音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ハートに火をつけて (ドアーズ/1967年)

2010-11-23 | ロック (アメリカ)

この作品も、「ロックの名盤」という特集や本があれば、必ずと言ってよいほど選出される1枚である(逆にこの1枚を選出しない人間はドアーズ嫌いかよっぽどのへそ曲がりである)。しかしこのアルバムに関して言えば、「サージェント・ペパーズ」同様、決してお約束の1枚ではなく、100人が聴いたら100人が良いと言うもとに程近い、まさにロック史上に残る名盤であるからだ。
当然、私の様に実は結構なへそ曲がりでも、「ロックの名盤を100枚選べ」と言われたら間違いなくこの2枚は最初に選んで、後の98枚をじっくり考える。だから10枚でも同じだし、クラシック、ジャズも含めてジャンルを問わず10枚と言われても、やはりこの2枚は絶対に最初に選ぶ。なぜなら、もしジャンルを問わずと言われた時にはロックからはこの2枚しか選べないかもしれないから、先に確保しておく、そういう作品である。

とにかく、時代的にもセンセーショナルな作品で、私もリアルタイムではなかったが最初に聴いたときはこの時代背景を一度に全部分かったという様な錯覚に陥った作品だった。またその強いメッセージ性に、同時に分かっただけでなくあの時代を背負いこんでしまった奇妙で一種独特な感覚を覚えた。詩に関しては英語力が不足しているのでライナーノートに頼るしかなかったが、如何せん音に関していえば、サイケデリックでもあり、いやサイケ以上にトリップした旋律が多い。特に、「ブレーク・オン・スルー」、「水晶の舟」、「ハートに火をつけて」、「チャンスはつかめ」などはまさにギターといいキーボードといい、トリップを示唆している旋律である。このアルバムが当時の反戦運動や反体制のシンボルになったり、当時のヒッピーに支持されたというのは物凄く良くわかる。一方でメッセージの強烈さは詩に表現され、その最たるものは名曲「ジ・エンド」であり題材はエディプス王の近親相姦物語を扱っており現代を風刺しているその内容は発売当時から現代に至るまで多くの論争を呼んでいる。映画「地獄の黙示録」にも使われる様に後々への影響もとても大きい。また、「ハートに火をつけて」は当初予定にはなかったシングルカットをファンの強い要望によって成し遂げた。それが証拠にこのシングルはチャートを上昇し、全米No.1になり、年間チャートでも1967年の第2位(1位はあのルルの「いつも心に太陽を」だった)に輝いた(1位と2位のギャップが凄い!?)。ドアーズの特徴としてベーシストがいない構成が面白いが、これはレイ・マクザレクがローズ・ピアノベースを左手で弾くことでベースパートを補っているがこれが必要以上のペース音を強調していなく、それが余計にトリップな旋律の要素になっていることも忘れてはいけない。この音楽でベースがズンズン言っていたら多分にトリップの様相とは異なった世界になってしまっていたと思う。その辺りは後期にはベースパートを補っているところが、もしかしたら意識的にそのような構成しにしていたのかもしれない。

ドアーズというバンド名は、オルダス・ハックスレーが18世紀の詩人ウィリアム・ブレークの詩の一節から取った書のタイトル『知覚の扉』をから引用した。このようにドアーズはその成立からしてとてもコンセプトや存在意義を重要視していたグループであるにも関わらず、当時はそれよりも音を重視され、当時の風潮とも相俟って若者層の象徴となった。しかし最近になってその辺りも見直され、そういう意味では時を超えて支持されるバンドでもある。


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