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アルト・サックスという楽器はジャズの世界でもビッグ・バンド時代の後半、及びスイング・ジャズになってからバンドに加わるようになったが、そもそもがテナー・サックスも同様、ジャズの世界では楽器とは考えられていなかった。しかも、参加するようになった始めの頃は、派手で豪快なテナーに比べると地味な楽器であり、ソロ楽器として認知されるようになるには随分時間がかかってしまった。
チャーリー・パーカーは別格としてもハード・バップ時代から、徐々にファンキーなジャズに移りゆく中で、エリック・ドルフィーと共に、フリー・ジャズでジャズ音楽の世界を拡散させていったのがこのオーネット・コールマンである。だが、彼は中々認められるミュージシャンではなかった。特に、1950年代西海岸を中心に活動していたが、名作「ジャズ来るべきもの」を引っ提げ、ニューヨークでデビューをした途端、一大センセーショナルを巻き起こした。しかし、商業音楽の利益優先に嫌気がさしてしまったオーネットは、引退生活入ってしまうのだ。皮肉なものでその後フリー・ジャズは大きなムーブメントとなったのはジャスファンには周知の通り、勿論、彼を期待する声は全米中に広まっていった。オーネットもこういう多くの声に応えるように1965年にカムバックを遂げ、復帰の欧米ツアーを開催、その締めくくりとしてスウェーデンで行ったライヴを収録したのが、このアルバムで全2巻である。この作品は何といっても1曲目の「フェイセス・アンド・プレイセス」に尽きる。まさに「フリー」の名が示すような自由気儘なメロディ・ラインは、一方で調子っ外れだと批判されることも多かったが、フリー・ジャズのフリーとは何ぞやということを見事に音楽で証明しているのがこの作品であるというのは、あらゆる音楽・及びジャズ評論家が言っている通り、それを実感できる演奏だ。この演奏を聴いた人の恐らくは、音楽とは耳で聴くのでなく、身体で聴くということもあるのだという貴重な体験が出来るであろう。尤も、ジャズという音楽はそういう部分が他のジャンルに比べて非常に多い分野であるが。
それにても、この演奏も凄いトリオである。なんども書くが、やはり音楽構成の中で3人というのは名演奏や名曲を最も生みやすい構成なのかもしれないし、勿論、経験者として言えば一番アンサンブルが難しいのも周知の通り。余程上手い人が集まらないと音楽としてなりたたなく、若い頃はわざと3人でバンド構成をし、自分たちの腕と感覚を磨く輩も多く存在した。特に、オーネットの演奏はアルト・サックスの常識を逸脱していて、だから名演奏なんだとも言える。
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