観測にまつわる問題

政治ブログ。政策中心。「多重下請」「保険」「相続」「農業」「医者の給与」「解雇規制」「国民年金」を考察する予定。

水害の実態と対策

2018-07-16 11:12:40 | 政策関連メモ
今度の水害でちょっと勉強してみようと思い、先日、本屋で見繕って「事例からみた水害リスクの減災力」(末次忠司/鹿島出版会)を購入。今しがた読了。自分の印象に残った箇所をメモして簡単に考察します。

①災害時、行政は災害対応に忙殺され、住民・マスメディア対応もあるので、中々平常時のような冷静な対応をすることは難しいので、事前に災害対応のシナリオをたて、訓練しておくことが必要(64p)。

マスメディアの(地元住民に対するインタビューの)話題をネットで見かけましたが、現場で対応にあたる行政の足を引っ張っていないかという観点も有り得るでしょう。筆者はマスメディアの取材も重要と思いますが(一次ソースをマスコミに拠らないSNSで知るというのはデマを知ることとほぼ同義であり(噂話ほど事実から遠い危険な情報はありません。面白可笑しいだけです)、行政対応のチェックを考えると、情報源を全て行政に頼る訳にはいきません。無論個人的なツテで安否確認することの重要性を否定している訳ではありません)、被災者を傷つけたり、災害対応の足を引っ張ったりすると本末転倒になると思います。

②アンケートで「必ずしも当たらなくても避難勧告・指示を出した方が良い」が88%で、「当たらないのであれば避難勧告・指示を出さない方が良い」が9%(65p)。

行政が狼少年になってしまうぐらい、「とりあえず出しとけ」は、防災の実効性の観点から逆効果だと筆者は思いますが(勧告や指示を出す時は従ってほしい時で、アンケートがどうであれ空振りが続くと特に実態を知らない層の行政に対する信用を失わせると思います。アンケートは出すのは出しとけば?を含んでいるのではないでしょうか?実際に避難が実行されて空振りが続いたとして88%が良い、これからも続けると言えるかに疑問があります)、迷うぐらいだったら、避難勧告・指示は出すべきだとなります。この本の他の箇所を見る限りでは、ある程度の確度で避難勧告・指示は出せるだろうと思います。いずれにせよ、対応の空振りより見逃しの方が厳しい見方をされるという指摘はその通りでしょうし、(費用対効果の観点は無視できませんが)災害の兆候を見逃さずに事前に勧告や指示を出していく体制を整備していくということが、行政の仕事なんじゃないかと思います。多分主軸になるべきは、総務省消防庁か国土交通省/気象庁/水防団なのでしょう。これに防衛省が要請を受けてサポートし、最終責任は政治家(地方自治体行政の長/職員や水防団を指揮できます)ということになるのではないかと思います。

③予測降雨は1時間先であれば、ある程度の予測制度を有しているが、3時間以上先だと予測の精度が落ちてしまう。当時の実績水位等の洪水状況から求めたパラメータを用いた予測計算を行うと、精度よく予測することができる(73p)。

別の箇所(13p)から総雨量ではなく、時間雨量の影響が大きいそうです。予測の精度は観測体制を整備すれば上がって行きそうですが、一日前に予測するという訳にはいかないのかもしれません。地元の首長ならまだしも、首相を精度の低い予測で振り回す訳にはいかないだろうと思います。災害の規模にもよりますが、東日本大震災クラスでもなければ、責任者/指揮官が首相ということにはなりそうにもありません。一時間は自宅待機していれば、避難に十分の時間かとは思いますが、あまり直前だと渋滞の危険性もところによってはあるかもしれません。後は豪雨の中避難指示が伝わるかの問題もあります。国がこうした問題に対応しなくていいとは全く思っていませんが、実際的に考えると、チェックすべきは地元行政の対応がシッカリしていたかになろうと思います。こういう微妙なバランスの問題を地元対応しないのであれば、地元の行政の存在意義すら問われることになると思います。そしてチェックのため働くべきは地方議員であるはずです。例えば24時間前に対応できる準備だけしておいて、いよいよ確度が高いことが分かれば、避難指示・勧告をキッチリ行い、人命財産を守っていく、あるいは道路等の危険箇所は事前に分かっているんじゃないかと思いますが、危険箇所を記載したマップを公開し近づかないよう呼びかける等考えられ、そうしたことが行われたか、これからどう体制整備していくかという話を議会でして住民に伝えていくというような仕事があると思います。ノウハウは国にあるでしょうから、国の(体制整備等による)サポートも重要でしょう。

④第5章「災害の前兆現象、河道の弱点箇所の着眼点」(79p~87p)

プロが点検したら、事前に被災しそうな箇所も分かりそうですし、補修もできると思うんですよね。何時災害が来るか分かりませんし、点検や補修も時間や費用がかかる訳で、神ならぬ人間が完璧な対応はできないでしょうが、やはり堤防決壊という結果が出ている以上、点検・補修体制が整っていたかは反省点になると思います。

⑤「減災に活用できる新技術」(100p~103p)

潜水ドローン・水陸両用バギー・救助用ネット・救助活動用伸縮棒が使えるそうです。ネットでは水上バイクによるボランティアの救助が話題になり、それはそれで良いことだと思いますが、行政に必要な設備が整っていることも重要でしょう。設備を眠らせておくは有り得ませんから、海自や海保等に設備があると良いかもしれません。