音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ライヴ・アット・リーズ (フー/1970年)

2014-02-15 | ロック (イギリス)

ポップ音楽が隆盛を極めた要因の大きなものとして、それまでの環境と大きく異なるものはレコードという保存媒体が一般的になったことであろう。その細かい歴史的なことについてはここでは触れないが、一方で60年代はそのレコードの売上が人気のバロメータとなり、またそれが齎す利益というものがあまりにも大きかったために、この利権に多くの人間が食いついた。商業音楽の始まりである。だが、やはり音楽というのは興行が大事だということも60年代以降は明確で、同時にそれは新たなビッグビジネスの創出になった。そういう事があったから、ビートルズは生まれたのだし、マイケルは単独で2億5000万枚も売ったアルバムを作れた訳であるが、いやいや人間の欲から生まれる知恵というのは恐ろしいなと、音楽産業だけを見ていてもそう思う。

1960年代後半から70年代前半を代表するライヴアルバムだと思っているのが、このフーの作品である。このアルバムは1970年に発売になったがそのときは全6曲。1995年に発売25周年のスペシャルエディションで15曲の収録になったが、音源は同じ1970年2月14日に行ったリーズ大学での演奏の録音である。ライヴアルバムの構成はオリジナルより、この記念エディションの方が良いので、こちらをご紹介したい。というのも、この作品が発表された背景には、前作「トミー」のプロモーションのため世界ツアーを敢行し、このツアーが絶賛され大成功だったために、その集大成としてのライヴ発売が期待された。しかし、周囲の期待とは裏腹に、フーのメンバーはこの世界ツアーで疲れ果てていたために、80時間にも及ぶライヴアルバムの収録候補曲のサンプルテープを改めて聴く意欲など、彼らには到底持ち合わせていなかった。ビートルズがある日突然、ツアーを止めてしまったように、この時代、ライヴといっても現在のようにビジュアルで大仕掛けがあるショウとは違うし、スタッフもまだ各専門家というのが存在している訳ではないから、両側面を充実させるというのは至難の業であった。結局、出来上がったこの作品は世界ツアーのものでなく、その後追加的に行われたリーズ大学と、翌日のキングストン・アポン・ハルでの音源で制作されることになったが、後者は収録中に不手際が生じ、結局、リーズ大学の音源だけになった。メンバーの評価は高くなかったが、とりわけ、ファンには人気があったこのライヴは、「トミー」ツアーの収録盤という当初の目的とは変わってしまったが、彼らの全盛期という事や「トミー」の音楽性の高い評価と相まって、後世に名盤と言われるようになった。

ロック音楽のライヴ名盤というのはそんなに多くない。生演奏という録音と演奏のクオリティがどうしてもスタジオ盤よりも低下するからなのだろうか。但し、フーのような類い稀な音楽テクニック(特にキース・ムーンのドラミング)、或いはステージパフォーマンス(ビデオではないが、ここでピートが飛んでいるとかを予想してしまう)があるバンドは特別である。この作品以降、楽器演奏テクニックを競うライヴが増えてきたのも事実だし、同時に、規模が徐々に大きくなっていく。そういう過渡期の作品であることも、本作が名盤たる所以かもしれない。


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