エキセントリックなエピソード、ドラマティックなストーリー&テリングが明快な小説を立て続けに読んでいたこともあり、そこに戻れるんだろうか?愉しく読めるんだろうか?と少し億劫になっていた『未明の闘争』は、そんな不安を払拭した。この小説がなぜ面白いのかを解明したい。
トポス、というか地理が理解っている、というのも大きい?でも、それでは、ボラーニョやビネの面白さが証明できない。
「……もともとお守り言葉による攻撃は人々の心を情緒をとおしてうごかすのだから、これに対して理屈で自己弁護をこころみても無駄である。理屈による弁明をきいて諒承する人々なら、はじめからお守り言葉による扇動にうごかされはしない。」(言葉のお守り的使用について/鶴見俊輔)
「言葉のお守り的使用がさかんな状況は、合理的思索のおとろえを示すものだから、……お守り言葉の意味の変化は、人々の思索の結果として自立的におこなわれるものではなく、思索以外のもの――力によってもたらされる場合が多い。」(言葉のお守り的使用について/鶴見俊輔)