音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

イエスソングス (イエス 1973年)

2009-11-03 | ロック (プログレッシヴ)


プログレッシブロックのライブバンドとしての金字塔を立てたのがこのイエスのこのアルバムである。プログレッシブロックというのは、どちらかというとスタジオ録音だから可能である音楽の編集や、各ミュージシャンのテクニック云々を問われていたが、私は、フロイドの「ウマグマ」と、このアルバム、更に少し後の発売されるEL&Pの「レディースアンドジェントルマン」の3枚で、プログレッシブロックがライブ演奏盤における地位を向上したといえる。残り2枚に関しては別の機会に書きたいが、この3アーティストに共通していることは、プログレッシブバンドのライブ演奏というのは、スタジオ盤の高いクオリティを踏まえた上で、更にライブではライブ特有の試みを幾つも成しえているということである。

このアルバムはLPレコード時代では3枚組だった。CDだと2枚組であるが、やはり3枚組の方が、曲の順番構成が綿密に考えられているといえよう。よくイエスファンのツボを心得ている選選曲と曲順である。更にAB面とあるから、その辺りの計画性はとても高い。これは「レディースアンドジェントルマン」にも言える。また、高校当時、バンド活動でイエスのコピーも良く演奏していた身としては、クリス・スクワイアのベースラインはスタジオもさることながら、やはりライブの方が断然面白かった。友人と曲を聴いていて、彼のベースラインも面白いところや、スタジオ盤にない、スティーブ・ハウとのユニゾンの部分などを指摘すると、「なんか、すっかりベーシストになったな」と、からかわれたものだ。そう、私個人はクラシックピアノ出身だが、軽音楽部ではキーボードはもとより、弦楽器はギターが中心で、バンド数に比べベースの絶対数が足りなくて、どちらかというと当時はなんとなくベースを弾いていたが、この「イエスソングス」の演奏コピーで、私は本格的にロック音楽におけるベースラインの面白さを味わったと思う。今考えるとクラシックからジャズに転移していたらもっとジャズベースは面白いと思っただろうが(クラシック的にブギウギピアノはご法度でしたから・・・、でもジャズだったら、本音は絶対サックスにいっただろうなぁ・・・)、このアルパムをきっかけにベースラインの本当の面白さを味わった。

さて、リスナーとしてのこのアルバムは、実は聴く前に大きな不安があったのが、ドラマーである。個人的には、ビル・ブラッフォードという人は、全ての音楽の中で、アート・ブレイキー、ハービー・メイスンと並んで大好きなドラマーであり、リズムセクションを実践する上では大変参考にしていたし、イエスのコピーを演奏をするバンドの友人ドラマーも、ビルを最も尊敬していた。しかもこのアルバムでは、イエスのヒットナンバーの殆どは、新加入のアラン・ホワイトが叩いているという不安もあった。ビルのプレイは2曲(1曲はメドレーになので正確には3曲)だけで、中でも、「パーペチュアル・チェンジ」には、ドラムソロが入っていてこれは素晴らしい演奏である。当時の海賊盤を何枚か持っていたが、例えば、「シベリアン・カートゥル」、「燃える朝焼け」そして、名曲中の名曲「ラウンド・アバウト」に関しては言えば、全くプレイのスタイルが違う。ビルの基本はジャズドラムにあり、しかし、その上に立って、ロックのリズムを刻んでいるのが特徴であるが、アラン・ホワイトはハードロックドラマーである。なので前述のアップテンポの曲はまだ良いが(勿論ドラミングは単純でビルの様にところどころで変拍子を刻んでないので曲全体が単調。アップテンポだから誤魔化せるという意味)、例えば、「同志」や「危機」などの緩急の多い曲は、まだこの時点ではクリスとの相性は決して良くなく、クリスが完全にリズムを引っ張っていっている。「ロング・ディスタンス」なんかは全然ついていけてない。また、それをカバーするために、「同志」の主題部では、リックのシンセがリードをしたり、アランもヴォーカルの入りを遅らせたりと、結構、メロディ班がリズム班を気遣っているのが良く分かる。勿論、後々、このアンバランスは解消されているが、この時期のライブでのアランは残念ながら相当きつかったと思うし、同時に海賊盤でこの当時のビルの演奏は結構残っているので、この正式アルバムは全曲、ビルのドラミングが聴きたかったのが本音である。誰が何といおうと、カール・パーマーと並び、(プログレの枠内に捉われず)彼はロック界で最高のテクニシャン・ドラマーなのであるから。

イエスが絶頂期の時代の作品だけに、今でも良く聴くアルバムである。但し、一方でプログレという音楽が、クラシックよりも万人向きではないということも露呈してしまっているのは悲しい。プログレの地位向上にはもっと単純な曲の方が良く、だから、何れ触れると思うが「ロンリー・ハート」とトレヴァー・ラビンの加入はこのバンドにとって大きいのであろう。


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