音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ドゥービー・ブラザーズ・ファースト (ドゥービー・ブラザーズ/1971年)

2013-08-31 | ロック (アメリカ)


ロック音楽ファンならご存知のかたも多いだろうが、音楽を系統的にジャンル分けすると、実は一般的によく言われている「アメリカン・ロック」という分類はない。それもその筈でそもそもこの音楽自体がアメリカで発祥したものだからだ。一方で「ブリティシュ・ロック」という分類はある。正確には「ブリティッシュ・インベンション」と言われている分類で、アメリカで発祥した、「ソウル」、「モータウン」、「サーフィン/ホットロッド」というところを踏襲して、イギリスで再構築された、所謂「ブリティッシュ・ビート」であり、ここから、ヤードバーズやストーンズの「ブルース・ルーツ」、ビートルズが代表である「マジー・ビート」、フーやスモール・フェイセズなどの「モッズ」という音楽に整理されるのであるが、これらのミュージシャンは既にアメリカでも活躍中であったことから、これらの音楽が1960年代の後半に中心になってくる。では当時アメリカのオリジナリティってなんだったかというと、ボブ・ディランやバーズの「フォーク・ロック」である。つまり、我々が一般的に言っている「アメリカン・ロック」というのはこのフォーク・ロックが発祥なのである。では、実際に「アメリカン・ロック」と言ったらどういうバンドを思い出すだろうかと言うと、やはり、ザ・バンドオールマン・ブラザーズ、そして初期のドゥービー・ブラザーズだと思う。これらのバンドは、正式には「カントリー・ロック」とか、「サザン・ロック」とか、もう少し後で「ウエスト・コースト」と言われるが、後々には、この「ウエスト・コースト」が「アメリカン・ロック」のイメージに一番近い。

さて、このドゥービーのデビュー・アルバムであるが、この作品はとてもこの「ウエスト・コースト」と「アメリカン・ロック」という表現をそのまま音楽に表現したような内容だ。学生時代ドゥービーをやりたいって連中とみんなで曲を集めたが、その時にちょっと愕然としたのが、"Long Train Runnin'"や"China Grove"を持ってこられたこと。そんなの、ドゥービーのコピーバンドじゃなくたってやってるし、自分以外に誰もこのファーストアルバムからの選曲がなかったことはショックだった。なにより、この作品こそが彼らの原点であり、アメリカのロック音楽黎明の作品だと思っている。アメリカの音楽はカントリーである。日本でいう民謡に近い。そこに、ある日突然、ロカビリーとブルースが融合した、ロックンロールが現れた。そしてこれらの要素をアメリカンテイストで融合させたのが、丁度、このアルバムのような音楽なのだ。この作品を好きな理由として、バンジョーがギンギン鳴っている曲があると思えば、ビートをガンガン前面に押し出してくる曲もある。また、カントリー以外にフォークの影響があるのか、旋律がきれいに流れているのと、やはり、ハーモニーは必須である。そして、このアコギもエレキも混ざったギターサウンドというのは当時イギリス音楽には見られない点であり、しかし、このギターロックはこの10年以上あとに、イギリスのロック音楽の主流となっていくものである。実は、ドゥービーサウンドってこの後、色々な展開を見せながら、ちょっとありえないようなところに落ち着いていったりするんだが、ほかの作品を聴いていると分からないが、このアルバムにはその殆どすべてが集約されているのである。だから、筆者は彼らの作品でベストを上げればこの作品だと思うし、一番好きなのは転換期になった「ドゥービー・ストリート」である。

この作品は商業的には全く成功しなかった。確かに地味な作品だったかもしれないし、前述した彼らのコピーバンドをやろうという輩ですら、この作品からの選曲は一曲もなかった。パット・シモンズが好きな筆者にとっては、この作品の音楽観はとても、田舎のアメリカ的で大好きなんだが・・・。そう、ちなみにドゥービーとは「マリファナ煙草」のスラングだそうだ。


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