建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

建築・環境計画研究室

この研究室は,2006年4月に立命館大学にて開設され,2009年10月に東京電機大学に移りました.研究テーマは,建築計画,環境行動です. 特に,こどもや高齢者,障碍をもつ人々への環境によるサポートや,都市空間における人々の行動特性などについて,研究をしています.

*当ページの文章や画像の無断引用・転載を禁じます*

3.卒業論文・卒業設計・修士論文・博士論文(2006〜2009年度)

2010-03-25 19:36:21 | □研究・設計業績(論文/プロジェクト等)

【2009年度(2010年3月卒業・修了)】

[卒業論文]松田 優

  医療スタッフ・付添家族・患児らの印象・利用度と滞在様態からみた環境評価の実態 −小児の療養環境改善のための環境評価指標の作成に関する研究 その1
  The realities of environmental evaluation from investigating impression, levels of usage, and staying situations of infant wards’ users

  →発展的論文が査読付き論文誌に掲載。 山田あすか,松田優: スタッフと患児、付添家族による小児の療養環境評価構造の整理 −地方中核病院Kを対象とする事例報告 こども環境学会 こども環境学研究, Vol.10 No.3(C.N.28), 2014.12

[卒業論文]今村 隆人

  医療スタッフと付き添い家族による環境評価構造の分析と環境評価項目の導出 −小児の療養環境改善のための環境評価指標の作成に関する研究 その2
  Analysis of environmental evaluation structure and derivation of environmental evaluation item by medical staff and patients’ families

[卒業論文]藤田 晴彦

  保育室の面積・設えと保育者の広さ感評価の関係から見た保育室の適正規模に関する試論 -0・1・2歳児保育室を対象として

  A Consideration of Proper Size of Child Care Room for 0 to 2-Yeay-Old Children ; Based on Relationship Between Room Area and Settings and Spaciousness by Caregivers

[卒業論文]小池 拓

  幼児・学齢期における障碍児の滞在様態と活動場面の成立に影響する環境構成要素の分析

  Study on the Handicapped Children’s Environmental Behavior and Their Meaningful Places at Schools and Nursery for Child Care

  →発展的論文が,日本建築学会計画系論文集に掲載。古賀政好,山田あすか:幼児・学齢期の障碍児の活動場面の成立に影響する環境構成要素の分析,2016 

[卒業論文]齊藤 麻未

  商業店舗前境界領域の開放度とあふれ出し展示による賑わい感と客の行動様態への影響

  According to bustling atmosphere and customers’ activities affected by openness-level of and extra display at boundary area in front of stores at commercial establishments

[卒業論文]皇甫 悠貴

  地域密着型高齢者施設における施設・地域間の関係構築に資する環境要素に関する研究

  Study on the Environmental Factors Contributing tot Establishing Relationships Between Community-based Nursing Homes and the Local Community

[修士論文]古賀 政好

  しょうがい種に応じた生活環境整備についての提言 −しょうがい者がともに暮らす場の構築に向けて

  【20130年度(第21回)日本建築学会優秀修士論文賞受賞】

  →発展的論文が日本建築学会計画系論文集に掲載。古賀 政好, 山田 あすか:重症心身障碍児者施設における空間構成と生活様態の関係についての考察,2009


【2008年度(2009年3月卒業)】

[卒業論文]松井 美希

  成人の記憶に残る活動場面と寸法感覚による学校建築空間の再考 -記憶の中の小学校のすがたをたどる-

  →発展的論文が,日本建築学会計画系論文集に掲載。山田あすか:従来型小学校での「記憶に残る場面」にみる学校空間 −成人による振り返りに基づく学校建築空間の再考 その1

[卒業論文]宮本 朋和

  活動時の使用面積と保育者による広さ感評価からみた保育施設の適正規模算出に関する試論

[卒業設計]阿部 尭広

  All Roads Lead to _____ 「学び」による旧東海道沿い商店街の再生

[卒業論文]木村 拓真

  小規模保育拠点運営者による子育て環境としての都市環境評価に関する研究 -京都・昼間里親と大阪・分園制度を対象として-

  →発展的論文が,日本建築学会計画系論文集に掲載。山田あすか:拠点外空間での保育に着目した小規模保育拠点運営の実態と保育者による都市環境評価:京都・昼間里親と大阪・保育所分園制度を対象として,2010

 

【2007年度(2008年3月卒業)】

[卒業論文]青木 美佑紀

  書店における客の滞在書架と探索行動特性に関する研究 −店舗ごとの建物・配架形態と客の属性による比較−

  →日本建築学会計画系論文集に掲載。

[卒業論文]古賀 政好

  重症心身障碍児者施設における空間構成と生活様態の関係についての考察

  →発展的論文が日本建築学会計画系論文集に掲載。山田 あすか, 古賀 政好:障碍者施設におけるスタッフによる環境への評価と異種障碍者共同生活に向けての課題 −障碍の別によらない生活環境構築のための研究 その1

[卒業論文]吉田 麻衣子

  保育時間帯による姿勢の相違にみる幼保一体型施設における園児の生活と場の構築

  →立命館大学紀要2009.03に掲載。吉田 麻衣子,山田 あすか:幼保一体型施設における 設えと園児の姿勢に関する研究,立命館大学紀要,2009.03

[卒業論文]渡邊 佐帆

  学童保育施設における空間特性と児童の遊び様態の関係性についての研究

  →発展的論文が日本建築学会技術報告集に掲載。山田あすか,渡邊佐帆:学童保育施設におけるゾーンのつくりと児童の遊び様態の関係性についての事例的考察,2011

[卒業設計]門野 太一

  中之島オフィス

[卒業設計]岡本 陽平

  裏寺町 空間美術館

[卒業論文]松井 喜三郎

  駅改札口付近における待ち合わせ滞在場所選択に関する研究 −設えが異なる京都駅西口改札と近鉄改札での比較

[卒業論文]和田 大

  計画的住宅街における公園の配置と使われ方の関係についての研究

[修士論文]日尾 麻美

  滞在場所と滞在様態に影響する空間構成要素に関する研究 −京都駅ビル内オープンスペースにおけるケーススタディ−

  →建築学会大会梗概集2008に掲載。


【2006年度】

[卒業論文]梶川 哲哉

  歩行速度の決定要因に関する分析的研究 −歩行者属性と歩行空間の条件に着目して

  →建築学会大会2007梗概集に掲載。

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[卒業論文]藤田 晴彦:保育室の面積・設えと保育者の広さ感評価の関係から見た保育室の適正規模に関する試論 - 0・1・2歳児保育室を対象として -

2010-03-25 18:11:57 | 書架(こども関係)

 

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[卒業論文]斎藤 麻未:商業店舗前境界領域の開放度とあふれ出し展示による 賑わい感と客の行動様態への影響

2010-03-25 17:56:20 | 書架(環境行動,都市空間)

 

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あたって嬉しい査読者シリーズ ~こんな査読者になりたい

2010-03-25 12:30:59 | 研究日誌
世界をよりよくしようキャンペーン 第1弾
「こんな査読だと嬉しい!」

査読者デビューの春の方いらっしゃいますでしょうか.
これまで巡り会った,お名前も所属もお仕事も存じ上げない匿名査読者の皆様.
いつも大変お世話になっております.先生方のおかげで日々精進させていただいております.
本日は,さまざまな査読者様に巡り会った経験および査読させていただいた経験を元に
わたしなりの「査読者とはこうあるべきだ」を考えてみたいと思います.

1.期限を守る
  (いつまでも返ってこないときっと困ってしまいますよね)

2.口調が丁寧である.語り口が優しい.
  (やっぱり攻撃的な口調というのはいかんですね.
   批判ではなく疑問点の指摘とかそういうスタンスがいいかと思っています)

3.論文の狙いを理解している
  (「そんなことやるっていってないじゃん」という執筆者のつぶやきが
   聞こえるような査読はすまいと思っています)

4.自分の考えを押しつけない
  (「・・という分析をしていないからダメ」などの意見は,・・・危険です.
   人それぞれ論文それぞれ興味関心のポイントは違うわけで)

5.自分の考えと同じではなくても批判的でない
  (意見が違うなら掲載された論文に対して反論すればいい話で,査読とは論文としての
   完成度や論旨構成を判断するモノであると思います.)

6.やんわりと提案的である
  (否定だけではなく,方向性の例示がある.ただし,やりすぎると4.に抵触するので
   あくまでも「やんわりと」.修正するかどうかを含めて判断するのは執筆者なので)

7.よく読む.
  (書いてないじゃないか! と書いて,読み飛ばしだったら,トテモ恥ずかしい.)

8.知ったかぶらない.
  (ふられたジャンルのことを知らないなら,辞退するか勉強するかすべき)


続きを思いついたら(信条が増えたら)書き足します・・.
ステキな査読者になりたい.
(でもあんまりたくさん回ってくると困る.たまにでいいです)
 
あと,ステキな査読回答書の書き方(かわし方?)なんても考えてみたいですが,
それは個別的すぎるかな.
でもフォーマットになる文例があると,回答書書き慣れない方には参考になるでしょうか?
論文の書き方は,論文集を見ればわかりますが,回答書の書き方は論文集を見てもわからないですものね.

 

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研究のアプローチについて

2010-03-24 16:55:00 | 研究日誌
(山田あすか)

来週からの新ゼミ生のテーマ探しをどう応援していこうかということで,
建築計画分野で新しい研究を探すには・・ を考えてみました.

「研究」として認められるということは,(新しい)計画的知見を得るということでもあります.
それには,ぱっと思いつくところ,4つくらいのカテゴリがありそうです.
それぞれのカテゴリで,「これからその系統でやろうと思うと,どういうことをしないといけないか?」が違います.

1.事例研究や事例報告
  →すごい(計画的に/社会的に/建築的に/といった視点で見て,凝っているとか,他と圧倒的に異なるとか,興味深い何かがある)事例,新しい事例を見つける
  例:【既出】オープンスペースのある学校の事例研究,先駆的にユニットケアをしていた特養事例の研究など

2.施設種別ごとの建築計画研究(これはいわゆる「王道」.システム全体の紹介をするような研究が含まれる)
  →新しい(いままで充分に取り上げられてこなかった,あるいは近年大きく体制が変わって,それがまだ未整理である)施設種別/仕組みや現象を見つける
  例:【既出】幼保一体型施設(認定こども園),グループホーム,小規模多機能,個室・ユニット型特養,など
    【いまこの研究室で取り組んでいるのは】障碍児者施設,特別支援学校,小規模保育拠点,など

3.独自視点の理論研究
  →4.とも関連.新しい切り口を見つける.
  例:【既出】居方,サードプレイス,固有の居場所,など
    【いま取り組もうと思っているのは】反復性,など.滞留性という言葉をはやらせてみたい気がする(半分冗談)

4.(建築計画分野にとっての)学際研究
  →建築計画分野の研究に取り入れられる,あるいは分野の発展に援用できそうな分野や考え方を見つけ,それを視座に据えて(ちょっと遠巻きに)見る.
  例:環境行動,心理,発達心理,生理,医学,社会学,など

研究のアイディアを考えるときは,「なにを」「どういう視点で」「どのような方法で」眺める(調査・分析・考察する)か,をセットで考えた方が良いですね.
それぞれ,「対象・目的・研究方法」です.
これらがセットでそろってないと,研究の企画にならないということです.
茶碗とお箸とゴハンがセットでないと,どうにもならないのと同じで.

 
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ろんぶんができるまで その2

2010-03-24 16:14:53 | 研究日誌
その1は,約1年前でした.
つまり1年間,ファースト(筆頭著者)で論文書けていなかった,と・・.
たまる一方ですもう.


・論文はやっぱり図版レイアウトによる全体骨子の構想ということで始まりました.


これはもう癖というか,こういう風にしか(ページ数が決まっている査読論文は)考えられません.
どれくらいの紙面を割いて,どのような図を使ってどのような手順で説明しようか・・という構想がないと,
書き進めていけないんです,わたしの場合はということですが.

しかしこの論文は構想通りには行かず(図が増えたり・・大きすぎたり・・),
思いの外筆がのったりして,右下に「技報で」と書いてありましたが,
投稿先も変わり構成も変わりで全然,最初の構想の面影はなくなってしまいました.



一旦,これでできあがり.
投稿しました.

はー・・・.
査読が返ってくるのは,いつもとてもこわいです.

忘れた頃に突如メールが来たりするので不意打ち的にショックを受けたりして.
でも,とりあえずは,1年間キープし続けた論文が出せたので,次に取りかかりたいという気持ちです..
次は,3年放置しているのに行こうか,1年放置しているのにいこうか,悩みどころです.
やれやれ.

 
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オープンハウス見学ご報告(産科婦人科医院)

2010-03-20 17:30:56 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪

(山田あすか)

藤木隆男先生の事務所で設計された産科婦人科医院のオープンハウスに行ってきました.

さすが藤木先生!のデザインで,しっとりとおちついてふんわりと優しい空間.
「ここで産みたい!!」と本気で思いました.引っ越しちゃおうかな(笑).



中庭を囲むかたちの建物で,回遊性があります.
また空間の「ひだ」が滞留性(これからそう呼んでみようかな)をもたらしています.



この中庭は,日だまりも日陰もあって,守られている感じがして,すごく居心地のいい空間でした.


どこもかしこも素敵だったのですが,
個人的には↓こういうちょっとした空間がたくさんあることが,感動的でした.



以前,JIHaの『医療福祉建築』に寄稿したペーパーに書いたのですが,
ひとりになったり,あかちゃんとふたりだったり,パートナーや家族と数人だったりする
・・逃げ場のような,静かに自分と向き合うような空間が必要だと思っていたのです.
初めて「おかあさん」になるときの環境には.
(何度目の出産でもその子にとっては初めての誕生で,その子にとってのおかあさんになるのは初めて.)
それがここにあって,自分の出産体験当時を思い出したら泣きそうになってしまいました.
いわゆる大病院で,多床室で,居場所になるような場所なんてなくて,1人でぼうっとできるのは,
夜明け前の廊下の突き当たり・・余分なベッドが置いてある「隙間」の空間だけだったんです.

そういう体験があるから,こういう場所があることの意味をすごく理解できて,
もちろん自分にとっては良かったのですけど(笑).
でもこういうところで産みたかったな!

↓わたしはたぶんここを居場所にすると思います.
はしっこで,人が通らなくて,外が見えるところが好きです.


人の通りに向かう居場所もあって,選択肢があることがとてもいいと思いました.


藤木先生がご挨拶で,「どんな建築もひとつの部屋からはじまる」ということを
とても大事に思っているのだとお話しされていました.
それは,いちばん身体に近い「部屋」という空間をつくることを大事にしないといけない,
という意味だとも,「部屋」というものをどのように考えるのか?という
空間の仕切り方について哲学をもてと言う意味とも思う,と.
以前,児童養護施設のシンポジウムでも先生はこの言葉をおっしゃっていて,
そのときは,こども1人ひとりの部屋(個室)をよりよくつくることがとても
大事だと考えるようになったのだとおっしゃっていました.



それが今回のデザインでは例えば,この入院室にあたるのかな?と思いました.
すごくいいお部屋です.明るいし,風通しもいい.
表情が柔らかくてとても落ち着きます.


いい建築をみると,ほんとうに嬉しくなりますね!

藤木隆男建築研究所のサイトで,いずれ詳しくご紹介があると思います.
わたしのつたない説明で興味をもたれたら是非ご覧になってください.

そうそう・・今回の医院は,住宅が併設でした.
そちらも(もちろん)すっごくいいおうちで,一緒に行った方と「ここに住みたい!!」と言い続けていました.
藤木先生に住宅設計で出会える場がこちらにあるらしいので,ご検討中の方はいかがでしょうか?
うちも,そんな機会があったら,ほんとにお願いしたいです!

 

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就学前乳幼児教育・保育施設における,乳幼児の空間認知能力や活動規模を踏まえた建築空間の適正規模の研究

2010-03-18 15:23:16 | □研究・設計業績(論文/プロジェクト等)
[図:山田あすか・宮本朋和,こどもの「環境と空間」研究会シンポジウム2009.03.13での発表pptからイメージとして抜粋]

調査フィールドは保育所,幼稚園,幼保一体型施設.
活動の展開の実際や,設えとの対応のなかで,どれくらいの面積・気積がこどもたちの成長・発達のための空間として適しているかを探る.

カテゴリ「研究日誌」に,2009.03.14に行われたシンポジウムでの報告概要がありますので参照してください.


(2010.03.18追記)
2008-2009年度でいただいていた厚労科研の期限が終わり,研究は一旦終了しました.
ここから,査読論文として投稿するという日々が続くわけですが・・ひとまず.
以下,この厚労科研の主査:佐藤将之先生(早稲田大学)による研究全体の成果抄録です.

・・・・・・・・・・・・・・・・・copy right@佐藤将之,山田あすか,橋本雅好,古賀誉章,倉斗綾子

厚生労働科学研究費補助金(政策科学推進研究事業)研究成果抄録(H21年度終了課題)

研究課題名:保育・生活場面の展開と心身や空間把握能力の発達からみた保育施設
      環境の所要規模に関する研究
研究期間(年度):H20~H21
研究代表者:佐藤将之(早稲田大学)
研究分担者:山田あすか(東京電機大学),橋本雅好(椙山女学園大学),古賀誉章(東京大学)

1.研究目的
 就学前保育施設は乳幼児の収容数の量的改善が課題とされ、適切な環境としての整備は発展途上である.児童福祉施設最低基準や幼稚園設置基準の乳幼児が居る施設の設置基準面積をみると、1.65㎡、330㎡といった「畳」単位の最低設置基準が散見され、その算出根拠は曖昧である.そこで本研究では、1)保育施設における保育や生活の場面を把握し、2)保育施設に通う園児の心身や空間把握能力の発達を物理的・建築的側面から明らかにする.それによって、3)保育施設環境の適正規模や諸空間に求められる1人あたり面積の基準を検討することを目的とした.


2.研究方法
 研究の視点として、①)設定された保育・生活場面、②)自然発生的な乳幼児の行動、③)保育者の環境受容と評価、④)乳幼児の心身の発達、を設定し、保育施設における設定と自由場面の双方,また乳幼児と保育者双方の観点を分析の視点に据えた.)アンケート・ヒアリング調査、)観察調査、)空間認知能力に関する実験的調査、によって、 A)保育や生活の場面の展開や B)乳幼児の行動様態を明らかにし、運営の理念や指針に対する視座を得ると共に、 C)運営プログラムを踏まえた保育施設の適正規模や諸室における面積等の検討を行った.


3.研究結果及び考察
本研究の結果及び考察の概要は以下の通りである.

 保育所、幼稚園、認定こども園計6550件を対象としてアンケート調査を実施した.
1)施設面積や園児数などの施設規模は、認定こども園が他の2つよりも大きい傾向があった.保育所・幼稚園では,1クラス増えると延床面積が約100㎡増加する.学齢別保育室の比較では,園児が過ごす環境という面では,幼稚園と保育所の間に大きな差がない.
2)施設の広さ評価では,園庭,遊戯室について保育所が他の施設よりも狭いと評価する傾向が見られた.処遇規模に関する保育者の評価は,担当するクラスの園児1人あたり室面積や現員による影響が見られる.
3)保育スタッフが現在使っている保育室に適すると考える理想人数から算出した保育室の1人当たり面積では、幼稚園保育所の3~5歳児に有意差はなく、2.11~2.95㎡/人となり、現状の最低基準よりも約1.1倍高い値となった.
4)保育スタッフが考える最も適した保育集団の人数では、保育所の5歳児、幼稚園の5歳児、幼稚園の4歳児、の3群が20~25人となった.3,4歳児では幼稚園の方が適切だと考える人数規模が大きい傾向が見られたが,幼稚園現行基準の35人は保育規模として大きすぎると評価されていることが明らかとなった.

 保育所、幼稚園(計40件)を対象として観察調査を行った.
5)保育室の中には,家具などを必要最低限にとどめるものと,積極的に家具を導入してコーナーを設けているものがあった.観察調査によって,実際に使われている面積を調べたところ,保育室内に遊びに対応したコーナーを設け空間を分節化することによって保育室内の面積の有効活用率が増す可能性があることが指摘された.
6)壁際・隅角部および狭隘部の利用率は低い.この傾向は,動的な活動だけではなく静的な活動でも同様であった.

 幼児の心理的自我領域、空間把握に関する実験を行った.
 A)3歳5ヶ月から6歳5ヶ月までの幼児212名を対象に指示物を答える実験を行った.
7)5歳児(年長児)の過半数が指示物を「アレ」と答えるのが675mmにおいて初めて過半数を超え、450mmとの回答割合を比較すると、約600mmで過半数が指示物を「アレ」と答えることが推定できる.この数値は、山田ら(同研究費補助金H19年度終了課題)が行った、保育室内の設え周りで活動する際に周りの設えから離れる距離と近似している.
8)幼児においての「コレ」領域とは、225mm~450mmまでを指し、おおよそ「手の届く範囲」であった.学齢があがるに従ってコレ領域が狭まり、アレ領域が広がる傾向があった.「ソレ」領域は極めて少なかった.
 B)満5歳38名を対象に保育施設内における音環境の把握を尋ねる実験を行った.
9)幼児に対し「何の音」かと聞いてもその音を発するモノを答えるのではなく、その音が発生する場面を構成する「場所」「人」「行為」を答える傾向が強い.つまり,場所や人や行為が音環境把握のための環境の手がかりとなっていることがわかった.保育施設一人当たり面積の最低基準緩和は、人口密度が増えることによってこのような環境の手がかりの喪失につながる可能性がある.


4.結論
 本研究では、保育施設における保育や生活の場面を把握し、保育施設に通う園児の心身や空間把握能力の発達を物理的・建築的側面から明らかにすることができた.保育所、幼稚園、認定こども園を横断的に分析し、設置基準について統合を図ることが現実的、効率的であることを明らかにできた.また幼児の空間把握能力実験では、心理的自我領域を明らかにし、有効面積を算定するための基本データを得られることができた.
 以上に基づいて保育施設の適正規模の検討を行った.下記に政策への反映案を示す.


5.政策への反映
 園児1人当たりの保育室面積など保育所・幼稚園・認定こども園による違いが無かったことから、それぞれの設置基準について統合を図ることが現実的、効率的である.また,様々な活動規模に対応できることや、昨今求められる多様な保育サービスに伴う人数変化にも対応するためには、多様なスケールの空間を提供すべきである.
 例えば、動的活動に使用できる保育室以外の保育面積が確保されていれば保育室の一人当たり面積は現行基準より小さくとも問題はない可能性がある.したがって必要面積の策定にあたっては,保育室のみならず施設全体の面積基準を検討する必要がある.
 さらには、壁際・隅角部の利用率の低い部分をより少なくするためには、小さな空間に分節することが有効となる.単なる面積基準ではなく、室形状や家具配置などの使われ方を含めた有効面積という考え方を基準とすることが有効である可能性が示唆された.
 また、子どもの人数規模に応じて保育者の評価に変化がみられたことから、保育士1人当たり、あるいはクラスの人数規模に関する検討が必要である.
 本研究の成果は,今後の就学前保育施設施策の充実に際し,より良質な建築空間の計画と整備に寄与し,また広く乳幼児の発達環境の構築に資するものとなると考える.


6.研究発表
①論文発表
1) 就学前保育施設の施設状況とその評価 全国保育施設アンケート調査より、倉斗綾子・山田あすか・佐藤将之・古賀誉章、日本建築学会技術報告集第15巻 第31号,pp.865-870、2009年10月【査読付論文】
2) (投稿準備中)幼児の指示代名詞による領域分節に関する調査研究 幼児の心理的自我領域に関する研究、早川亜希・橋本雅好・佐藤将之、日本建築学会計画系論文集【査読付論文】
3) (投稿準備中)就学前保育施設におけるスタッフからみた保育施設規模に関する研究、倉斗綾子・山田あすか・佐藤将之・古賀誉章、日本建築学会計画系論文集【査読付論文】
4) (投稿準備中)活動面積と設えからみた就学前保育施設の保育室必要面積に関する研究,山田あすか・藤田晴彦・早川亜希・佐藤将之・古賀誉章・倉斗綾子,日本建築学会計画系論文集【査読付論文】
②学会発表
1) 保育者と幼児からみたコーナー保育環境の評価に関する研究、白石雄貴・佐藤将之・若盛正城・佐野友紀、こども環境学会2009大会(ポスター発表)、こども環境学研究Vol.5,No.1,pp.63、2009年4月
2) 各種就学前保育施設の概況とその差異について 幼稚園・保育所・認定こども園の全国アンケート調査より、倉斗綾子・山田あすか・佐藤将之・古賀誉章、2009年度日本建築学会大会学術講演梗概<オーガナイズドセッション>、E-1分冊,pp.21-24、2009年8月
3) 幼児の指示代名詞による領域分節に関する調査研究 幼児の心理的自我領域に関する研究その1、早川亜希・橋本雅好・佐藤将之、2009年度日本建築学会大会学術講演梗概<オーガナイズドセッション>、E-1分冊,p.41-44、2009年8月
4) 就学前保育施設における幼児の音環境把握に関する研究、佐藤将之・野口紗生・若盛正城、こども環境学会2010年4月
5) (投稿準備中)活動面積と設えからみた就学前保育施設の保育室必要面積に関する研究,藤田晴彦・山田あすか・早川亜希・佐藤将之・古賀誉章・倉斗綾子,2010年度日本建築学会大会学術講演,2010年9月
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【総研】特別支援学校と障碍幼児保育施設におけるこどもの活動からみた環境構築に関する研究

2010-03-18 09:53:56 | □研究・設計業績(論文/プロジェクト等)

(東京電機大学総合研究所 研究課題(一般研究)2010-2011)

① 研究の背景(着想に至った経緯,研究経過,研究成果との関連および準備状況)
 本研究は,近年変革の途上にある「特別な支援を必要とするこどものための環境のあり方」について,障碍をもつこどもの発達や教育・療育,建築・環境計画の両面から考究しようとするものである.これまで応募者は,保育所に通うこどもや障碍者施設での人々の生活行動特性や,特徴的な居場所あるいは活動場面における居場所選択理由に着目した人と環境との関わり方について継続的に研究を重ねてきた.この研究は,その一連の研究成果を踏まえ,障碍をもつこどもの生活環境を対象としてさらに研究の発展を図ろうとするものである.平成21年度にこの研究に着手しており研究フィールドの開拓や調査手法の検討を行っている.

② 研究の目的
 本研究では,障碍をもつこどもが特別な支援を受けながら生活するなかで成長・発達を遂げる場としての特別支援学校と障碍幼児保育施設をフィールドとして,こどもの生活実態,行動特性,環境との関わりやその発達の様子を明らかにすることを目的とする.

 

研究成果の概要:

(ただいま工事中)

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3月10日(水)のつぶやき

2010-03-11 01:28:49 | つぶやきの倉庫(あすか)

15:40 from web
査読って・・そういうものじゃないと思う・・・.
15:41 from web
と,いう感想を抱くことがありました.はい.論文の「査読」と「指導」は違います.絶対に違います.
15:44 from web
また,「査読」は自分の意見を押しつけることでもない.少なくとも「査読」と「指導」の違いもわからない査読意見がまかりとおるのは仕組みの問題だと思います.
15:47 from web
断固抗議! しましたがダメでした! あきらめてもういいかめんどくさいからと従うか(その方が時間がかからない多分),またしても時間を割いて質問状でもたたきつけるか? とカリカリしてみたわけですが,そういう無駄なことをするくらいなら,この仕組みの中でできることをやった方がいいか.
15:47 from web
一度は言ったもの・・という言い訳を自分にしながら.心が折れそうです.
15:49 from web
ともかくも自分の今後に生かせれば無駄じゃないしという視点からは,「あー,こういう査読をするとカチンとしてしまうのね」ということを学んで,自分ではそんなことはすまい,と思うわけでした.
15:50 from web
そう・・違う考え方があると言うことを学ぶという意味では,どのような査読意見もとても勉強になります.
15:52 from web
指導教員のもとを離れて,独立してしまうと,あと論文を見て貰うという機会はとても減るので(指導教員がいるときからあまり論文に口出しされないという研究室もありますが).そう・・貴重な勉強をさせていただいているのでした.(落ち着いてきた)
15:53 from web
謙虚にならなくてはね.でも・・・・・・・・・・そんなことまで口出しって,アリ!?(やっぱりダメだ.相容れない価値観だ)
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3月8日(月)のつぶやき

2010-03-09 01:17:43 | つぶやきの倉庫(あすか)

15:37 from web
書き始めると深みにはまっていく ~それが論文.
17:39 from web
さえてきた! (気がする)
18:11 from web
残念 timeup.今日はおしまい.
18:15 from web
そういえば昨日,某大型家具屋で従業員さんが新人さんに教えている「・・という風にすると,たくさん買わなきゃっていう心理が(お客さんに)働くので,こういう風にするんです」という台詞が聞こえてしまいました.
18:17 from web
商業主義的な発想で研究はしていないはずなので,「こうすれば売れる!の環境学」みたいな発想で研究動機を見つけたらいけないな~,とも思うのですが,純粋におもしろいなあと思ってしまう一面もあり.
18:18 from web
医療・福祉系の真剣な(大事な)テーマが相当のウェイトを占めていますが,純粋におもしろいなあという研究も・・いいと思うんです.
18:20 from web
家具屋さんは家具屋さん独自でいろいろ研究しているんだろうな.売れる配置!売れるカラーコーディネート!とか.洋服屋さんや洋服売り屋さんと同じように.
18:20 from web
大学でやる研究じゃないか,とは思いますけど.
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3月6日(土)のつぶやき

2010-03-07 00:53:32 | つぶやきの倉庫(あすか)

16:02 from web
今日は入試の試験監督業務の担当日でした(今期4回目,今日で最後です).入試といえば,わたしはときどき「ああっ,今日が入試の試験日だったのに忘れてた!」という夢を見て,心臓バクバクさせながら起きることがあります.
16:03 from web
大学入試以来,かれこれ10年以上経っているのですが・・よほど印象深かったのだと思います.入試.みなさんもおつかれさまです.
16:03 from web
そんなわたしですが最近はじめて,「ああっ,今日が講義だったのに忘れてた!」という夢を見て,起きました.
16:04 from web
ようやくすこし進歩したようです.
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3月04日(木)のつぶやき

2010-03-05 01:18:34 | つぶやきの倉庫(あすか)

18:09 from web
卒論,修論,試験等々の繁忙期が一段落したので,たまりにたまっている論文の投稿に着手しました.
18:10 from web
しかしこれが,まず「どこに図・写真等のパーツがあるのか」「この図は何を言わんとしてつくったのか」「図の元データはどこか」などを確認するところから始まります.
18:10 from web
そしてこれが相当,大変だったりします.
18:11 from web
特に「で,どの図を組み合わせて,何を言いたいんだっけ」を思い出すのが・・.これだから,溜めずに早くまとめてしまった方が,いいのです.それはよくわかっているのです.
18:12 from web
やれやれ.
18:13 from web
でも数ある仕事の中で,やっぱり論文は最高峰に楽しいなと,思う次第です.
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