音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ゲット・ビハインド・ミー・サタン (ザ・ホワイト・ストライプス/2005年)

2013-06-30 | ロック (アメリカ)


バンドの存在と作品は既に聴いていたものの、ジャック・ホワイトという人を最初に知ったのは、勿論、映画「コールド・マウンテン」に出演していた姿だった。映画とは、現在休眠中の別ブログでも散々書いて来たように「総合芸術」であって、だから、その時の旬な芸術として最新の音楽も欠かせないが、このときの出演はこの映画作品の主題に関わる部分のシーンでもあったために大変印象が強かったし、全体的にも作品の中で一息つく場面であったので、その印象度は大変強かったのは、結構、多くの人も感じたのではないか。つまり、すごく良いところで、またミュージシャンという役柄で出演させて貰った訳だ。筆者もこの年の映画における音楽賞(日本公開日を原則としているので正確には2004年の音楽賞)にこの作品を選んでいる。尤も、この作品は前作「エレファント」で全米でも人気が出た直後であったために、その注目度も高く、結果その後のグラミー賞受賞の後押しになったことは否定できない。だが、これは音楽ファンとしては喜ばしいことであると思う。

そんな、音楽的にも、また興行的にも成功を収めた次に一体、どんな作品を持ってくるのだろうかという期待は大変大きかったところに出たのがこの作品。「悪魔よ、我が背後に立て!」というもの凄いタイトルで可也驚いた展開だったが、しかし、この作品は前作や成功のプレッシャーをひとつも感じさせない内容であり、前作、或いはこれまでに彼らの音楽を引き継ぎつつも、さらに新境地に挑んでいるのだが、しかし、それをさらっと、なんの抵抗もなくこなしてしまっているところにはタイトル同様、驚き以外のなにものもない。既に述べているように、前作「エレファント」は、21世紀の新しいブルースを提言した素晴らしい内容。しかし、本作品は、更にホワイト・ストライプスの新しい世界を提示した。まずは"Blue Orchid"で、彼ららしい、ハードなロックから入っていて、ここはしっかりこれまでの音楽を踏襲しているものの、2曲目の"The Nurse"ではマリンバから入ってきていてちょっと驚く。そう、このジャックのマリンバの使いかたがエスニックなのである一方で、メグのドラムはまるで違う音楽をやっているかのような叩きっぷり。しかし、妙にバランスが取れていて、そんなところにジャックの前衛ジャズっぽいピアノが合わさる。多分、このユニットを知らない人だったら、これは滅茶苦茶をやっているんじゃないかと思ってしまっても不思議ないと思う。この曲はこんな感じで終わるが、しかし、その後の曲も、それぞれ構成は全く違うが、そんな度肝を抜いてしまう展開の曲が続く。
無論”Instinct Blues”の様なこれまでの音楽の延長上にある(でも、なんか初期のツェッペリンに通ずる)新しいブルースの提言あり、また、”I'm Lonely (But I Ain't That Lonely Yet)”のような新形式なバラッドもあり。そしてそんな中で更に驚くべきこととして、ホワイト・ストライプスはこういう音楽をやっても、なぜか肩に力が入っていない。また、なにかを力強く提言しているように聴こえない。それが実は前作と一番大きな違いなのだと思う。つまりはこうだ。「世の中に存在するありとあらゆる音楽をすべて自分流に解釈してしまうが、それが彼らのすごいところである?」。この表現が当たっているか否かは分からないのだが、兎に角、彼らの音楽性は、こうでも言わない限り、筆者には説明不可能だ。

ところで、ホワイト・ストライプスのアルバムジャケットは、決まって、赤と黒と白を使ってきたが、これはそもそも、メグの好きなペパーミント・キャンディからインスピレーションを受けたものだそうで、実はバンド名もこれから名づけられたそうであるが、一方でジャックによれば「ナチからコカ・コーラまで通じる、最も強力な色の組み合わせ」なのだそうで、この段階ではすっかり彼らのトレード・マークとしても定着していた。しかし、次作ではそれを捨ててしまう。という予告を以て、取り敢えずこの作品のレビューは終了させて頂くこととする。


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