。
ここにしかない(特異性、特徴、固有さ)」と「本物(高品質)」が合体すると、確かに人の「集まり」を生むのだよなあ。‬
公共施設が持つある種の「平等性」「画一性」とは意を異にするもの。これは今度の研究協議会のネタの一つ。

通販や、各地の主要駅、デパートなどでも買えますけどね基本のバームクーヘンは。


バウムサンドとか、

どら焼きソフトとかもありましてですね。
テイクアウトできないのでこちらでいただくしかないですね〜仕方ないな〜。甘さ控えめで美味しいな〜。

草屋根の棟の中を抜けると、

草屋根の廻廊でまるく囲まれた水田エリアが。異世界感。


右手前がカステラショップとカフェ(カステラたまごのオムライスが食べられる)、

奥はオフィス。


水田と水路、この水田エリアにも細い道が多方向の交差をつくっています。

異世界感と既視感の混雑が不思議です。ナウシカ?ハウル?星を追う子ども?アニメのような、「どこも絵になる」「どこもそれらしくて、どの方向にも特徴が映り込む」。

農村を原風景にもたない人は、こういう密度高く作り込まれた風景をどう思うんだろう?

色々な取り組みをされているので、建築だけではなく思想の風景化という側面も多分にありますよね。



ガレージ棟、また異なる趣で。ごちゃごちゃ感、なんでもあり感(ロンドンバス、フィアットのチンク、シトロエントラック、ベスパ…)が年代(1960〜1970)はだいたい同じ?で同居する、これはどういうコンセプトだったんだろ。

バウムクーヘンの一号機もありました(かわいい)。






こちらでは、卵入りの五穀米ライスコロッケ、ながーーーいピザやガーリックトーストなどが食べられます(美味しかったです)。



6次産業という言葉はかなり浸透したと思いますが、「農(一次産業)」の大地に根をはる樹としての食の製品づくり、それを売り買いする場と体験をここにしかないエンタメに昇華する、
その拠点がまだまだ進化するようで、楽しみですね、またお腹すかせてこないと。
楽しかった!




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裏ゼミ合宿の逆は対偶合宿だろうか

2019-08-08 15:08:47 | 雑記
うちのゼミには裏ゼミ合宿というのがあるらしいです。

あるらしいというのは、私(山田)には誰もちゃんとしたところを教えてくれないからです。

その存在は長く秘匿されていたのですが、あるとき学生さんに「ゼミ合宿楽しかった?」と聞いたら「どっちのですか? …あっ、ほんとの方のですね? ハイ、そっちのゼミ合宿も楽しかったですよ!」という反応があり、知るに至ったのです。
そういうイベントがあるらしいと。しかも毎年やってるらしいと。

むろん今年も日程はおろか存在すら山田は知らされていなかったわけですが、たまたま研究室混合プロジェクトのスケジュール表にウッカリ書かれていたのを、よそ研の先生がご覧になって。
HN先生「山田研はゼミ合宿が二回もあるんですか?」
山田「ああ…うーん? そのようですね。私は知らないんですが」
HN先生「え、なにそれ」
学生さん「今年は参加人数が多いみたいで」
山田「そうなんだ」
学生さん「ハイ、ほぼみんな参加するみたいで」
山田「そうなんだ、それは盛り上がるねえ。どこ行くの?」
HN先生「ほんとに先生だけ知らないww」
学生さん「なんか東京の端っこ? 河原でバーベキューとか」
山田「おお、いいですね。水の事故だけ気をつけてね」

初めてそんなに詳しいこと聞いたよ裏ゼミ合宿について。海行ったとか噂で聞いたことがあったけども。
すねないから楽しげな写真アップしてくださいよ。
明日から行くらしいじゃないですか、事故だけ気をつけて楽しんできてくださいね。

私もゆるゆる視察旅です いや対抗してるわけじゃないんですよ すねてないし全然。


ほら海。

海辺、川辺の拾い物が好きです。


流木、白い骨が散らばっているよう。
生物の組織が分解されていく途中で、組織のやわらかさの特徴が分解の時間差として現れて、
比較的固いところが一瞬だけ残って見えている(ゆっくりと分解されながら)、という意味では、骨に違いはないな。


陰陽みたいな石。


これはイムリの道具みたい。

(福祉系施設は載せないので「行間部分」を)


いつだって、

獣道発見。


あ、

陽気な宇宙人。


これはなにが面白いかというと、ここミニストップからの転用なんですね。
文化的価値というわけでもなく、そこに(ロードサイド)店舗としての基本性能を持つハコがあれば商業利用で物販から飲食にサクッと変えられるし、

「P」だけ、後から入った店にとってはアイデンティティになんら関係ないからミニストップ時代のまま残ってるってとこです。
(この配色はもちろん、ミニストップにとってはアイデンティティ)
思わぬところに亡き人の忘れ形見を見つけたようでこう、グッときますね。


トイレに行けばサインが気になる。
床にサインがあるのは、例えば高齢者対応(視線が下にいきがち)では有利と言われますが、
このサインはなにげに不穏な感じでは

なんの事件現場…?

同じ床サイン併用でも、

こっちは怖くないです。

同じ思想(床にサインを描いたらわかりやすいぞ!)でも、その実施の仕方にはいろいろあるし、その選択によっては違う反応が得られるという好例。


これは感動したんですけど、

「わかってる!!」「このデザイナーさんはわかってる!!」「ありがとう!!!」が嵐です。

今日はタワーに二つ出会って、

こちらはかき揚げタワーで、

これは台北101です。

ね。

ええ、ですから私も1人ゼミ合宿してますので、みなさんも楽しんできてください。気をつけて。
え、すねてないです全然。








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研究室メンバーの新メンバーが決まりました

2019-08-08 10:08:25 | 雑記

研究室の新メンバー,3年生の仮配属が決まりました。(8/8が情報解禁日)

 

「11人いる!」

例年(6〜8人)に比べて多いですね。部屋が狭くなるねごめんなさい、仲良くしてくださいね。生き物を複数集めたとき、密度があがるとトラブルが起きやすくなるという研究もありますし、なんとか場所を支弁してもらわないといけないですね・・。

 

しかしまた、とてもにぎやかになりますね。

一斉休暇後からの新しい展開が楽しみです。それぞれ違う研究テーマを見つけるから、展開する方向が広がるでしょう。それは良いことだ。就職する人も進学する人もいて、留学してみえる方もいて。多様性は力。

 

 

 

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見学の帰り。

2019-08-06 22:01:08 | 雑記
今日は「まちの保育園 小竹向原」の見学会に参加。


(中は写真NGなので、記録は外観とたくさんのメモだけ)

まちづくりとしての保育を考える、というレッジョ・エミリアにインスピレーションを受けたというコンセプト。
本物を体験する機会を、という「大人の思う子供らしさを押し付けない」「キャラクターや既成の価値観で作られたおもちゃに頼らない」保育。

勉強させていただきました。ありがとうございました。


帰り道、池袋のこれは清水さんの卒計の参考になるのではとか、


田邉さんの探してたゾロのスタンプだ! とか、出歩くとたくさん観察対象がありますね。




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