音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

キャッチ・ア・ファイア (ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ/1973年)

2013-08-16 | その他のジャンル


夏になると不思議とレゲエが聴きたくなる。というのが従来より筆者の音楽サイクルだったのだが、実は昨年もそうだが、レビューを書くという行為に繋がっていない。いや、それ以前にここ数年、夏になってもレゲエを聴いていないのだ。随分前に英国の音楽雑誌かなにかのコラムで「レゲエを聴くのに最適な気温は28℃~30℃」とかなんとか書いてあったのを読んだ記憶があるが、なるほど、その気温の信憑性の可否は別として、日本の夏はここ数年、レゲエを聴くには暑すぎるのかもしれない。筆者自身の体験でもレゲエを一番聴いたのは学生時代の夏休み。そう、その時分は夏の時間の殆どを沖縄で過ごしていたから。当時も沖縄は本州が35℃を越えたときでも28℃前後で快適だった。

この作品はボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのメジャーレーベル初作品として余りにも有名である。レゲエ音楽の特徴と言えば、カッティング奏法のギター、3拍目にアクセントを置くドラミング、そしてうねるようなベースラインであるが、この作品はまさにその音楽形式の実践教科書みたいな作品だ。また、「レゲエ (reggae)」と言う呼称の語源は、「ぼろ、ぼろ布、口げんか、口論」の意味を表すジャマイカ英語のスラング「レゲレゲ ("rege-rege")」が転じたと言われている。だがこの音楽の発祥自体は1960年代の後半であり、使用楽器などを見ても明らかにR&Bのジャマイカ版であり、所謂、広義における「民俗芸能」という領域には入らない、ポップ音楽である。筆者は残念なことにこの作品をリアルタイムでは聴いていない。筆者が彼らと出会ったのは「ライヴ!」だからで、あの作品のインパクトに惹かれてボブに心酔したという、所謂、レゲエファン多くのお決まりのコースである。だがそれは良かったと思うのは、リアルタイムで聴いていたらそれはポップ音楽を聴き始めた初期の頃だから、この衝撃的なオトの虜になって、多分、ロックなんかは受付なくなってしまっただろうと思うし、現に筆者の同年代でそういう輩は存在する。ジャマイカに行ってしまった奴も。筆者がこの作品を聴いたのは結構後のことで、ウェイラーズの作品でいえば、"Exodus"や"Kaya"より後のことだが、聴いた際の衝撃は「ライヴ!」の感激に略等しい。逆に70年代後半の洗練されたオトが纏まりすぎて面白くないと思ってしまうくらい、この作品には聴取者を惹きつける特別なモノがある。これが米英の音楽ファンを直撃したのだから凄いことなんだろうと感心するし、後々にポリスなんかが出てきたことも、ボブの功績だろうと確信できる。また、この作品ではボブもさることながら、ピータートッシュが良い。残念ながらこの作品と、次の"Burnin'"(この作品にかの"I Shot the Sheriff"や"Get Up, Stand Up"が収録されている)でしか、メジャー時代には参加しいていないが、この時代、ボブとは相反する強烈な個性とその存在感はこの作品でも随所に聴きとれる。

余談だがこのアルバム、最初はジッポーライターを模したデザインで、ケースがジッポーの蓋と同じで凝った作りだったは、これは初版の2000枚だけで、後はボブが大麻を吸っている写真に変わった。実はその後CDでもその仕様版が出て、サイズ的にもジッポーに近くなったので、この限定版は本当に欲しかったが買い損ねてしまった。こんなところも、なにか、音楽一本で勝負しているのではなく、遊び心を持った工夫が斬新で、色々な意味でイカしたアーティストだったんだなって思う。


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