フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 皆さま、今年もよろしくお願いいたします。
 さて、このブログではテレビドラマについてよく書いていますが、NHK朝ドラや大河ドラマについては、書くことが少ないと思います。別に避けているわけではないのですが、3か月ごとのテレビドラマへの感想を書いている関係で、民放ドラマと放送期間の違うNHKドラマについては、書きにくいところがあって、タイミングを逸してしまうことが多かったと思います。
 さて現在放送中の朝ドラ『ブギウギ』を、私は楽しみに視聴しています。既に批評がたくさんあるので、ここでは違う観点から書きます。朝ドラでは過去の実在人物がモデルに使われることが多いのですが、中でも音楽をテーマにした朝ドラでは、時代との関係が実にうまく描かれているという印象を持っています。『ブギウギ』の前にそれにあたるのは『エール』でした。どちらも、「なぜその時代にこの曲が歌われ、人びとに支持されていったのか」というところから、その時代と音楽の関係が作中で描かれています。私はテレビドラマ研究者として、時代とテレビドラマの関係について考察することが多いのですが、音楽(特に流行歌)と時代の関係についても同様の考察ができると感じています。
 放送中の『ブギウギ』は、年末年始の関係で、今週は2回(木曜・金曜)だけの放送でした。しかし、太平洋戦争の末期を描く実に濃い2回でした。ドラマの中の戦争期の描き方はどうしてもステレオタイプになりがちなのです。しかし、1月5日(金)放送回は、福来スズ子(モデルは笠置シズ子・趣里)が戦争未亡人のために歌い、茨田りつ子(モデルは淡谷のり子・菊地凛子)が特攻隊員のために歌う、という内容でした。詳しいことは省きますが、戦争未亡人だから戦争を恨んでいる、海軍の上官だから軍の規律通りの言動をしている、といったステレオタイプにとどまらない、それぞれの葛藤がみごとに描かれる内容でした。時代と音楽が切り結ぶとことにドラマが生まれる、そんな回になっていました。
 週明けからは戦後の時代と音楽の関係が描かれることでしょう。今後も期待して見ていきたいと思います。

※このブログはできるだけ週1回(なるべく日曜)の更新を心がけています。



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