音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

天の守護神 (サンタナ/1972年)

2010-10-10 | ロック (アメリカ)


1970年代中頃にクロスオーバーという言葉が音楽用語として用いられていたが、これは当時、ロックとジャズが融合した音楽の事を差していて、後にフュージョンと言われるようになった。だが、クロスオーバーという事で言えば、それは、色々なジャンルの音楽の融合の事を指すのであって、そういう動きは、ニューウェーブロックのミュージシャンには普通に行われておりその後は、その融合音楽に関して、特にクロスオーバー等という様な事もなくフュージョンだけが言葉としては残った。

尤も、このサンタナに関して言えば、1970年代初頭からロックとラテンを融合させた音楽を演奏しており、ある意味では元祖クロスオーバーで、この言葉と音楽形態が流行った頃も、殆どがジャズ系ミュージシャンだったが、サンタナも加えられていた。勿論ジャズではないから、その後、フュージョンと呼ばれることは無かったのである。また、サンタナの音楽はプログレッシブだという意見もあるが、確かに考え方としては先進的であるが、それをバンドのコンセプトとしていた訳ではなく、たまたま発表された音楽がリスナーに取ってプログレな要素があっただけで、意識的に彼らがプログレだった訳ではない。このアルバムの2枚後に「キャラバンサライ」という、ちょっと面白いコンセプトのアルバムを出したりしているのでそんな言い方もされるが、あのアルバムの前兆は既にこの作品にも含まれている。この作品はサンタナの名前を不滅にした名曲が含まれている。そう、「ブラックマジックウーマン~ジプシー・クイーン」のメドレーである。サンタナと言えばこの曲、サンタナの曲を演奏しようと言ったら即ちこの曲を演奏しようという、ある意味でサンタナイコールの曲として音楽ファンにも認知されたほどの名曲となった。後に、日本では「哀愁のヨーロッパ」が大ヒット(何故か日本では凄かった。英米でもそこそこ売れたが、日本の売れ方は異常で、それはどちらかと言うと、マドンナ的な売れ方ではなく、津軽海峡冬景色的なヒットだった)してこちらもサンタナを代名詞となったが、サンタナと言って前者を思い出すのは音楽ファン、後者が出てくるのは歌謡曲ファンの違いである。ブラックマジックウーマンメドレーは音楽をやっていた身から言わせるとステージで演奏したい衝動に掻き立てられる見本のような曲である。まず、リズムが良い。ラテンだ。この曲を演奏したことのある人間は皆、自分にはラテンの血が流れていると勘違いするのである。それから結構各パート共に遊べる。特にパーカッションのリズムがしっかり取られている(勿論これが前提条件だが)ので、メロディ楽器が掛け合うと面白い。勿論、ドラムとパーカッションが掛け合っても楽しい。私はチョッパーベース(余り得意ではないが、この曲だとやりたくなってしまう)で、リズムとメロディの間を駆け巡っている。そういう楽しさが詰まった名曲なのである。実際にセッションでもステージでも盛り上がるのだが、今改めて考えるとあまり素人がやる曲ではなくて、サンタナが演奏するから格好いいのであって、アマチュアバンドのレベルだと多分に観客は呆れていただろうと恥ずかしく思う。

しかし、サンタナの音楽というのは、そういう双方の楽しみがあり、音楽を鑑賞も演奏のどちらも趣味がある人には堪らなく良いバンドなのである。それがサンタナの魅力で、だから長いこと音楽界で活躍し、沢山のアワードにも輝いているのである。


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