考えるための道具箱

Thinking tool box

80年代を想う、Beer & Book。

2004-12-01 19:17:45 | ◎読
ビッグコミックスペリオールで、日韓合作の大作にもかかわらず、これまたどうしようもない紋切り型の漫画の連載が始まっている。その初回で、主人公が、行きがかり上ナンパした形になった女性と六本木界隈らしきバーで飲むシーンがあるのだが、柑橘系のような果実のスライスを口にねじ込んだスタウト瓶を手に持ち乾杯していた。
いうまでもなく「コロナ+ライム」である。おそらく80年代に、わけ知り顔の人たちがプールバーなどで、「いまはこれだよ」と先鞭をつけていたのだろうが、いまにして思えば、空虚な80年代のなんとも陳腐な飲み方である。この大作は、どうやらリアルタイムを描いているようだが、いまだに六本木ではこういった飲み方が受容されているのだろうか。

ただ、銘柄やライムは別にして、ラッパ飲みというのは、なかなか気分がよく「ああビール飲んでるんだ」という充実感があるのも事実だ。
これにより多少なりとも味覚も左右されるかもしれない、ということをキリンの最新商品「ホワイトエール」を飲みながら感じた。以前に、「一番搾りとれたてホップ」を夜中の3:00に飲んだため、微妙な味の違いはわからなかった、と書いたが、「ホワイトエール」については、さすがにチルドビールだけあって夜中の3:00であっても違いが大きく実感できた。つまり美味しく飲めた。これまでも「豊潤」「まろやか酵母」などのチルドビールは、酵母が無ろ過の状態と言われているだけあって、きわめてビールらしい味と香りを醸していたのだが、ただ、それだけではなく、瓶を鷲づかみにしてグイッとやる飲み方にも、アフォードされているのかもしれないと感じたわけだ。

ちなみに、恒例の「Beer & Book」画像の背景にあるのは『現代思想/12月号/緊急特集ジャック・デリダ』(青土社)。さすがに夜中の3:00から読み出せるほど、回路が明晰でなかったので、ほとんど読めていないが、「あらゆるグラフェーム(文字素、書き込み、記載)は本質からして遺言的である」というフレーズがふと目につき、空虚な80年代と空白の90年代をやり過ごしたあとのごく最近のデリダの輪郭を知るには、最適のテキストかもしれない、と感じた。店頭では『d/SIGN №9』(太田出版)(※1)と『反・哲学教科書』(ミッシェル・オンフレ、NTT出版)(※2)と迷ったわけだが、とりあえず優先順位としては、デリダで正解だろう。

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(※1)岡本一宣さんや、有山達也さんへのインタビューのほか、後藤繁雄さんの記事などもあり、そういった意味では「伝える読ませるデザイン」についてのいくつかの回答がありそうだ。あいかわらず、戸田ツトムさんのエディトリアルデザインも映え、それだけでも、手元においておく意味はあるかもしれない。
(※2)なんでも、フランスで8万部の大ベストセラーで、実際に高校の教科書として、使われているらしい。「君はどこまでサルか?」「人肉を食べたことはあるかい?」「なぜ校庭でオナニーしないのか?」「便器が芸術作品になるときとは?」「君はケータイなしでいられるか?」「最低賃金労働者は現代の奴隷か?」「幼児性愛は自らの選択なのか?」「学校の規則なんていらない?」「学校はどうして刑務所みたいなのか?」「警察とは堕落のための存在か?」「暴力は肯定されるべきか?」「机に「ノー・フューチャー」と刻んで、何がいいたいのか?」「大統領になるためには「うそつき」でなくてはならない?」「どうして学校で大麻が買えないのか?」といった、扇動的なテーマが設定されており、それぞれの論考のあと、思想家・哲学者の著書からの引用がプロットされている。衝動的には買ってしまいそうな本ではある。ただ、タイトル的には、『反社会学講座』(パオロ・マッツァリーノ、イースト・プレス )を意識しすぎだね。


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