建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

建築・環境計画研究室

この研究室は,2006年4月に立命館大学にて開設され,2009年10月に東京電機大学に移りました.研究テーマは,建築計画,環境行動です. 特に,こどもや高齢者,障碍をもつ人々への環境によるサポートや,都市空間における人々の行動特性などについて,研究をしています.

*当ページの文章や画像の無断引用・転載を禁じます*

成長期の住まいにおける世代間差と住環境の評価 「振り返り」に基づいた住環境の有り様に関する研究(2)

2021-07-15 16:10:35 | 書架(こども関係)

こちらからダウンロードできます

地域施設計画研究39 2021年7月 日本建築学会

建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.39, Jul., 2021

 

…以下検索用文字列…

成長期の住まいにおける世代間差と住環境の評価 「振り返り」に基づいた住環境の有り様に関する研究(2) LIVING ENVIRONMENT AND DIFFERENCE BETWEEN GENERATIONS IN HOUSE OF A GROWING PERIOD Study on a Living Environment’s Role in the Human Growth Period Based on an "Inventory" of Adults (2) Keywords: Memories,House,Communication Of Family,Spatial Composition,Evaluation Structure 振り返り,住まい,家族のコミュニケーション,空間構成,評価構造 In this research, we investigated the relationships between spatial conditions, such as the spatial compositon in homes in the human growing period and the manner of living and family structure from the standpoint of children, based on a questionnaire and interviews and targeting adults. Also, the structure of the relationship between elements of homes and human development was evaluated. We found characteristic trends, For example, there is a difference depending on the dwelling form. In a detached house, elements of value intervening in communication were more diverse than in a custom house, and in a person’s own room in multifamily housing, and the ratio of "feeling of relaxation" as an evaluation choice was higher. ○山田あすか* ,高橋愛香** Asuka YAMADA and Aika TAKAHASHI 1.本研究の背景と目的と手順 1.1 研究の背景と目的    近年,核家族化や少子化,共働き親や片親世帯の増 加などの社会的要因と共に,こどもの成長期における 住まいでの家族とのコミュニケーション不足が指摘さ れることがある1)。また,成長期のこどもをもつ家族 の住まいについての既往研究の多くは,こどもからの 聞き取りやこども目線での分析によるものである。例 えば田中,植田ら2)3)は,小学生4~6年生とその保 護者を対象に,こども部屋に対する親の意識や親子間 のコミュニケーションの現状など,家庭環境のあり方 について論じている。また,江上4)5)は集合住宅で の家族間コミュニケーションはリビング,ダイニング キッチン,ダイニングで起きるとし,定行,小川ら6) は集合住宅では中高生が落ち着ける場やプライバシー 空間,間取りの広さが必要で,専用の自室などの居場 所が重要性だと述べた。また,森保,山田ら7)~9)は 会話に限らず視覚や聴覚での非言語接触を含め家族と 接触できる箇所を多く設けることが家族間のコミュニ ケーションにつながると指摘した。 これら既往研究の多くは子育て期の親の立場から, また非行や不登校等の問題を抱えたこどもへの聞き取 りやこども目線からの成長期の評価やニーズを明らか にしている。しかし,成長期のこども本人のニーズに 即した住まいであることが,健やかな成長・発達や家 族との関係を育む観点からみて必ずしも正しいとは限 らない。また,当時の住まいを改めて振り返り,評価 する,あるいはニーズを再考する研究はわずかである。  成長期の環境を,成人の振り返りによって評価する 手法として,仙田ら10)11)によるあそび環境に関する 研究や,山田ら12)13)の研究がある。また,既報14)では, 「子の立場」にある成人の振り返りによる,住まいの室 配置などの空間条件と,住まい方や家族との関係,成 長環境としての評価の構造を調べ,特徴的な知見とし * 東京電機大学未来科学部建築学科 教授・博士(工学) ** 東京電機大学未来科学部建築学科 修士課程(当時 * Professor, Dept. of Architecture, School of Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki Univ. ** Former Student, Dept. of Architecture, Graduated School of Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki Univ. − 17 − 地域施設計画研究39 2021年7月 日本建築学会 建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会 Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.39, Jul., 2021 ては以下のような知見を得た。①対母親コミュニケー ション頻度において,中学生時期の廊下型で,[頻繁] の割合が高い(一般的な認識と逆)。②対父親コミュニ ケーション印象で,コミュニケーションを子側が選択 できない場合に[ポジティブ]の割合が低い。③住宅 内でよくいた場所は,小学生時期では戸建で団欒空間, 集合住宅では自室の割合が高い。④記憶に残る場面は, 小学生時期は戸建・集合住宅とも[遊び]場面が多く, 特に自室は[遊び]の場として想起された。また,戸 建の方がより多くの種類の活動や関わりの場として意 識されていた。⑤記憶に残る場面の評価語のうち,成 長への意識に最も近いと考えられる[達成・成長・発見] の割合は戸建の自室で最も高く,これは自室が勉強の 場として意識されていることに多分に起因する。なお, これらの知見は「子の立場」からの評価であり,親の 立場では異なる評価が得られることが予期された。  これらを踏まえ,本研究では,成人の振り返りによ る,成長期の住まいの住戸形態(戸建/集合住宅)や 室配置といった住まいの空間条件,子の立場からの家 族との関係(コミュニケーション頻度等),こどもの頃 の記憶に残っている印象深い場面から得られた価値に ついて,子育ての視点を持たない立場と,持つ立場の 2つの視点から調査する。さらに子育て視点からみる 住まいの取り組みについて調査し,成長期の住まいに ついての考察を深めることを目的とする。なお,環境 心理学の立場15)からは,評価者にとっては評価者自身 が感じ,意味づける環境(心理学的環境)が価値判断 や行動の基準になると言われる。そのため内的イメー ジとしての住まい像や家族との関係の振り返りによる 評価の研究は,成長期の住まいの多面的な理解に資す ると考える。また住まいの多面的な理解は,現在の多 様化・複雑化する家族形態への建築計画的アプローチ の一助となると考える。 1.2 研究の手順    既往研究14)では大学生を対象とし,成長期の住ま いに関する研究を行った。住戸形態ごとの自室と団欒 空間の特徴として,戸建の自室ではきょうだいと友 図1 自室/家族の寝室の室配置の分類とプラン例 A B 親の 寝室 C 私の 廊下 部屋 私の 部屋 私の 寝室 祖母 の寝室 弟の 親の 寝室 寝室 弟の 部屋 LDK DK L S=1/ 500 ▲ 玄関▲ 勝手口 1階 2階 L D 1 寝室アプローチ 寝室アプローチ 寝室アプローチ K 客間 土間・土足スペース B B B C A A A N N N b b b a a d A 2 B 3 C b ・L と家族の寝室兼用 ・玄関を私の部屋に改修 ・主にLから出入りする ・寝るのは弟の部屋 自室 寝室 父室母室浴室トイレ 8・0 12・0 (人) (人) 12・1 8・1 13・0 5・0 12・2 4・1 4・0 4・0 1・0 なし 2・0 4・0 3・1 2・0 2・0 2・0 3・0 3・1 2・0 2・0 2・0 6・0 13・2 1・0 4・0 1・0 3・0 22・1 5・1 2・4 16・1 2・0 4・0 3・0 1・0 1・0 8・0 3・1 2・0 2・0 2・0 1・0 8・0 4・1 2・0 2・0 2・0 1・0 12・1 12・1 1・0 3・0 21・2 5・0 0・4 4・4 1・0 1・0 2・0 寝 寝 寝L K D 寝 寝 寝L K D 寝 寝 L K D LDK 廊下 寝 寝 寝 寝 部屋 外部 / 廊下型 / / / 団欒空間 型 連続型 外部空間 型 説明 ダイアグラム B A C D 廊下型 団欒空間 型 混合型 空間構成 説明 ダイアグラム 空間構成 各家族の寝室へのアプローチ/ 水廻り(浴室とトイレ)へのアプローチ b a c d B A AB C D 家全体からみる家族の寝室へのアプローチ B B A A C C すべての寝室へ は廊下や通路と して用いる空間 からアクセスする 寝室へは廊下か らアクセスする 寝室へは下足に 履き替えてアク セスする ・複数のアクセス方法がある場合:廊下と団欒空間であれば廊下/団欒空間型(  /  型 )と示す ・トイレが複数ある場合は浴室に近いトイレのみ示す ・家族の寝室へのアプローチをABCDで,水回りへのアプローチをabcdで示す 寝室へはLDK 以 外の他の部屋か らアクセスする 寝室へはLDK か らアクセスする すべての寝室へ はLDK からア クセスする 廊下とLDK か らアクセスする 寝室が混在 BC AC b d a d 表の数字:戸建・集合住宅(人数) 表の網掛けなし:小学生時期 表の網掛けあり:中学生時期 表の凡例 プラン例の凡例 コミュニケーションの発生の蓋然性に着目したアプローチの分類 収集したプラン例と集計 住戸形態別集計数 戸建 小中小中 33 (人) 2 30 2 15 9 18 6 (Ⅰ) (Ⅲ) 集合住宅 住まいについて ・部屋の意味付け:こどもの描いた成長期の住まいの配置兼平面図より、各部屋がど のように使われていたのか(水廻りを除く部屋について) ・部屋に対するこだわり:上記であげたように部屋を使用するのに取り組んだことや 必要なものは何か(家具や部屋の場所など) ・他者の招き入れの許可:各部屋は誰が使用してよいか(誰でも,家族のみ,など) こどもとのコミュニケーションについて ・コミュニケーション頻度:こどもとの会話の頻度について,よくしゃべった・用事 のある時だけしゃべった・しゃべらなかった・覚えていないから選択 ・コミュニケーションをとった場所と行為:こどもとよく会話をした場所でこどもと 何をしたか 表1 調査概要 調査人数 調査対象期間 調査人数 調査対象者:2013 年時の建築系大学生の親 [ 生まれ年:1950 ~ 1970 年] (Ⅰ)配布:父21・母24 名 回答:13・22 名 (Ⅱ)父5・母8名 ラダーリング全67 件 (Ⅲ)配布:父21・母24 名 回答:13・21 名 ①小学2~5年生 ②中学2年生 調査実施期間 2015年8月~10月調査人数 ラダーリングインタビュー(Ⅱ) 調査手順と項目 楽しい 友達と遊ぶ 広い場所 アンケート調査(Ⅰ) アンケート調査(Ⅲ) その場面 から得ら れた価値 インタビュー の起点とな る場面 その場面を 成立させる 環境条件 (Ⅰ)でたずねた「記憶に残っている場面や 行為」から得られた価値と、その場面や行為 を成立させる環境条件についてインタビュー 形式で詳しくうかがう 住まいの配置兼平面図の描写 ・各部屋の使い方:各部屋の専有者や家族の集まる場所(リビングダイニングなど) を確認する ・よくいた場所:回答者本人がよくいた場所と,当時同居していた家族構成員それぞ れのよくいた場所を確認する 住まいの概要について ・生活環境:生活環境の変化は経験あるか,ある場合その時期はいつか(家の住み替 え,増改築など) ・住まいの印象:住まいの居心地の評価(よかったかなど)や,平日(放課後)/休 日の過ごし方 ・家族との関わり方:生活の中で家族とどれくらいコミュニケーションをとっていた か(会話の頻度など)また,その人とコミュニケーションをとることをどのように 思っていたか(もっとしゃべりたかった,あまりしゃべりたくなかった,など) ・記憶に残っている場面や行為:図面で場所を示し,そこで誰と何をしていたのか 小学校時期,中学校時期について, 戸建・集合住宅合計で最大35 名。上 記は小学校時期は覚えていない,小 学校時期だけ答える,等の回答協力 状況により,分析対象とできた実数 − 18 − クラメールの 連関係数 V 住まいの空間条件 やや弱い関連(V=0.25~0.5) 住まい方とコミュニケーション やや強い関連(V=0.5 ~ 0.8) 対父親COM・頻度 対父親COM・印象 住まいの居心地 住戸形態 自室の有無 団欒空間の通行 自室へのアプローチ 父室へのアプローチ 寝室へのアプローチ 母室へのアプローチ 平日-休日の過ごし方 非常に強い関連(V=0.8 ~ 1.0) 0.2511 0.3062 0.5041 0.5017 0.8339 0.5000 0.4247 0.4938 0.5016 0.5580 0.2598 0.3688 0.2881 0.3294 0.3366 0.5073 0.4410 0.4410 0.5303 0.3536 1.0000 0.3632 0.4313 0.3478 0.3344 0.3780 0.3724 0.4122 0.2958 0.5270 0.5270 0.3227 0.4125 0.6208 0.5980 0.3953 0.4082 0.2618 よくいた場所 対父親COM・頻度 対父親COM・印象 住戸形態 自室の有無 団欒空間の通行 自室へのアプローチ 父室へのアプローチ 寝室へのアプローチ 母室へのアプローチ 平日-休日の過ごし方 0.2719 0.2948 0.3608 0.2731 0.3527 0.3646 0.3078 0.4330 0.3463 0.3463 0.5401 0.5401 0.5574 1.0000 0.3646 0.3721 0.3949 0.3766 0.3655 0.2996 0.4188 0.3604 0.3112 0.6023 0.4146 0.7202 0.4316 0.7202 0.4486 0.2881 0.3706 0.2928 0.6322 0.2692 よくいた場所 図2 時期ごとの項目間の関係 凡例 小学2~5年生の時期中学2年生の時期 ① ② ③ ④ *対母親コミュニケーション頻度と対母親コミュニケーションの印象は,両時期とも各項目への相関係数が低く,項目相互に関連ある項目として抽出されなかった。 達,団欒空間では家族という,自分と場面を共有する 相手による場所の差異がある。また,集合住宅の自室 では他者との行為の割合は自分の行為の割合よりも低 く,団欒空間では逆に他者との行為の割合が高いこと から,[人の存在]によって場所の認識を異にしている 傾向が得られた。本稿では,親世代である子育てとい う視点をもつ立場によると,大学生の振り返りとは異 なる知見が得られる可能性に着目した。また,大学生 が成長期の住まいで,得られた傾向について,親の視 点から子育て期の各部屋の意味付けや他者の招き入れ の許可の様子などを把握する。 2.調査概要    表1に調査概要を示す。既往研究14)で協力を得た大 学生の親を対象として,親自身が成長期にあった際の 住まいの概要を尋ねるアンケート調査( Ⅰ ) と,親目 線での住まい方やこどものとのコミュニケーションに ついてのアンケート調査(Ⅲ)を行った。さらに協力 を得られた場合に,記憶に残っている場面や行為から 得られた価値とその条件の構造についてのラダーリン グインタビュー調査( Ⅱ ) を行った。  振り返りの対象とする時期は,小学2~5年生(以 下,小学生時期)と,中学2年生(以下,中学生時期) を調査対象期間とした注1)注2)。また,当時の住戸形態 は戸建/集合住宅の双方に対して依頼した。集合住宅 の回答は少なく分析上は戸建住宅が主となるが,戸建 住宅のなかでの空間条件の差異(庭の有無,立地,構造, 面積等々)もあることから,比較対象としての価値も 加味してこれを分析と集計の対象に加えている。 3.住まいの空間条件とコミュニケーション 3.1 空間条件とコミュニケーションの分類    調査(Ⅰ)から,分析の意図に即して滞在空間と動 線の重複によるコミュニケーションの発生の蓋然性に 着目し,住まいの全ての寝室へのアプローチ構成と, 自室(個人の部屋・こども部屋)注4)・父室・母室(親 の部屋)注5)の各寝室へのアプローチ,水廻りへのア プローチ構成を分類した(図1)。例えば寝室へのアプ ローチタイプは,以下の通りである。その他の分類も 基本的にこの考え方に依拠する。 【寝室へのアプローチ】 *対父親と母親の合計事例数の差は,片親の単身赴任やひとり親世帯のケースによる 対 父親対 母親対 父親対 母親対 父親対 母親 回答者が対象の家族間 でコミュニケーション をとることを好ましく 思っている.もっと話 したかった,など 回答者と対象の家族間 でコミュニケーション について特に関心を抱 いておらず,満足して いる 回答者が対象の家族間 とコミュニケーション をとることを消極的に 思っている.あまり話 したくなかった,など 頻繁稀薄無 集合住宅 対 父親対 母親対 父親対 母親対 父親対 母親 戸建 回答者が対象の家族と  一緒に娯楽の時間を過ご したり,会話するなどの コミュニケーションを日 常的に取っていた 回答者が対象の家族と  用事など必要最低限の会 話やコミュニケーション しかなかった,または回 答者がしたくなかった 回答者が対象の家族と  会話などのコミュ二ケー ションを取っていなかっ た,もしくは回答者が関 わりを持ちたくなかった (小学校時・中学校時) 人数 人数 集合住宅 戸建 (小学校時・中学校時) ポジティブ(P) どちらでもないネガティブ(N) (8・3) (13・10) (0・1) (24・19) (2・1) (22・23) (2・1) (7・10) (0・1) (1・3) (0・0) (0・0) (0・0) (0・0) (20・18) (1・0) (17・17) (2・2) (12・11) (1・2) (2・2) (0・0) (0・0) (0・0) 表2 「私」と父親/母親とのコミュニケーションの分類 − 19 − A 廊下型:すべての寝室へは廊下や通路として用いる 空間からアクセスする B 団欒空間型:すべての寝室へはLDK からアクセス する C 混合型:廊下とLDK からアクセスする寝室が混在 している  また,親とのコミュニケーション頻度(頻繁/稀薄 /無)と印象(ポジティブ/どちらでもない/ネガティ ブ)をそれぞれ3種類に,対父親・対母親について分 類した注3)(表2)。 3.2 空間条件とコミュニケーションの関係  空間条件やコミュニケーションの頻度と印象の相関 行列を作成し,このうち相関係数が上位の組み合わせ を抜き出し,図2に示した。  この図2より,小学生時期には,図中【❶】寝室へ のアプローチと,母室・父室・自室へのアプローチ・ 団欒空間の通行との間に[やや強い関係(0.500 ~ 0.598)]がみられる。一方,中学生時期には【❷】寝 室へのアプローチと[やや強い関連]をもつ組み合わ せは,母室へのアプローチ(0.557)のみであること が読み取れる。小学生時期には寝室へのアプローチと 各室へのアプローチに偏りがあるが,中学生時期には その関係が多様に分散し,各回答者において異なるこ とがわかる。  自室へのアプローチと父室・母室へのアプローチに は,小学生時期と中学生時期ともに[やや強い関連 (0.527 ~ 0.720)]がある。また,小学生時期には【❸】 自室へのアプローチと団欒空間の通行(0.834),住ま いの居心地(0.558),対父親コミュニケーション(図 中COM と表示)の印象(0.502)に[やや強い相関] がある注6)。また,自室アプローチが廊下である場合, 対父親コミュニケーション印象はネガティブである割 合が高い。また,廊下型では住まいの居心地が「良い」 とする割合が高い。これらは,当時の【父親】と子の 関係の表れとも理解できる。しかし,中学生時期【❹】 にはそうした関係は見られない。  また,中学生時期には【❺】平日- 休日の過ごし 方と父室・母室へのアプローチとの[やや強い関連 (0.540,0.557)]がみられたのも特徴的である。 4.記憶に残る場面と場所 4.1 記憶に残る場面と場所   記憶に残る場面とその場所を図3にまとめた。場所 の総数に着目すると,自室での記憶に残る場面のみ, 小学生時期よりも中学生時期に回答が多い。これは, 自室での[その他]の場面が小学生時期にはないのに 対し,中学生時期には回答があることが関係しており, ここでの[その他]の場面は,個人の部屋ができた(5 件),こども部屋に2段ベッドが設置された(2件), お気に入りのものがあった(1件)という内容の記述 であった。また,団欒空間での場面の回答の割合が最 も高く,その次に自室の回答の割合が高いことが読み 取れる。 4.2 自室での記憶に残る場面と評価構造  調査Ⅱで得られた,最も印象に残る場面のうち,自 室に関する場面を起点とする評価構造と,団欒空間に 関する場面を起点とする評価構造注7)について,戸建 /集合住宅の別に図4 に示す。住戸形態に共通する語 を図中に網掛けで示した。また,以下に示す()中の 該当数字は,特記ない場合,戸建と集合住宅で共通の 語がある場合はその合計である。 1)場面の評価構造 ■起点となる場面  自室が最も記憶に残る場面とし てあげられた数は,小学生時期には少なく,整理の対 象は小学生時期2件,中学生時期9件であった。心理 的成長の過程において,中学生時期に自室での活動が 大きな役割を果たしていたことを反映していると理解 できる。最も記憶に残る場面としては,自分の部屋が できる(小学生時期0件・中学生時期2件),音楽を聴 場所 自室 0 0 4 団欒空間 和室 家族の部屋 ベランダ ・庭 家の周辺 その他 凡例傍ら数字なし:1   円グラフと棒グラフの数字:回答人数 N=(戸建の回答人数・集合住宅の回答人数) N=(78・5) 小学校2~5年生 中学校2年生 場面 遊び生活勉強アクシ デントその他遊び生活勉強アクシ 集合住宅 デント その他 戸建 住戸形態 小 中 小 中 小 中 小 中 小 中 小 中 小 中 40 20 N=(64・4) ここで「団欒空間」と分類した場所には,図1のLDK を含む。また,当時家族の間で「リ ビング」とは呼ばれていなかったが,実態としていまでいうリビングに該当する部屋(茶 の間,「ごはんを食べる部屋」「家族が集まって過ごす部屋」「テレビの部屋」など)を含む。 5 5 8 5 5 5 7 2 2 2 2 2 2 2 2 3 3 3 13 13 34 3 4 8 8 3 2 16 34 4 4 6 4 3 17 33 2 2 24 10 30 20 11 15 17 10 図3 記憶に残る場面と場所 − 20 − 場面が回答者にとってどのような価値があったか 場面の成立に必要な条件 戸建 戸建 集合住宅 集合住宅 :順接(~だと…だ) ( )内の数:小学時期・中学時期より得られた語の数 :逆接(~でなければ…だ) インタビューの起点 (記憶に残る場面や行為) 「戸建」と「集合住宅」に共通して現れ た語(ほぼ同義と考えられる語を含む) 図4-1 自室に関する評価構造 図4-2 団欒空間に関する評価構造 場面が回答者にとってどのような価値があったか 起点 場面の成立に必要な条件 起点 3 3 3 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 3 2 2 2 2 2 集中できる(0・2) 狭い場所(0・1) 成績が上がる(1・1) 成功する(0・1) こたつがある(0・1) 気楽になれる(0・3) 勉強する(1・1) 親に背中をおされる (1・0) 学級委員長になれる (1・0) 勉強してる兄が いる(1・0) 褒められる(1・0) 人気者になる(1・0) 交換日記を書く (0・1) 好きな人がいる (0・1) 共有する(0・1) 気を遣える(0・1) 勇気がつく(0・1) 恥ずかしい(0・1) ラジカセがある (0・1) 知識がつく(0・1) 成長する(0・1) 流行の音楽が流れる (0・2) 楽しい(0・1) お気に入りの番組が ある(0・1) 裁縫する(0・1) 夢中になれる(0・1) ほしい物がある (0・1) 気分転換になる (0・1) 放し飼いする(0・1) ペットがいる(0・1) 仲良くなる(0・1) 元気になる(0・1) 世話をする(0・1) 自分の部屋ができる (0・2) 生活力がつく(0・1) 襖がある(0・1) 家具がある(0・1) 嬉しい(1・3) 自立する(0・2) 母がいる(0・1) 音楽を聴く(0・2) ひとりでいる(0・3) コミュニケーション がとれる(0・2) 居心地が良い(0・1) 2段ベッドが設置 夢が叶う(0・1) される(0・1) 自分の居場所(0・2) 2段ベッドの上 (0・1) 姉と使う(0・1) エアコンがある (0・1) 西日が入る(0・1) 暑い(0・1) 快適(0・1) 落ち着く(0・2) 録音できる(0・1) リビングがある (0・1) 自由にできる(0・1) 一部屋を二部屋に 仕切る(0・1) 食事する(1・3) 家具がある(0・2) 親戚や友達が集まる (0・2) 招きやすい(0・1) 友達がいる(0・1) 人の輪が広がる (1・1) 広い場所(0・1) 継続する(0・2) 自分の部屋がほしい (1・0) 机スペースがある (1・0) 優越感(1・0) 邪魔されない(1・0) 自分の居場所(1・0) 羨ましい(1・0) 他者の影響を受ける (2・0) 祖母が作った(0・1) 美味しい(0・1) 休日(0・2) 注意力がつく(1・0) ケンカで火傷(1・0) ストーブがある (1・0) テレビを観る(2・3) 距離が近い(1・0) 視力が落ちる(1・0) 怒られる(2・0) 夢中になれる(1・1) 話題にできる(1・2) 共有する(3・2) 感動する(1・0) 感情が豊かになる (1・0) 母が裁縫してる (1・0) 知識がつく(3・0) 興味がわく(1・0) 道具がある(2・0) 作った物を使える 裁縫する(1・0) (1・0) ほしい物がある (1・0) 嬉しい(1・1) 家事をする(1・2) 親が忙しい時(0・2) 音楽を聴く(1・1) 家電が増えた時代 (2・0) 猫を飼う(0・1) 親近感がわく(0・2) 納屋がある(0・1) 癒される(0・2) 野良猫がいる(0・1) 独り占めできる (1・1) ひとりでいる(1・3) お気に入りの番組が ある(1・2) お菓子を作る (1・0) 気分転換になる (1・0) 試験期間中(1・0) 好きになる(2・2) 寝る(0・1) せまい空間(0・1) 居心地が良い(0・1) 開いてる雨戸がある (0・1) 蚊帳がある(0・1) 落ち着く(1・2) 自分の役割(2・0) 井戸がある(1・0) 難しい(1・0) 玄関の近く(1・0) 年越し(0・1) 家が改築される (1・0) 事故に遭う(1・0) 気を遣える(1・0) 先祖が改築を繰り返 してきた家(1・0) 驚く(2・0) 団欒が増える(1・0) LD が繋がる(1・0) 安心感がある(1・1) 怒られる(1・0) ペットと遊びすぎた (1・0) 反省する(4・0) 楽しい(4・2) 部活帰り(0・1) 会話がはずむ(0・1) 夜(0・2) 部屋を飾り付けする (1・0) 家の中にいれる (1・0) モミの木がある (1・0) きょうだいがいる (2・1) 朝食のみの部屋 (0・2) 親がいる(3・1) 朝食の準備中(0・1) 急いでいる(1・1) テレビがある(3・0) 特別感がある(1・1) ピアノを習う (1・0) 先生がいる(1・0) 教室(1・0) 追いやられる(1・1) 嫌だ(1・0) 親戚がいる(1・1) 懐かしむ(0・1) 頻繁な出来事(0・1) 幼い頃の映像がある (0・1) 2世代が暮らす家 (0・1) ステレオがある (1・1) 団欒する(2・0) こたつがある(2・1) あたり前になる (2・1) 食事がある(1・1) 生活の中心の場 (1・0) コミュニケーション がとれる(2・4) 親密になる(1・2) 大切に感じる(2・0) 生活力がつく(1・2) 湿ったものを乾かす (0・1) 散らかっている場所 (0・1) 家族がいる(2・3) やる気がでる(0・1) リビングによく居た (0・1) 自分の部屋がある (0・1) 隣の部屋も使用 (0・1) 快適な場所(0・1) 便利になる(1・0) マット運動する (1・0) 昼間(1・0) 楽しい(1・0) 身体を動かす(1・0) 感謝する(1・0) 静かな遊び(1・0) 優越感がある(1・0) 嬉しい(1・0) 運動能力がつく 職業選択に関わる (1・0) (1・0) 布団がある(1・0) 協力できる(1・0) 寝床を作る(1・0) 家族がいる(1・0) 整理整頓できる (1・0) 選択できる(1・0) スペースをあける (1・0) 家具がある(1・0) − 21 − く(0・2),勉強する(1・1)が比較的多い。 ■場面の成立要素  自室での場面の成立要素として 最も多いのはひとりでいる(0・3)と,その類似の ことがらと思われる自分の居場所(0・2)で,自分 の居場所への言及が多いことは,既報14)における子 世代対象の同様調査の戸建の結果と共通している(既 報では,自分の居場所(3・4)で最も多かった)。同 一の場面や,同一の条件が少なく,回答者によって個 別であるが,家具があることや音楽試聴のための道具・ 環境があることへの言及が比較的多い。家具への言及 は子世代と同様で,特徴的には趣味活動として音楽の 関連語が挙げられていることを指摘できる。 ■場面の価値  場面の価値としては,集中できる (0・2),コミュニケーション(0・2)は子世代と 共通して複数挙げられた。知識がつく(0・1),成績 が上がる(1・1),成長する(0・1)は勉強に関す る成長感で,自室の役割への意識として特徴的だと言 える。また,子世代との違いとして生活力がつく(0・ 1),自立する(0・2),職業選択(1・0)という 主体性への意識が具体的な語で言及された。総じて, 勉強や趣味活動を自由に,主体的に行えることで,居 心地良く落ち着いて過ごしたり精神的な成長,また嬉 しい(2・3)や楽しい(1・1)という快の感情に 結びついている構造を読み取れる。 4.3 団欒空間の記憶に残る場面と評価構造 1)場面の評価構造 ■起点となる場面  評価構造の起点となる,最も記 憶に残る場面としては,テレビを観る(小学生時期2 件・ 中学生時期3 件)が最も多く,次に食事をする(1・3), 家事をする(1・2),団欒する(2・0),音楽を聴く(1・2), 親戚や友達が集まる(0・2)であった。他は1 件ずつで, 多様な場面が挙げられている。子世代との違いで特徴 的であった場面は,家事をする(1・2)と,自分と 母親が裁縫をする(2・0)であった。 ■場面の成立要素  場面の成立に必要な条件として は,家族がいる(戸建2・3,集合住宅1・0),親が いる(3・1),きょうだいがいる(2・1),親戚が いる(1・1)と人に関する語が条件としてあげられ, 逆に,ひとりでいる(1・3)にも言及があった。時 代柄,家電が増えた時代(2・0)の指摘もあり,テ レビがある(3・0)やこたつがある(2・1)も, 場面の成立条件として指摘された。なお,テレビへの 言及や,人の集まりの場としての印象は,子世代と共 通している。イベントの記憶が残り,年越し(0・1) やクリスマスの飾り付けに関連する語があったことも 年月を経ての振り返りとして特徴的であると理解でき る。 ■場面の価値  コミュニケーションがとれる(2・ 4)と,情報・感情・時間を共有する(3・2),団欒 が冷える(1・0),親密になる(1・2),人の輪が 広がる(1・1)という関わりに関する語が多く含ま れる。知識がつく(3・0)や生活力がつく(1・2) は,自室とも共通した言及であった。 4.4 自室と団欒空間の評価に関する語  また,自室と団欒空間の評価に関する語を評価構造 から取り出し,相互の関係は除いてどのような語が言 及されているかを集計するため,感情・場所・行為に 分類して整理した(図5)。円の大きさは,各カテゴリ 内の割合を反映している。  自室と団欒空間では,いずれも感情・場所・行為の 全要素が言及されている。また,戸建では「感情と場所」 「行為と感情」に該当する語が一定数挙げられている。 戸建集合住宅戸建集合住宅 感情場所 行為と 感情 場所と 行為 感情と場所 行為 感情場所 行為と 感情 場所と 行為 感情と場所 行為 感情場所 行為と 感情 場所と 行為 感情と場所 行為 感情場所 行為と 感情 場所と 行為 感情と場所 行為 自室 団欒空間 他者との行為自分の行為 場所の特徴や印象 設え 他者の存在 ものがある場所 家具と結びついた場所 もの・他者の特徴 高揚感・肯定感開放感 優越感負の感情 人に対する感情 個の確立 達成・成長・発見 円の数:回答人数 傍ら数字なし:1 円の大きさ:戸建・集合住宅 それぞれの語数の合計で割った割合 状況 図5 自室と団欒空間の評価に関する語の分類整理 7 4 5 3 4 7 2 9 4 3 4 3 8 10 2 2 12 2 4 11 12 21 12 14 21 7 6 4 8 15 10 25 9 13 − 22 − 図6 部屋の意味付けと他者の招き入れの許可 凡例 共有・団欒 寛ぎ・就寝 遊び・趣味 勉強 その他 物置 客間 食事 父 小学生時期中学生時期 母 LD 戸建 父 母 父 母 集合 住宅 (戸)(集)(戸)(集)(戸)(集)(戸)(集)(戸)(集)(戸)(集)(戸)(集)(戸)(集) こども の部屋 和室 家族の 部屋 LD こども の部屋 和室 家族の 部屋 誰でも 家族 友人 部屋の 所有者 部屋の意味付け 他者の招き入れ の許可 30 20 20 10 10 0 0 9 9 9 8 8 8 8 9 6 6 2 6 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 6 6 6 6 7 7 7 7 7 7 7 15 14 10 10 10 11 12 12 3 3 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 (N=235) (N=207) 4 4 4 4 4 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 14 24 19 12 9 9 9 15 2 2 2 2 2 2 2 8 3 2 2 2 2 6 6 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 5 5 5 5 5 5 5 5 3 9 7 N=戸建の回答人数(小:151,中:145)+   集合住宅の回答人数(小:84,中:62) 傍ら数字なし:1 凡例 父母父母 小学生時期中学生時期 戸建集合住宅 父母父母 戸建集合住宅 遊び 傍ら数字なし:1 生活勉強その他 団欒空間 こどもの部屋 和室 家族の部屋 浴室 場所 7 8 5 8 5 9 10 11 4 4 4 4 3 3 3 2 2 2 2 2 2 2 3 2 2 2 2 2 2 2 2 4 9 図7 コミュニケーションをとった場所と場面 集合住宅の該当事例が少ないこともこの集計結果の要 因であるが,戸建ではより多様な要素への言及が収集 されている。内訳を見ると,戸建・自室の「感情」で は,高揚感・肯定感に分類される語の割合が高く,戸建・ 団欒空間の「感情」では,達成・成長・発見に分類さ れる語の割合が高いことが特徴的である。また,「場所」 では,戸建の自室・団欒空間のいずれにおいても,他 者の存在の割合が高く,人と過ごしたことが記憶に残 る場面の要素や評価の要素として,場所と結びついて 記憶・想起されていることがわかる。「行為」は,設え に関連する語と状況に関する語の比率が戸建・自室で 高く,戸建・団欒空間ではそれに加えて他者との行為 が併せて記憶・想起されている。 5.成長期の住まいへの親の取り組み 5.1 親子のコミュニケーションの場所と場面  調査Ⅲから得た,親がこどもとよく会話をした場所 とそこでの場面を図6に示す。集合住宅のこどもの部 屋について,小学生時期では[遊び]の割合が高いが, 中学生時期では[遊び]の言及がなく,[勉強]の割合 が高い。また,小学生時期の浴室について,戸建では [遊び]の言及がないのに対して,集合住宅では[遊び] の割合が高い。 5.2 部屋の意味付けと他者の招き入れの許可  各部屋の意味付けと他者の招き入れの許可の様子を 図6にまとめた。和室を[寛ぎ・就寝]の場としてい た場合について,小学生時期では集合住宅の割合が高 いが,中学生時期では戸建の割合が高い。詳しくみる と,小学生時期の集合住宅では,家族の就寝の場(4), 親の就寝の場(2)としており,そのための取り組み として,布団が敷けるように家具は最低限しか配置し ないといった回答が複数みられた。また,中学生時期 には,家族の就寝の場(1)のみみられた。また,LD を[勉強]の場としていた回答は,中学生時期よりも 小学生時期で割合が高い。  さらに,小学生時期では戸建の割合が高く,中学生 時期では集合住宅の割合が高い。詳しくみると,小学 生時期では住戸形態によらず,勉強としてだけではな く,家族の団欒や食事,こどもの遊びの場など様々な 活動ができることを前提としており,そのための取り 組みとして,家族みんなが活用できるよう座卓を中心 に配置した(2),高さの低い家具で統一した(2), 和室で掘りごたつにした(1)という記述がみられた。 5.3 コミュニケーションの場所と場面 コミュニケーションを取った場所を尋ねると(図 7),最も多い場所は小学生時期/中学生時期,と,戸 建/集合住宅の別によらず団欒空間である。次にこど もの部屋が多いが,小学生時期・戸建・母と,中学生 時期・戸建・父では家族の部屋の比率もこどもの部屋 と同等に高い。  場所ごとのコミュニケーションの場面は,中学生時 期には生活の自立が小学生時期よりも高いことが特徴 的である。また,小学生時期には中学生時期よりも遊 びと勉強の比率が高い。この傾向は,父母に共通して いる。中学生時期には,遊びと勉強の場所や場面とし て記憶に残る場面が,学校やクラブ活動,塾,その関 連行事・活動などの家の外に得られることもこうした 差異の要因ではないかと推察する。 5.4 親の成長期の住まいと大学生の成長期の住ま − 23 − いとの関係   コミュニケーションの印象と頻度の組み合わせに よって,コミュニケーションタイプを4つに分類した (表3)。また,住まいの構成を水回りへのアプローチ と自室へのアプローチによって分類した(表4)。  これらをもとに,親と大学生それぞれが成長期の親 とのコミュニケーションと自室と水廻りへのアプロー チとの関係を図8にまとめた。 1)親の成長期の住まいと家族との交流  父親の成長期の住まいでは,独立タイプである場合 に交流(Ⅰ交流,Ⅱ積極,Ⅲ頻繁)タイプがなく,Ⅳ 非交流のみである。また,母親の成長期の住まいが独 立タイプであるときに,Ⅳ非交流タイプか,それ以外 の交流ⅠⅡⅢタイプであるかは関係ないことが読み取 れる。父親(男性)の場合には成長期の住まいのあり 方が家族との交流の様子と関係していたが,母親(女 性)の場合にはそうした関係がないことは特徴的であ る。こうした差異は,子世代の調査ではみられなかっ た。 2)親子の成長期の住まいと家族との交流  さらに,親が成長期の頃の父と母両方とのコミュニ ケーションタイプと住まいのタイプを整理し,大学生 の成長期のコミュニケーションタイプとの関係を図9 にまとめた。  父が成長期の住まいが独立タイプであるとき,大学 生の子の成長期における対父親コミュニケーションタ イプがⅣ非交流の割合が高い。また,父が成長期のと きにⅠⅡⅢ交流タイプである場合,大学生の子と交流 がある割合が高い。父親が体験した関係性が,次の世 代での家族関係に影響しているといえる。  また,母が成長期の頃に親との交流があった場合に は,子の成長期における交流があった割合が高いこと が特徴的である。父親ほど明確ではないが,母親の成 長期における家族との関係も,次世代の家族との交流 に影響していることがわかる。 6.まとめ  本稿では,「大学生の親」の世代の,成長期の住まい と家族との交流の様子を調べ,また住まいに対する評 価の構造を明らかにするとともに,親と子の世代での 家族との交流の様子に,親世代の成長期の経験が影響 しているのか等を分析した。以下に主な知見を挙げる。 1)親世代の成長期の住まいの空間条件とコミュニケー ション ① 小学生時期には寝室へのアプローチと各室へのアプ ローチに偏りがあるが,中学生時期にはその関係が 多様に分散する。 ② 小学生時期には自室へのアプローチと団欒空間の通 行,住まいの居心地(0.558),対父親コミュニケー ションの印象に[やや強い相関]がある。また,自 室アプローチが廊下である場合,対父親コミュニ ケーション印象はネガティブである割合が高い。ま た,廊下型では住まいの居心地が「良い」とする割 合が高い(一般的な認識と逆)。中学生時期にはそ うした関係はない。 ③ 中学生時期には平日- 休日の過ごし方と父室・母室 Ⅳ ⅠⅡⅢ Ⅳ ⅠⅡⅢ Ⅳ ⅠⅡⅢ Ⅳ ⅠⅡⅢ Ⅳ ⅠⅡⅢ Ⅳ ⅠⅡⅢ 0.2928 やや弱い関連 クラメール の連関係数やや弱い関連 0.4667 やや弱い関連 0.2666 関連なし 0.1419 関連なし 0.0403 関連なし 0.2335 図8 成長期のコミュニケーションと空間構成の関係 6 8 2 2 3 4 4 9 6 8 8 9 7 11 10 10 16 15 19 大学生の成長期の住まい 父との COM 母との COM 母親の成長期の住まい 母親の対母親 (MM)との COM 母親の対父親 (MF)との COM 父親の成長期の住まい *「交流」には自室、水廻りタイプも含む 父親の対母親 (FM)との COM 父親の対父親 (FF)との COM 独立 住まいの 空間構成 交流 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 図9 子の成長期の住まいでのCOM タイプ 独立Ⅳ 2 2 2 3 6 3 8 12 大学生の成長期の 母COM タイプ 円の数:人数 傍ら数字なし は1 大学生の成長期の 父COM タイプ 独立 ⅠⅡⅢ 交流 ⅠⅡⅢ 交流Ⅳ 父親の成長期の 住まい 独立Ⅳ 独立 ⅠⅡⅢ 交流 ⅠⅡⅢ 交流Ⅳ 母親の成長期の 住まい 自室へは廊下以外 からアクセスする 廊下以外 からアク セスする 自室へは主に廊下 からアクセスする 廊下他 主に廊下 からアク セスする 〈独立〉  団欒空間や家 族のいる部屋を介さずに 水廻りを行き来できる。 〈交流〉 団欒空間や家族のい る部屋を介する。 〈自室〉 水廻りは独立だ が、部屋へは廊下以外か らのみアクセスできる。 〈水廻り〉 自室は独立だ が水廻りへは廊下以外か らのみアクセスできる。 *表の数字:上から順に「父親の成長期の住まい」「母親の成長期の住まい」「大  学生の成長期の住まい」から得られた人数 自室へのアプローチ 表4 成長期の住まいの空間構成 6 0 13 3 30 8 13 3 5 12 5 2 水廻りへの アプローチ 廊下 他 *表の数字:上から順に「父親の成長期の住まい」「母親の成長期の住まい」「大  学生の成長期の住まい」から得られた人数 *網掛けあり:父親とのCOM タイプ、網掛けなし:母親とのCOM タイプ COM を頻繁に とっている COM は頻繁では ない コミュニケーションの頻度 COM をとる ことを好まし く思っている COM する ことに感心 はない Ⅰ.交流  家族と交流す ることを好ましいと感じてお り、頻繁に交流していた。 Ⅳ.非交流  家族と の交流に感心がなく、 あまり交流しなかった。 Ⅱ.積極  家族と交流す ることを好ましいと思ってい るが、あまり交流しなかった。 Ⅲ.頻繁  家族との 交流に感心はないが、 頻繁に交流していた。 表3 コミュニケーションタイプ P 頻繁他 他 23 4 10 6 31 10 1 18 1 6 5 1 6 5 6 9 12 1 0 12 3 2 18 11 コミュニケーション の印象 − 24 − へのアプローチとの[やや強い関連]がみられた。 2)場面の成立要素と価値 ④ 自室での場面の成立要素としては,自分の居場所や ひとりの時間を持てること,家具への言及が多く, 子世代対象の調査結果と同様である。 ⑤ 自室での場面の価値としては,集中できる,コミュ ニケーションは子世代と共通。知識がつく,成績が 上がる,成長する,など勉強に関する成長感は,自 室の役割への意識として特徴的である。また,子世 代との違いとして生活力,自立,職業選択,という 主体性や就労への意識が具体的な語で言及された。 ⑥ 団欒空間での記憶に残る場面としては,テレビを観 る,食事をする,家事,団欒,音楽鑑賞,親戚や友 達が集まる,など多様な場面が挙げられた。子世代 との特徴的な違いのある場面は,家事と,自分と母 親が裁縫をする,であった。 ⑦ 団欒空間での場面の成立に必要な条件としては,家 族,親,きょうだい,など人に関する語,また時代 柄,テレビやこたつなどの家電にも言及された。な お,テレビへの言及や,人の集まりの場としての印 象は,子世代と共通している。子世代との差異とし ては,年越しやクリスマスなどイベントの記憶が年 月を経ての振り返りとして特徴的であった。 ⑧ 団欒空間での場面の価値は,コミュニケーションや 感情・情報・時間の共有といった,団欒そのものに 向けられた。 ⑨ 自室と団欒空間では,いずれも感情・場所・行為の 全要素が言及された。このうち特に「場所」では, 他者の存在の割合が高く,人と過ごしたことが記憶 に残る場面の要素や評価の要素として,場所と結び ついて記憶・想起されていることがわかる。「行為」 は,設えに関連する語と状況に関する語の比率が戸 建・自室で高く,戸建・団欒空間ではそれに加えて 他者との行為が併せて記憶・想起されている。 3)親視点での子育て期のコミュニケーション ⑩ 小学生時期では[遊び],中学生時期では[勉強] の割合が高い。また,小学生時期に,集合住宅だけ 浴室で[遊び]の割合が高く,住まいの中で,遊び の場所としての価値が相対的に高かったのではない かと推察される。 ⑪ 和室を[寛ぎ・就寝]の場としていた割合は,小学 生時期では集合住宅(就寝の場を兼ねる),中学生 時期では戸建で高い。LD を[勉強]の場としてい た回答は,中学生時期よりも小学生時期で割合が高 い。小学生時期では住戸形態によらず,DL は勉強, 家族の団欒や食事,こどもの遊びの場など様々な活 動ができることを前提に,家具等も設えられていた。 ⑫ コミュニケーションを取った場所は,最も多い場所 は小学生時期/中学生時期,と,戸建/集合住宅の 別によらず団欒空間である。次にこどもの部屋,家 族の部屋が多い。 ⑬ 場所ごとのコミュニケーションの場面は,父母とも に中学生時期には生活の自立が小学生時期よりも高 く,小学生時期には遊びと勉強の比率が高い。 4)親の成長期の住まいと大学生の成長期の住まい, コミュニケーション ⑭ 父親の成長期の住まいが独立タイプである場合に, Ⅳ非交流のみである。母親の成長期の住まいでは独 立タイプであるときに,Ⅳ非交流タイプか,それ以 外の交流ⅠⅡⅢタイプであるかは関係ない。こうし た差異は,子世代の調査ではみられなかった。 ⑮ 父が成長期の住まいが独立タイプであるとき,大学 生の子の成長期における対父親コミュニケーション タイプがⅣ非交流の割合が高い。また,父が成長期 のときにⅠⅡⅢ交流タイプである場合,大学生の子 と交流がある割合が高い。父親が体験した関係性が, 次の世代での家族関係に影響しているといえる。 ⑯ 母が成長期の頃に親との交流があった場合には,子 の成長期における交流があった割合が高い。 以上の結果,特に父親の場合,親世代では住まいの あり方と交流の様子が関係しており,その経験は子世 代との交流の様子にも影響している等の知見を得るこ とができた。また,子育て期の住まいにおいて意識さ れ記憶に残る場面として,団欒(食事・関わり)・勉強・ 遊びという3 つに大きく整理できる。これらはしばし ばそれぞれのテーマとして扱われてきたが,これらは 相互に関連する一体の住まい,住環境体験イメージと して理解することが実態に近しいと考える。家族関係 や住まいのあり方は多様化しており,「正しい」家族像 というものは限りなく定義しにくいが,住まいのあり 方が家族の交流のあり方や,それが世代を超えて伝搬 することへの知見は,住まいの計画や家族のあり方に 応じた住まいの選択の資料となると考える。  なお,充分な分類と統計処理に耐える充分な調査数 − 25 − が得られた場合には,住まいの空間条件,特にリビン グ等の団欒空間の具体的な空間構成についてや,家族 構成の詳細など,より多くの分析が可能な要素が想定 される注8)。 注 注1)小学1 年生では記憶が不鮮明な可能性,また中学校1年 生では小学生時期との記憶の混同がありうると考えて除いた。 また6年生と中学3年生では受験勉強などの影響で自宅での 過ごし方に大きな変化が生じうるため,小学2~5年生と中学 2年生を調査対象時期に設定する。なお,小学校の低学年時期 から高学年時期には記憶に幅があるが,そこでの差異よりも, しばしば高学年時期を境に住まいでの過ごし方や家族との関 係が大きく変わることを想定して「思春期以前(小学生時期)」 と「以降(中学生時期)」の差異に着目して分析を行っている。 注2)非建築学生は平面図の描写が困難であるため,調査員が聞 き取りで平面を描き起こした。この場合,調査Ⅱが行い難いた め,2013 年は平面図を描写できる建築学生のみを調査Ⅰの対 象とした。 注3)調査対象者ごとに感じ方や状況により回答の軸は多様であ る。3章「住まい方・家族の交流」の定義の際は,大まかな傾 向や特徴を掴むため,回答分布の傾向をもとに3つに分けた。 注4)自室の有無とは,回答者である本人の自室があるか,本人 と家族の誰かとの共有部屋か,本人は自室をもっていないかを 示す。 注5)家族が就寝する和室や洋室,回答者が“ 〇〇の部屋” と記 した室を含む。親の部屋は父室,母室,本人の部屋は自室と記 載。兄弟姉妹での室の使い分けも尋ねたが,きょうだいとの年 齢差・性別・同室/別室など組み合わせが多岐に及びそれぞれ が統計分析上十分な数とならないため,父母のみを分析対象と した。 注6)住まいの空間条件とコミュニケーションの関係は注図の通 り。 注7)「得られた価値」とは,その場面が調査対象者の心情や成長・ 発達にどのような意義や,どのような影響があったかを意味す る。また,住まいの空間条件と過ごし方を把握する調査Ⅰにお いて,回答者には「家族の団欒はどこでしていましたか」と尋 ねて" リビング" などの分類を行い(図3)っている。記憶に 残る場面のインタビューでは「家族で団欒をしていた空間(イ メージされにくい場合は「家族で過ごしていた空間」と表現)」 での場面を尋ねた。 注8)なお,回答者の家族の中での属性(性別,長子/末子,家 族構成)や,調査対象時点での同居の兄弟姉妹,祖父母との関 係,子の性別も尋ね可能な限り記録した。また,しかし,それ らの組み合わせは多岐に及びそれぞれが統計分析上十分な数 とならないうえ,単純な男女差よりも個人差,個々の家庭の差 (地域差や父母の出身地域,職業,経験,思想,趣味嗜好等々) はより大きく影響し,相互の関連性を切り分けにくいことか ら,家族構成の詳細に踏み込まない分析を行っている。上記に 挙げた想定される影響要素や関係などは,それぞれの内容が独 立的なテーマとなりうる影響要素と認識する。 参考文献 1)文部科学省,不登校児童生徒への支援に関する中間報告, http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/108/ houkoku/1361484.htm 2)那須涼介,田中直人,植田早紀:親子の子ども部屋に対す る意識~子どもとのコミュニケーションが生まれる家庭環境 に関する研究 その1~,日本建築学会大会学術講演梗概集, 5570,pp.1181-1182,2012.9 3)植田早紀,田中直人,那須涼介:親子の子ども部屋に対す る意識~子どもとのコミュニケーションが生まれる家庭環境 に関する研究 その2~,日本建築学会大会学術講演梗概集, 5571,pp.1183-1184,2012.9 4)江上徹:住居に於けるコミュニケーション空間に関する研究 その1,日本建築学会大会学術講演梗概集,E. 建築計画分冊, pp.131-132,1991.9 5)圓野謙治,江上徹:住居に於けるコミュニケーション空間に 関する研究 その2,3,日本建築学会大会学術講演梗概集, E-2, pp.391-394,1996.9 6)中野睦子,定行まり子,小川信子:子どもの発達段階からみ た集合住宅の住環境,日本建築学会大会学術講演梗概集,E-2, pp.409-412,1996.9 7)森保洋之,山田直美:家族のコンタクトとこどもの居場所の 関係について 子供を中心に見た住空間の計画に関する研究, 日本建築学会大会学術講演梗概集,E-2, pp.23-24,2001.9 8)森保洋之,山田直美:子供を中心にみた住空間の計画に関 する研究 その2 家族のコンタクトと子供の居場所の関係に ついて,日本建築学会大会学術講演梗概集,E-2, pp. 9-10, 2002.8 9)山田直美,森保洋之,他:子供室の位置から見た住空間の子 供に及ぼす影響について,日本建築学会中国支部研究報告集, pp.465-468,2000.3 10)仙田満,宮本五月夫,他:児童のあそび環境の研究 −その 5 あそびの原風景を探る,日本建築学会大会学術講演梗概集 56,pp.1677-1678,1981.9 11)仙田満:原風景によるあそび空間の特性に関する研究 −大 人の記憶しているあそび空間の調査研究,日本建築学会論文報 告集322,pp.108-117,1982.12 12)山田あすか:従来型小学校での「記憶に残る場面」にみる 学校空間 −成人による振り返りに基づく学校建築空間の再 考 その1,日本建築学会計画系論文集,No.669,pp.2065- 2074,2011.11 13)山田あすか,倉斗綾子:成長発達期における住まいの空間 構成と家族のコミュニケーションの関係についての研究,日本 建築学会計画系論文集,No.684,pp.299-308,2013.02 14)高橋愛香,山田あすか:大学生を対象とした成長期の住環 境の評価 −「振り返り」に基づいた住環境の有り様に関する 研究(1),地域施設計画研究,vol.38,2020.07 15)相馬一郎,佐古順彦:環境心理学,福村出版,1976 自室アプローチ B: 廊下 C: 両方 小学校2~5年生 ③ 対父親COM・印象 ポジ ティブ ネガ ティブ どちら でもない 注図 住まいの空間条件とコミュニケーションの関係,補足 2 2 1 1 3 5 A: 団欒 空間 自室アプローチ B: 廊下 C: 両方 小学校2~5年生 住まいの居心地 良い どちら 悪い でもない 4 1 1 1 1 A: 団欒 空間 7 *図2のからの関係にあたる − 26 −

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【卒業論文(前期)】新実希帆 保育者のためのコミュニティスペース「ぴたカフェ」の利用実態

2020-08-03 19:39:13 | 書架(こども関係)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

保育施設における空間構成とこどもの活動様態についての研究 ー特に一室型保育施設での保育と活動の実態に着目して

2020-07-16 17:12:10 | 書架(こども関係)

こちらからダウンロードできます

地域施設計画研究38 20207月日本建築学会
建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.38, Jul., 2020

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

子ども食堂の運営と利用実態および空間的特徴 −東京都で開催される子ども食堂を対象とした事例研究

2020-07-16 16:28:39 | 書架(こども関係)

こちらからダウンロードできます

地域施設計画研究38 20207月日本建築学会
建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.38, Jul., 2020

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

[卒業論文]上野山 綾乃  都市オープンスペースに配されたパブリックアートと人との関わりの様態 −遊具と滞在の契機として見いだされるパブリックアートに着目して

2020-03-31 11:58:12 | 書架(こども関係)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

元木望,山田あすか:戸建住宅における 「子育て要素」と住空間構成に関する研究,地域施設計画研究シンポジウム2019

2019-09-09 12:40:50 | 書架(こども関係)

日本建築学会地域施設計画研究シンポジウム2019,論文誌『地域施設計画』掲載の論文(論文本体は1年以内のアップダメなので草稿,でもほぼ本原稿と変わりありません)と,発表プレゼンです。

この論文誌はしばらくオンラインでアプローチしにくいままので,興味のある方にお届けしたいと思い。

*画像悪いよ,本原稿見たいよ,という場合は,建築学会にお問い合わせいただければ上記論文誌ご覧いただけます。

*前半に論文(10p),後半がプレゼンPPTです。初見の方には後半の方がわかりやすいと思います。

 

 

商品化住宅と呼ばれる住宅形態があります。

1950年代に工業化住宅が普及し始め,その後1970年代後半には工業化、在来工法の別を問わず,

ライフスタイルを切り口にパッケージ化した商品としての住宅が多く売り出されるようになりました。

これらがいわゆる「商品化住宅」です。

 多様な商品化住宅の中には,子育て期の世帯を対象とした住宅も多く,

 ライフスタイルに合わせて変化する可変型のプランや家事動線に配慮した計画等,様々な提案がされています。

 これらの住宅がターゲットとする主な購買者層は,子供をこれから育てる,または育て始めて間もない時期の家族です。

その後,住宅を購入した時の価値観と、子育てのプロセスを一通り体験したあとの価値観は,

必ずしも一致しているとは限りません。

 

そこで本研究では、

①「子育て」を住宅設計の主たるコンセプトとする「子育て住宅」としての要素,すなわち住宅購入時の評価要素の整理と,

②子育て期の終わり時期での住宅の評価を比較を行います。

これによって、長期にわたる「子育て」の器となる住まいの在り方についての知見を得ることを目的とします。

調査概要を示します。調査内容は2つです。

まず「子育て住宅」を取り扱うハウスメーカー8社の子育て住宅誌を対象とし、そこに掲載されているコンセプト・説明文から抽出した単語を分析しました。

また,モデルプランの空間構成を整理し、さらにテキスト分析ソフトを使用した抽出語の分析をしました。

二つ目の調査として,大学生を子に持つ保護者9名へのヒアリング調査による「子育て」の視点からの自宅の評価とその変遷を調べました。

まず 各社のコンセプトや説明文章を、場所・キーワードと効果に着目して整理します。

場所キーワードは,家族が共有する空間,家族の構成員のための空間,家事関係の空間の3つに分類しました。

【場所・キーワード】の例を挙げます。1階が共用空間,2階が個室群だとして,帰宅した子供が自室に行く際に共用空間に居る家族が帰宅した子供への声かけができる「おかえり階段」や

子育て,特に子供の見守りをしながらの“母親のための”家事空間、兼保護者が見守れるこどもの作業空間である「ママコーナー」,

見守りや家族との交流をしながらの作業がしやすい,子供の家事参加がしやすい「キッチン」などが掲載されていました

  

【効果】の軸を見ると,「家事のしやすさ」は全ての社が言及しています。

また「見守り・安心」、「家族との交流」は7社、「気配を感じる」は6社あり,家族との関係性は言及頻度が高いと言えます。

また,例えばA社の「キッチン」には「子供の家事参加,見守り,安心,リラックス・憩い,家族との交流」の効果があるとされているなど,

個々の場所キーワードについて,複数の意味や効果が関連づけられていることが読み取れます。

【場所キーワード】と【効果】の,該当数が多い3つの組み合わせについて,各社での詳しい提案内容を見ます。

「変化する子供部屋×間取りの柔軟性」には6社が該当しています。

5社は“可動間仕切り壁や収納を用いることで間取りを変えられる”としています。

これに対し,C社は“廊下と開放的に繋がる共有スペースを,将来間仕切り壁をつくることで子供の個室に変えられる”提案をしており,販売時の優先事項に,差異があリます。

これは,将来の子供の数の希望や,子供の主たる滞在場所をどう想定するかの対応の差異と理解できます。

「収納×子供の自立」の組み合わせには4社が該当し,各社で様々な提案がなされています。

このうち,大まかに見ればC,D,G社は何らかの場所の近くにある収納空間の提案です。

見守りや介助,指示がしやすく保護者が家事や自分のことを「しながら」の子育て視点が重視されていると理解できます。

これに対して,E社は家族構成員それぞれの個人専用の収納ワゴンという家具の提案です。

家族の共用空間に家族それぞれのものの拠点を持つことで片付けの習慣づくりを支援することが重視されていると理解できます。

 

  「キッチン×見守り・安心」の組み合わせには5社が該当します。

キッチン正面にカウンターがある提案が2社,キッチン正面にダイニングテーブルがある提案が3社あります。

いずれとも調理をしながら子供を見守れる点は共通しています。

キッチン正面にカウンターがある提案はこれに加えて子供やテーブルにいる家族とのコミュニケーションを取りやすさが記載されています。

これらのように、同じ場所と効果の組み合わせであっても,提案されている空間性に差異がある場合があります。

次に、8社のうち,モデルプランを掲載していた6社の図面を機能図として整理しました。

機能図を見ると,6社のうち5社が階段とリビングが繋がっている(リビングに階段がある場合を含む)関係で,階段を設けています。

 

しかしながら先ほどの図を見ると,「お帰り階段」は4社のみ説明文で取り上げています。

このように,同じ空間構成で計画されていても積極的価値を見いだし優先的に説明する点には,社によって差異が見られます。

ベランダ・バルコニーと部屋との繋がりに着目すると,6社のうち5社がベランダ・バルコニーに出入りができる部屋が複数あります。

例えばC社はバルコニーにファミリールームと洗面室が繋がっており,D社はベランダに子供室と主寝室が繋がっています。

このように,部屋の利用者が異なる複数の部屋を繋げることでベランダ・バルコニーの利用者に柔軟性を持たせ,

洗濯物を干す,取りこむといった作業に対する家族の家事参加を促していると読み取れます。

廊下の構成に着目してみます。

6社のうちA,C,D,G社は吹抜け(A社)やファミリーライブラリー(D社)等,家族全員が利用する空間であることを積極的に活かして,

家族同士が自然にコミュニケーションを取るきっかけとなるように計画されています。

次に、出現パターンの似た語を線で結んだ共起ネットワーク図による分析を説明します。

この図の見方ですが,円の色が赤に近いほど中心性が高く,青に近いほど中心性が低いことを示します。

また,円を繋いでいる線が太いほど共起関係が強く,円が大きいほど,語の出現回数が多いことを示します。

子育て住宅全体の傾向として、「家族」「子ども」「成長」が中心性が高い語です。

また、「子育て」「ママ」「家事」「キッチン」が共起関係にあることから、

子育て=母親という前提で説明文が構成されている傾向があることが指摘できます。

(どうかと思いますね。)

また,「収納」「場所」「スペース」が共起関係にあることから,

子育て住宅における収納の場所と広さが重要視されていると読み取れます。

さらに,「家族」「コミュニケーション」「自然」が共起関係にあることから,

家族間のコミュニケーションが自然に喚起されることが重要視されていると理解できます。

頻出単語と各社の関係性を示す対応分析をみます。

寄与率の高い「子供の成長と家事」の軸を見ると,

原点から離れた位置にプロットされた「家事」「ママ」という語とG社が近くに位置していることから,

「母親による家事」がG社を特徴づける語であると理解できます。 

そしてA社は安心やコミュニケーション、B社は家族構成員個々の生活を重視していると読み取れます。

複数の分析の関係を,G社を例にみます。先ほどの場所・キーワードとその効果の図と合わせて見ると,

G社は「子供の家事参加」では4つの場所キーワード,「家事しやすい」でも4つの場所キーワードにおいて効果があるとしています。

このことからも,G社は家事を重要視していると理解でます。

この表は,他社と比べて特徴的な語の上位10語を示しています。

各社での特徴的な語を先ほどの対応分析と併せて見ると、

 

それぞれ,重視している項目は,(A社)家族とのコミュニケーション,(B社)子供の遊び,(C社)家の空間性,(D社)子供の学習,

 (E社)子供の安全,(F社)家族での時間の充実,(G社)“働きママ”の家事効率,(H社) 家の機能性,このように抽出できます。

また,F社とG社で同じ「時間」という語が見られます。

しかし,語の前後の文を見るとF社ではポジティブな意味(幸せな時間,など),G社は効率性の意味(忙しい朝の時間,など)で用いており,

より詳細に見ると会社ごとのコンセプトや理念の差異が見られました。

各社のモデルプラン機能図と合わせて見ます。

例えばA社では玄関とLDKの関係,LDKと和室の関係のように機能同士が曖昧に区切られている,又は部屋内にエリアとして計画されています。

 

一方,「家族での時間の充実」を掲げているF社の機能図には,こうした曖昧な構成が一切見られません。

F社の提案では,各部屋の独立性が高く,それぞれの部屋での“充実した時間”を重要視していると理解できます。

「働きママの家事効率」を掲げているG社の機能図は,洗面室,家事室,

テラスが繋がる構成によって家事動線を集約し,家事効率を高めていることが読み取れます。

次にヒアリング調査について、特徴的な事例を報告します。

h家のように、間取りは父親が全部決めてしまったという例が3件ありました。

その理由として、母親が子育てや学校行事への対応で時間がなかった、ということが挙げられました。

「子育て」を担うが故に子育てをする場である自宅の計画に携われないという、逆説的な状況です。

ベランダが子供部屋に隣接している事例は2件あります。

c家は2階の子供部屋に隣接しているため,1つのベランダしか利用できず不便であるという意見が得られました。

主に洗濯物を干す際に利用するベランダにどの部屋から出入りができるかを,

その部屋の機能と関連付けて計画することが重要だと言えます

次に、リビングに階段を設けている4件のうち、e家では、子どもの幼少期は階段に上ってしまう危険性から柵を付けていました。

先ほど説明した通り、「おかえり階段」による利点はあるものの、

採用を決める際には家族構成員の年齢や住まい方の変化に柔軟に対応できる間取りが重要です。

子育て住宅誌の分析とヒアリング調査の分析結果を比較します。

子育て住宅誌の分析から見守り・安心,家族との交流,家事のしやすさに着目して住宅が作られていることが分かる一方,

子育てを終えてこれらが重要だと感じたと述べた家庭は9件中2件ありました。

また,子育て住宅誌の中で子供の安全について取り上げた会社が8社中2社であるのに対し,ヒアリング調査では9件中8件でした。

また、6社中5社のモデルプランがベランダに複数の部屋が繋がっているのに対し,ヒアリング対象者の自宅では,3件のみでした。

このことから,売り手の意識と実際の住宅の居住者の住宅購入に対する考えに差異があると言えます。時差も考えられます。

まとめです。

子育て住宅誌の分析では,「見守り・安心,家族との交流,家事のしやすさ」に着目し「家族,子供,成長」を軸に文章が構成されていること,また母親をターゲットに子育てや家事のしやすさがアピールされていることなどを示しました。

また,家族のコミュニケーションや子供の安全性,遊びなど,会社ごとに重視する点に差異が見られました。

ヒアリング調査からは,いくつか特徴的な事例が見られました。

間取りを決める際の父母の話し合い等の必要性,また「子育て住宅」としてのウリとされている間取りなどの子育て要素も,「おかえり階段」に柵がつけられた事例からわかるように、実際の生活のなかでは危険につながりうるため住みこなしの工夫が必要な場合があることも指摘されました。

 

 

  

 

 

筆頭著者の元木さんは,この研究も,プレゼンテーションもとても頑張っていたのですが,発表当日にどうしても仕事の都合で自分で発表が出来なかったので。

なるべくたくさんの人に読んでもらえるように,アップしておこうね! と約束してから1ヶ月半・・結構経ってしまってごめんなさい。

研究成果はせっかくなので,時間と空間を超えて,興味関心を共有できる方に届くと嬉しいです。

  

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

[卒業論文]為成 彩,茅ヶ崎市における保育ニーズと就労状況・意識に関する研究

2017-03-25 15:39:46 | 書架(こども関係)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山田あすか・上野淳:こどもと家族の利用実態に基づく 小児病棟プレイルーム改修における 調査・デザインと検証

2016-11-14 22:40:55 | 書架(こども関係)

「プレイルーム」で検索して,こちらに来られる方がいらっしゃるようですので。

日本建築学会技術報告集第13号25巻,pp.219-224,2007.06

掲載の論文を置いておきます。

カラーバージョンですのでこちらの方がj-stageなどで公開されているのより見やすいかと。

 

著作権は放棄していません。引用の際は,出典として

「山田あすか・上野淳:日本建築学会技術報告集第13号25巻,pp.219-224,2007.06」

を明記してください。

必要な方に必要な情報が届くことを願って,あえて公開しています。どうぞご理解ください。

 

 

以下,検索対応のための本文流し込みです。

著作権は放棄していません。引用の際は,出典として

「山田あすか・上野淳:日本建築学会技術報告集第13号25巻,pp.219-224,2007.06」

を明記してください。

必要な方に必要な情報が届くことを願って,あえて公開しています。どうぞご理解ください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.研究の背景と目的

1.1 プレイルーム改修プロジェクトの実施とその背景 

 聖路加国際病院(東京:1902年開院)は,1933年に小児病棟内にこどもが遊ぶスペース(以下,プレイルーム)を設置,1954 年には専属の保育士を配置し,こどもと家族に生活と遊びの場を提供してきた.1993年の全面改築に際しても,再びプレイルームが設置された.その後,①疾患構成や年齢構成が変容したこと,②車椅子使用児や年少児は手洗い槽に手が届かないこと,③長期入院児が増え従来の空間構成では複数の集団がプレイルームに居合わせることが困難な状況が発生し始めたこと,などからプレイルームの空間を再考する必要が生じた.他方,治療成績が向上し,元気になるこどもや,障碍や慢性疾患を抱えながらも社会に巣立つこどもが増えた.このため,こどもに本来必要な諸機能の発達を保障するべく,治療・療養期間中にも生活や遊びを提供する意義が一層高まった.

 こうした背景からプレイルームが改修されることになり,2002年9月,筆者らのグループに調査及び提案,計画が依頼された.その後,プレイルームの使われ方の観察調査や医師・看護師・専任保育士らを交えたワークショップを行い,問題点や課題点,その解決方法について子細に検討を重ね,こどもたちの生活や遊びの場としての新たな提案を盛り込んだ計画を立案し,2005年4月に竣工となった.

1.2 関連する先行研究と本研究の位置づけ

 建築計画の分野では,小児病棟や小児病棟におけるプレイルームに関していくつかの先行研究がある.小児病棟についての既往研究としては,医療行為の視点から,当該病院の小児病棟を実例とした患者の属性や病床稼働に関する詳細な研究が挙げられる文1).一方,発達やQOL等の観点から,小児病棟における医療行為時以外のこどもの病棟での過ごし方や活動の重要性が指摘されており,関連する研究も散見される文2〜4).中でも浦添ら文3)は,行動観察調査によるプレイルームの利用状況や遊び方の実態,遊び環境要因の解析から,入院患児にとっての「遊び」の環境という視点でみたプレイルームの建築計画の在り方を考察している.この中で氏らは,プレイルームは入院中の幼児と小学生にとって重要であると同時に,中学生以上の利用に対応できる空間整備が必要であることなどを指摘している.なお,各種建築物の改修手法や事業評価に関する先行研究は数多く見られるが,改修のプロセス及び,改修による空間の使いやすさの変化,そこで見られる場面の変化などの効果を実証的に整理した論考は多くない.本稿で取り上げるプレイルーム改修プロジェクトは,これら先行研究による提言を勘案しつつ,病棟プレイルームの使われ方の実態調査を経て改修提案を行ったプロセスと,改修結果としての使われ方の実態及びその検証を報告するものである.

1.3 研究の目的 

 当該病院のプレイルーム設置の目的は,入院中のこどもに発達の場を,またこどもや家族にくつろげる場を提供することにある.

 本稿は,当該プレイルーム改修に関して,

1)実地調査,課題点の整理,設計提案,改修後の調査分析による実効評価,を一つのサイクルとする計画研究の一事例を報告する

2)プレイルーム改修前後の使われ方を比較し,計画時に指摘した問題点が解消されプレイルームの設置目的が実現されているか,提案した空間が想定のように効果を挙げているか,の検証を行う

 の,2点を目的とする.

2.調査概要

2.1 聖路加国際病院小児病棟の概要

 当該病棟は,病床数36の小児病棟である(図・1,表・2).家族は24時間の面会が可能で,付き添いの家族が多数訪れる.病棟内には骨肉腫等慢性疾患を抱えるこども,骨折で入院しているこどもなどがおり,疾患は多様である.また年齢も0歳〜20歳以上と幅広く,患者の入院期間,疾患,年齢には幅がある.同時に,こうした年齢構成や疾患構成には時期によって変動があることも重要である.

2.2 プレイルームの概要

 プレイルームは,小児病棟の入り口及びナースコーナーの近くに設置されている.プレイルームには,平日は保育士1名が常駐し,こどもたちに遊びを提供したり,こどもたちの自由な遊びの相手,話し相手になっている.なお,読み聞かせの会などのイベントが毎週数回開催され,活発な運営がなされている.広さは個室3室分にあたる約46.5㎡で,改修前の便所,手洗いには使いにくさが指摘されていた(図・2).また,絵本や玩具等の多くのものであふれ ,収納の形状や色がまちまちで全体として雑然とした印象となっていた.

2.3 調査および研究の概要

 本研究では,表・1に示すこどもと付き添い家族の滞在様態と動線の調査,及びプレイルームの利用実態と評価に関するアンケート調査によって改修前後のプレイルームの利用実態を多角的に把握した.なお,いずれの調査とも事前に病院スタッフから患者とその家族に研究・調査の趣旨が説明され,同意を得た場合に限り行った.

 以下,プレイルーム改修の計画プロセスを整理し,改修前後のプレイルームの利用実態を比較しつつ,その効果を分析する.

3.改修前プレイルームの利用実態

 改修前のプレイルームの利用実態を終日の観察調査によって記録した.図・3には平日及び休日各1日の滞在と行動軌跡,図・4には横軸に時間,縦軸に場所をとってこども,家族,スタッフの滞在と移動の様子を示した.また図・5に,調査中に観察された滞在場面のうち,改修に際しての考慮点を示唆する場面を抽出した.これらの図から,プレイルームの利用様態を以下のように整理する.

1)利用人数とこどもの属性  当該プレイルームでは,休日にはプログラムがなく,また付き添い家族が多く,外泊するこどもが平日よりも多い.平日・休日ごとの終日の属性別利用人数注1)及び滞在時間合計示した表・3から,延べ利用者数は平日・休日で大差ないが,休日の利用時間総計は平日の半分ほどで,玩具を借り出すだけなどのごく短時間の利用が多いことがわかる.イベントや食事のための滞在を除いても,平均滞在時間は家族を除いて休日の方が短い.なお,小学生の利用は夕方以降の幼児が少ない時間帯にやや多い傾向があり,プレイルームでは時間による住み分けが起きている(図・4).

2)活動の相手と内容  プレイルーム内では,保育士が主導する5人前後での制作活動や,ままごと・プラレール遊びなどプレイルームにおかれた玩具での1〜3人程度での遊び,イベント時の大人数での活動などが見られる.特に幼児の遊びは,家族または看護師の付き添いのもとで展開することがほとんどである(図・4).しかし,付き添いの大人の滞在が考慮された設えがなされていないため,付き添いの大人は楽な姿勢をとれず,また安定的に「居る」ことが困難な状況である(図・5⑦⑧⑨).

3)限定された滞在場所  平日・休日とも滞在の多くが,滞在場所として設定されている畳コーナーとテーブルで見られる(図・3,図・4,図・5①②).保育士が場所の設定や遊びの提供をする平日には,保育士がテーブルや絨毯を設えるため「その他」の場所も使われるが(図・5⑤),こうした特別の設えがない休日には,滞在のほぼすべてが畳コーナーかテーブルに限られる(図・4).これは,プレイルームではこどもや家族が自ら場所をつくり,滞在することは困難であり,滞在のきっかけとなるような場所をあらかじめ設定することが重要であることを示唆していると考えられる. 

4)居合わせの様子  プレイルームの中では,いくつかのグループが共存的に滞在することがある.中でも畳コーナーと机には合わせて2〜3のグループが同時に滞在していた.しかし,上述3)とも関連して,「居られる」場所が少ないこと,畳コーナーの広さがニーズに対して充分でないこと(図・5①)などから,プレイルーム内に複数のグループが互いの活動を阻害せずに居合わせることは困難である.これは,こどもたちが一緒に遊ぶこと,家族同士が一緒に居合わせることを促す側面もあるが,同時に親子だけで遊ぶ,複数のこどもたちが家族と一緒に遊ぶといった活動の単位に対する選択の余地を少なくしているという側面もある.病気やけがでナイーブになっているこどもや家族がいること,こうした家族の中には必ずしも交流を望まない人々もいること,などに鑑みて,グループの数及び規模の選択可能性を保障する空間構成が望ましいと考えた.

4.課題抽出からコンセプト・ダイアグラム・平面提案に至る経緯

4.1 問題点,課題点の抽出と整理

 観察調査とそれに先立つ設えの現状把握より,プレイルームの改修にあたって克服すべき課題点として以下の項目が抽出された.

① 家具の寸法,形,素材,色彩等,インテリアに統一感がないこと

② 玩具・遊具の使用頻度による整理や,場と関連付けた配置ができていないこと

③ 天井面,照明,床仕上げ,家具などの設えが無機質で冷たい印象であり,あたたかさや柔らかさを感じないこと

④ 流しや便所のサイズ,デザイン,質感がこどものための設えとしてふさわしいとはいえないこと

⑤ 空間が茫漠と連続していて複数の「場」がなく,場の性格に多様性がないため,交流や活動に応じた場所の選択性に乏しいこと

⑥ 家族の存在が考慮された設えとなっておらず,活動が展開する単位に対応していないこと

4.2 コンセプトの整理から平面計画の提案までの経緯

 以上の課題点に基づき,改修コンセプトについて病院側との意見交換を重ね,双方の意見を表・4に示す5つのコンセプトに整理した.

 これを受け,5つのコンセプトに対応した空間構成ダイアグラムを作成した(図・6).同時に,こどもの発達段階による身体寸法の相違などに配慮しながら,以下のように基準となる寸法を設定した.

① インテリアの基準となる高さ:既存の窓台の高さとこどもの身体寸法に合った腰壁の高さとし,600mmに設定

② 畳コーナーの小上がり高さ:安全性,こどもの段差の移動しやすさ,かつ大人の座りやすさなどに配慮し200mmに設定

③ 遊び台の高さ:保育所等でのこどもの遊び場面を参考に,座位で遊ぶ台の高さ:200mm,立位で遊ぶ台の高さ:400mmと設定

④ 小上がりの奥行き:段差の下に点滴スタンドを置いてこどもたちが小上がりで遊ぶことを想定し,点滴コードが安全に届く限界である2,000mmまでと制限

 これら,ダイアグラムによる空間構成の整理と設定された①〜④の数値などをもとに,図・7に示した平面計画を完成させた.

5.改修後のプレイルームの利用実態,及び改修前後の比較による改修提案の検証

5.1 改修前後での変化事項

 改修後の2006年2月調査当時は,改修前の2003年8月調査時に比べ,プレイルームの利用層になりやすい入院期間がある程度長期に渡る乳幼児の数が少なく注3),長期入院児には小中学生が多かった.また,改修前調査時は朝食と昼食をプレイルームでとっていたが,改修後調査時には基本的にナースコーナーの一角でとることとなっていた.さらに,プレイルームをくつろぎ,安らぎの場所としてこどもに強く印象づける目的で,以前はプレイルームでも行っていた手術や麻酔の説明・バイタルサインの測定や服薬などの医療行為は原則禁止された.これに付随して,プレイルームの利用時間は10時以降に短縮された.これらの要因により,プレイルームの利用人数は改修前調査時よりも全体的に少ないことが予想された.

5.2 プレイルームの利用実態の変化

 改修前調査と同様に終日の観察調査を行い,改修後のプレイルームの利用実態を把握した.図・8は平日及び休日各1日のこども・家族・スタッフの滞在と行動軌跡,図・9は同じ2日間の利用の様子をバーチャートで示した図である.図・10は,調査中に観察された場面のうち,改修の効果を示す場面を抽出したものである.これらの結果をもとに,プレイルーム利用実態の変化を報告する.

1)利用人数とこどもの属性  終日の属性別利用人数及び滞在時間を表・5に示した.前述の通り2つの調査時点ではプレイルームの利用が想定されるこどもの数に差異があり,またイベントの開催や食事の取り方に相違があるため単純に比較できないが,前節で述べた状況にも関わらず,平日の自由遊び時間(表中網掛けで表示)の利用者数は改修前の約1.7倍,滞在時間の合計は1割程度の増,であった.平均滞在時間は家族を除いて減少しているが,これは,滞留と移動を繰り返して複数の場所を利用しながらプレイルームに滞在するこどもの増加などが影響していると考えられる.また,改修後は改修前よりも休日のプレイルーム利用が利用者数,滞在時間の合計ともに少なく,特に安静時間終了後の15時過ぎまではほとんど利用がない状況が続く.これは,プレイルームで朝食や昼食をとった後にそのまま遊び始めるといった,プレイルームに来る,プレイルームで遊びはじめるきっかけがなくなったことに起因すると考えられる.

2)滞在様態  図・7及び滞在様態の観察による図・10から,計画時に想定した使われ方と実際の使われ方を比較すると,小中学生のための机の利用頻度が低いものの,ほぼコンセプト及び提案に沿った使われ方となっていると考える.また,図・3及び図・8をもとに,場所別の滞在回数注2)と活動の相手の関係を示した図・11から,利用の相手において,全体に占める「家族のみ」の利用の割合が増加したことがわかる.図・10の場面①③④⑤⑧に見られるように,家族がこどもと一緒に滞在しやすい,また楽な姿勢でくつろいでいられる場所として使われていることが確認できた.また,居合わせの状況を見るため,図・12に,プレイルーム内に居合わせるグループ数注4)を2調査時点についてまとめた.滞在場所の選択肢が増えたことも影響し,複数のグループが同時に居合わせやすくなり,同時に居合わせるグループ数が増えたことがわかる(図・9,図・12).

3)滞在場所  まず,プレイルーム内にデッドスペースが少なくなり,限られた空間を有効に使うことができている(図・8).また,「居られる」場所が,テーブルと畳コーナーのみであった改修前の状況に比べて,改修後は2つの畳コーナー,2つのテーブルスペース,ソファ,本棚コーナーの奥と複数の「居られる」場所を設定している.このため,滞在場所の選択肢が増え,畳コーナー・テーブルへの滞在は他のスペースへの滞在に比して多いものの,複数の場所で滞在が起こるようになっている(図・9,図・11).図・11において,2006年休日の滞在場所を見ると,畳コーナー①②,本棚コーナー,テーブル②への滞在が他の場所への滞在に比して多い.この日は利用者数が比較的少なく同時に滞在する利用者が少なかったため,利用の密度が薄く,このため「広い場所・開放的な場所」よりも「囲われた場所」での落ち着いた滞在が好まれていたと解釈することができる.周囲の状況や他者との居合わせの状況による滞在場所の選択肢が創出されたと考える.

5.3 アンケート調査結果に見る改修の効果

 調査期間中に病棟に入院していたこどもとその家族に対し,プレイルームの使い方と要望等に関するアンケート調査を行った(配布数:33枚,回収:22枚,有効回答数:66.7%).「家庭的な雰囲気で病院でない空間と思える」,「靴を脱がずに座ってゆっくりこどもと遊べるスペースがある」,「親の居場所になっている」,といった改修のコンセプトが実現したことを示唆するコメントがある一方,「大きい子用のスペースが別にあればいい注5)」,「畳コーナーが好きなのでもっと広い方がよい」,といった,ある面では提案の成功による弊害が指摘された.またこれらは,本計画による平面構成及び設えが病棟入院患者の年齢及び疾患構成の変動に充分対応しきれていない可能性を示唆するものとも考える.

 なおプレイルームの改修に対しては家族からの評価が高く,また家族が自然にこどもと一緒にいることができているため,こどもも遊び込めていることが観察された.プレイルームをこどものための空間としてのみならず,家族とこどもの空間,家族のための空間としても位置づけたことは,結果としてこどもにとっても居心地のいい空間と印象づける効果をもたらしていると考える.

6.本稿の成果と今後の課題

 以上,本稿においては実際のプレイルーム改修プロジェクトの経緯に沿って実地調査からコンセプトおよび空間ダイアグラムの整理,設計提案,事後調査による計画案の検証,というプロセスを整理すると同時に,計画実施後の使われ方の実態について評価を行った.本稿は,あるプレイルームの断面調査に基づくケーススタディであり,以下の3点を今後の課題と認識している.

① 年齢や疾患構成の変動による,プレイルームの使われ方の推移を明らかにし,この変動に耐えうる計画を考究する

② 異なる考え方によるプレイルームとの比較を通して,居場所の提供を念頭に置いた本提案の効果について検証を行う

③ 継続的な研究により,こどもやその家族にとってのプレイルームの意味合いや生活・発達への寄与の実態を明らかにする

 これらの蓄積により,当該病院のプレイルーム改修の効果のみならず,広く医療をバックアップするこどもとその家族の療養生活環境の在り方の効果に迫る知見が得られると考える.

  本研究は,聖路加国際病院小児病棟 保育士・大野尚子氏,同  部長・細谷亮太氏,同 師長・吉川久美子との共同研究:「こどもと家族の利用実態に基づく小児病棟プレイルーム改修に関する検証的研究」の一環であり,同病院倫理委員会における審議を経て実施されたものである.なお,本研究の遂行にあたっては,平成18年度 財団法人がんのこどもを守る会治療研究助成による助成を受けた.また,当改修計画は,筆者ら他以下のメンバーの尽力によるものである;青柳由美子,高橋智子,広松はるか,室谷珠穂,福本哲二,星野賢司,加藤田歌,新田佳代,松生明子,申錦姫,坊上南海子.

注釈

注1)延べ利用人数:プライバシー保護などの観点による調査手法上の制約から,グループでの移動時などこども・家族・看護スタッフ個人を完全には特定していないため,プレイルーム内での場所の移動があるたびに,一人としてカウントした.

注2)滞在:立ち止まるなどのごく短時間の定位も含め,こども同士,親子,など活動をともにするグループの定位をカウントした.

注3)急性期入院など,一晩だけの入院などのときにはプレイルームの利用は起きにくい.

注4)食事やイベント時の滞在を除き,居合わせるグループの数に変動があるごとにカウントした.

注5)改修前のプレイルームの様子を知らない,14歳の患者とその家族からのコメント.改修前には幼児の利用が多く小中学生の利用があまり見られなかったため,改修に際しては小中学生の居場所の創出を意図した.その影響と,入院患者に占める小中学生の割合が増えたため,プレイルームの利用者は小中学生が多くなっていた.これを受けてのコメントであることを付記する.

参考文献

1)青柳由美子:患者属性と病床稼動の実態からみた小児病棟の建築計画に関する研究‐聖路加国際病院小児病棟におけるケーススタディ‐,東京都立大学2002年度修士論文,2003年3月

2)浦添綾子,仙田満,辻吉隆,矢田努:あそび環境よりみた小児専門病院病棟の建築計画に関する基礎的研究,日本建築学会計画系論文集 NO.535,pp.99-106,2000年9月 

3)浦添綾子,仙田満,辻吉隆,矢田努:あそび環境よりみた小児専門病院病棟におけるプレイルームの建築計画に関する研究,日本建築学会計画系論文集 NO.550,pp.143-150,2001年12月 

4)仲綾子,仙田満,辻吉隆,矢田努:入院児のあそび環境意識調査にもとづく小児専門病院病棟の建築計画に関する研究,日本建築学会計画系論文集 NO.561,P.113, 2002年11月

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【プレゼン】山田あすか・讃岐亮:学童保育拠点の定員確保のための地域資源を活用した拠点拡充配置の検討

2016-11-14 17:39:01 | 書架(こども関係)

日本都市計画学会『都市計画論文集』,Vol.51 No.3,pp.881-887

2016.10

 

これから,高学年児童が必要に応じて利用するようになると,どのくらいの不足が生じるか,

そのときに,地域資源を活用してどの程度の増設をすれば一定のレベルで定員の過不足を

コントロールできるか。

ということを検討した論文です。必要な人に・自治体に・届け!

 

論文はこちら

 

 

論文はこちら

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山田あすか・讃岐亮:学童保育拠点の定員確保のための地域資源を活用した拠点拡充配置の検討

2016-11-14 17:32:40 | 書架(こども関係)

日本都市計画学会『都市計画論文集』,Vol.51 No.3,pp.881-887

2016.10

 

これから,高学年児童が必要に応じて利用するようになると,どのくらいの不足が生じるか,

そのときに,地域資源を活用してどの程度の増設をすれば一定のレベルで定員の過不足を

コントロールできるか。

ということを検討した論文です。必要な人に・自治体に・届け!

 

プレゼンはこちら

 

 

 

プレゼンはこちら

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

[卒業論文]小池美樹   地方都市における子育て支援のニーズについての研究 -栃木県塩谷郡高根沢町を事例として-

2016-03-25 16:11:33 | 書架(こども関係)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

[修士論文]黒巣 光太郎 :保育施設の使い方と評価からみる保育室の適正規模の考察

2015-08-25 21:21:09 | 書架(こども関係)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

三浦泉,市岡綾子,若井正一:オープンスペースをもつ小学校における遊び行動と空間特性

2014-05-09 14:00:06 | 書架(こども関係)

オープンスペースをもつ小学校における遊び行動と空間特性ー福島県内の小学校におけるケーススタディー

日本建築学会大会学術講演梗概集(東北)2009年8月

三浦泉 市岡綾子 若井正一

 

1、背景と目的
 教室まわりをオープンにすることにより学習形態の変化など活動的に展開する一方、開放的な環境下において落ち着いた学習空間・遊びも求められる。本研究ではオープンスペース(OS) をもつ小学校における児童の行動を分析し、その有効性を探ることを目的とする。

2、調査方法
 福島県内のOS をもつ小学校を対象に、児童・教職員を対象としたアンケート調査と4日間の行動観察調査。

3、結果
 ・低学年のOS 使用率が約50% と高く、「床に転がる」「じゃれあう」などのくつろぎ行動がみられた。これに対し中学年のOS 使用率は約10% と最も低く、学内の様々な場所で遊ぶことで自分達の場所を探す傾向がみられた。高学年は、教室やOS で各個人またグループでお気に入りの場所がある様子であった。
 ・高学年である5,6 年生はグループで行動しており、他者から自分たちの場が見えるようコントロールしており、壁や家具と空間全体における位置取りのバランスがグループの領域に重視されているようだ。
 ・この小学校では学年の教室まわりに特別教室や図書館等が配置されており、高学年と低学年の児童がパソコン室で一緒に遊ぶなど他学年同士の交流が見られた。このことから低学年の教室まわりに特別教室等を配置することで自然と異学年との交流が生まれることが分かった。

4、まとめ
 学年に応じたOS を含めた教室まわりの空間イメージを家具の設えにより変化させることの有効性が確認できた。また対象校においてカウンターが児童の行動に多様性を生じることから、教室とOS の境界のデザインにも着目すべきと思われる。

5、感想
 学年ごとでOS の利用の仕方に特徴が生まれることがわかった。また低学年の教室まわりに特別教室等を配置することで異学年との交流が生まれるという結果につい興味がわいた。

 

 

(木村沙織)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

吉田将史,長沢悟:学校建築における小空間( デン) の使われ方に関する研究

2014-04-17 19:32:12 | 書架(こども関係)

学校建築における小空間( デン) の使われ方に関する研究

日本建築学会大会学術講演梗概集(東海)1994年9月

吉田将史 長沢悟

 

1、背景と目的
近年、子供の精神的な拠り所ととなり、安定感を得るための場としてデンを設ける例が見られる。デンにおける子供たちの行動
の観察を通して、デンの意味・有効性について考察する。

2、調査方法
様々な特徴のあるデンを設置した小学校4 校、幼稚園1 舎を対象に、一日の自由時間における行動を記録し、分析考察を行う。

3、結果
 ・デンにおける行動特性
  〈岩〉:女子の利用が高い。女子はおしゃべりなどの静的行動、男子は動き回ったりと身体的行動が目立った。
  〈中〉:利用が少なく、ほとんどが男子。行動の種類も少ない。
  〈日〉:読書など静的なものからプロレスごっこなど動的なものまで多様で、利用が活発であった。
  〈常〉:利用があまり活発でなく、女子の利用割合が多く、上段に留まる傾向がみられた。
  〈岩〉幼:小学校と比べ利用が活発で、上段での遊具を使った遊びやおしゃべりが多い。
 ・実験的観察調査
  〈岩〉のデンにおいて、ループ状の活発な動きを生む両端にあるハシゴの一方の利用を制約し、デンの性格に違いが生じる
か実験を行った。
  実験直後:実験前より利用人数・頻度が増加した。実験前は上段に長時間留まる様子は見られなかったのに対し、上段に溜
まっておしゃべり等をする様子が見られた。ハシゴの制約により生まれた安定感によるものと考えられる。
  一週間後:利用状況は前回同様活発。デン内外での行動の種類の大きな変化はない。実験後徐々に静的行動が増えた。

4、まとめ
 実験的調査からデンの使われ方の大きな変化として、より穴蔵的な行動が多く見られるようになった。また目的外の行為が多
く見られるようになり、変化に対する子供の戸惑いも感じられるが、変化に敏感に反応し新たな行動を生み出す様子も見られた。

5、感想
 デンの特徴やつくりによって子供の行動の種類が変化・増減し、また状況の変化によって自然と子供達の行動・利用方法も変
化することが分かった。

 

(木村沙織)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

奥村上 結衣、奈良岡 緑、中山 徹:幼保一体化施設の現状と子どもの保育環境に関する研究

2014-04-01 19:36:47 | 書架(こども関係)

幼保一体化施設の現状と子どもの保育環境に関する研究

日本建築学会大会学術演梗概集(東海) 2012年9月

奥村上 結衣、奈良岡 緑、中山 徹

 

1.背景

  児童福祉法により規定される「保育園」と、学校教育法によって規定される「幼稚園」が存在するが、幼稚園に通う児童は年々減少し、その反面で幼稚園児の預かり保育が増加する傾向にあり、幼稚園と保育園の垣根があいまいになっている。

2.目的

 ①現行の幼保一体化施設である認定こども園について、その全国的現状を把握

 ②両認可施設の幼保連携施設に着目し、子供たちの生活状態について把握する。

 ③①②を踏まえ幼保一体化施設の望ましい保育環境について検討する。

3.調査方法

  全国の認定こども園547件に郵送によりヒアリングなどを行い回収する。

4.調査結果

①認定こども園の運営実態

 (1)  基本属性

  保育に欠ける・欠けないに関わらず利用できる施設ではあるが小規模化の傾向がある。「

 (2)  認定に至るまで

  既存の幼稚園あるいは保育所が他方の機能を備え認定こども園になったケースが多い。

 (3)  認定こども園となった理由

  多様なニーズにこたえるため効率的で安定した経営を図るため。

 (4)  保育内容

  短時間児と長期間時の区別がなく、合同で保育を実施している円が大半。活動差が懸念される。

 (5)  子育て支援

  子育て支援の充実は認定こども園制度の大きな柱だが、変わってないという回答が3割であり、政府の狙いが達成できているとは言い難い

②子供たちの生活実態

 (1)  円の形態

  短時間児と長時間児の割合で短時間<長時間、短時間>長時間、短時間=長時間の3パターン。

 (2)  認定に至る経緯

  少子化による施設の存続の難しさ。効率的な運営へのシフト。

 (3)  保育について

  長時間児と短時間児で位置づけが違い、午前中に教育的活動、短時間児の降園後は自由遊びを基本とする保育。

 (4)子育て支援事業

  稼働間仕切りや独立したキッチンや相談室など施設により様々。

5.望ましい保育環境

 ①施設規模は100~200人程度

 ②長時間児の落ち着いた午睡環境、短時間児に多様な集団の確保。

 ③「長時間児中心型」園は多目的室を設置する。

 ④ランチルームを設置。

 ⑤子育て支援室には独立した相談室とキッチンを設置。

 

感想

施設の連携や一体化をするにあたって,どのように空間を一体化、分離するかという課題を抱えているという事がわかった。

 

(塚田 知樹)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

test

記事をタグで検索