音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

アクシス:ボールド・アズ・ラヴ (ジミ・ヘンドリックス)

2013-06-13 | ロック (アメリカ)


なにかの評論で読んだことがあるのだが、ロックミュージシャンをパート毎のベストワンを選ぶのはたいへん難しい作業だが、ギタリストは、ジミ・ヘンドリックスがいるから楽だといった人が居た。まさに、これは蓋し名言だと思う。ジミ・ヘンの前にジミ・ヘンなく、ジミ・ヘンの後にジミ・ヘンはない。まさに彼はロック、いや、ポップギタリストの、ということは、こと、ギターという楽器の演奏者としての頂点に位置する存在である。ジミ・ヘンが何故凄いということに関して、筆者ごときが偉そうに述懐できることではないが、ギター演奏に関して多くの功績を残した中でも、エレキギターという楽器に関して可能性を引き出したことが大きい。なかでも、当時は全く無名であったこのフェンダーのストラトキャスターを、ロックギタリストの象徴にしたということだ。ジミ・ヘンの後、名だたるギタリストの殆どがこのストラトをプレイすることがギタリストのステイタスであるが如く、競ってこのギターを選んだ。クラプトンしかり、ジェフ・ベックしかり、リッチー・ブラックモアしかり、お陰でこのギターはギブソンのレスポールと並ぶ、ソリッドボディ・エレクトリックギターの代名詞的存在になった。ヘンドリックスが使っていた時代には他に使用するミュージシャンはほとんどなく生産中止の噂もあったが、前述の名だたるミュージシャンは言わばヘンドリックスのフォロワーであり、これによりストラトキャスターの人気が一気に上昇したと言われている。ジミ・ヘンは右利き用(この時分にストラトは右利きしかなかった)を左利きで使用した(弦は逆に張った)が、これは、実は左で弦を爪弾いたほうが、3つのコントロールノブが上側にくるため、演奏中に左手で自在にノブを操作し音質を変化させるという独特の奏法を生み出すことができたという説もある。そのくらい、このストラトという楽器を知り尽くしていた訳で、この音と楽器に対する探求心が人より何倍も旺盛だったといえる。だから、やはりジミヘンは最高のギタリストなのであろう。

この作品は、ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの3枚録音されたスタジオ盤の2枚目であり、一般的に言われている名作2枚に挟まれていて、評価は今ひとつのようだが、筆者的には3枚すべてが最高の出来の良さで、ある意味「完成されたギタリストレコード」である次作よりも、この作品で公然と行われているギター実験の方が面白く受け止められる。名曲"Little Wing"は短い曲だが、その後のロック・バラッドの手本となったし、"If 6 Was 9"の独特な緩急なグルーヴ感は最高である。これぞジミ・ヘンサウンドである"Spanish Castle Magic"も良い。こうして聴いていると、ジミ・ヘンはただ単に上手いというだけではない。早弾きだったら彼よりも早く弾けるギタリストは沢山いるだろう。テクニックだって、ジミを上回っているギタリストだって沢山ではないが存在する。しかし、そんな、点取り合戦みたいな話ではなく、ギターという楽器と、その楽器を通して探求した音楽に真摯に向き合い、実証し、たくさんの後輩に影響と感動を与えたというのが、ジミの功績の本質なのだ。

ジェフ・ベックはジミに「君のブルースは気持ち悪いから、フージョンをやったらどうだ」と言われたらしい。その後10年近くたって、彼はその分野で第一人者となる。またジミ・ヘンのバックでサイドギターを弾いたクラプトンに、「オマエはギターが下手だからベースに転向した方がいい」と言われ、怒って帰ってしまったらしいが、そのクラプトンがクリームで作った曲"Sunshine of Your Love"はジミ・ヘンステージを見て感動した3人が、触発されて作った曲だという。ツェッペリン立ち上げの時期で多忙な故、チャンスがありながらも残念ながら交流のなかったジミー・ペイジはなんとストラトを弾くことすらなかった。このようにジミ・ヘンは多くのトップミュージシャンに多大なる影響を与えているのである。今、この時点においても・・・。


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