音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

水曜の朝、午前3時 (サイモン&ガーファンクル/1964年)

2013-04-30 | ロック (アメリカ)


ポップ音楽界の最高のデュオといえば、なんといってもこのユニット、サイモン&ガーファンクルをおいて、他にない。いや、失敬、ポップという領域に留まらず、音楽史上、最高のデュオであるに違いない。ポール・サイモンとアート・ガーファンクルがコンビを組んでいた時間は然程長くはないが、その僅かの間に、輝かしい金字塔を打ち立てたのも事実である。この二人はユダヤ系アメリカ人で、ニューヨークのクイーンズ地区の出身である。しかし、彼らは60年代という時代にあって、その時代に翻弄されることもなく、また、多くのファンが彼らを慕ったにも関わらず決して彼らの代表にはならず、常に、どんなことにも中立でありつづけた。彼らの生い立ちからすると、あの時代風潮の中にあって、大変不思議なことかもしれないが、要するにそれ以上に音楽に真摯であり続けたのだということが言えよう。で、あるから、最初は「フォーク・ロック」という定義の中での音楽だったが、アルバムを発表する毎に斬新さと冒険を追求することで、ついにはS&Gしかできない全く新しい音楽を作り出した。そしてその音楽に関してはどんなミュージシャンにも追随を許さなかった。彼らの作品が、21世紀になっても、また時を越えても新鮮で、多くの人々に感動を与え、支持される所以はここにある。

しかし、そんなS&Gサウンドというのは無論、一朝一夕に完成したものではない。特にこのファースト・アルバムは発売当初の1964年には全く売れなかった。彼らのデビューまでを少し補足すると、ポールとアートは小学校時代から親友だったそうだ。1957年には別のユニット名でシングル「ヘイ、スクール・ガール」という曲を出しているが、これは、そこそこ売れたらしい。しかし二人はそのヒットに甘んじることなく、60年代に入るとそれぞれの音楽追求のためにソロ活動を開始する。所謂、下積み生活である。並行してふたりはそれぞれ大学で学位を取った(アートは美術学を専攻していた)後、1963年に再会。満を持して発表した作品が本作「水曜の朝、午前3時」である。しかし、彼らに取って大変不運だったのは、丁度、この時期はフォーク・ブームの沈滞期にあたり、音楽市場は英国のロックバンドを歓迎していた。従ってこのアルバム、最初はなんと3000枚しか売れなかったらしい。確かにこの作品、実に完成度は高くて、例えば、天使の声と言われるアートの声を、ポールが絶妙にハモっているのであるが、そのハーモニーは所謂、これまでのフォークや、クラシックにあった「王道」のハーモニーではない。この二人のデュオは特異であり、不均衡な調和が絶妙のバランス感覚で保たれている。さらにいえば、そのバランスを支えているのがポールの独特なギターの旋律である。つまり、S&Gは、ふたりのヴォーカルとひとつの楽器という3つの音でハーモニーを構成しているのである。その面白さが分からないとこの作品は理解できないのかもしれない。だが、この顛末にがっかりしたポールは、英国へと音楽修行の生活をはじめるが、そんな最中に、このアルバムに含まれていたかの名曲、"The Sound of Silence"が大ヒットしてしまう。これは、セカンドアルバムのところでも書くが、このアルバムではギター1本で演奏されていたこの曲を、トム・ウィルソンというプロデューサーが、無断でエレキギターやドラムなどを別テイクで加えてシングル発売したところ、これが大ヒットしてしまう。ポールは怒ったらしいが、市場はそんな彼らの意志とは裏腹に、次なる期待を示し始めたという訳で、ここに「フォーク・ロック・デュオ、S&G」が誕生するのである。

前述、二人の学生時代のユニット名は?これ、ファンなら必ず知っているが、結構、ミニオネラ級の問題(実際に何処かの国の番組の最終問題で出題されたらしい)。答えは?
次の作品のときに発表するが、これだけでもこのユニットが世界クラスであることが分かる!? (笑)


こちらから試聴できます。


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