音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

錯乱のドライヴ (カーズ/1978年)

2013-07-31 | ロック (アメリカ)


カーズのデビューアルバムである。このバンドに関してはセカンドアルバム「キャンディー・オーに捧ぐ」のレビューを2009年12月に書いて以来このブログではなにも触れていなかった。理由として、カーズの作品の中では、セカンドが一番好だし、作品の出来栄えも一番いいと思う。で、その作品に関して最初に書いてしまったので、中々、書き辛いというのが本当のところである。だが、最近、またカーズの作品をすべて聴きなおしてみると、うん、やっぱりこのバンドはこの時代のアメリカのバンドにしてはしっかり主張を持っていて、音楽性もちょっと変わっていて、そう、同時代の英国の音楽シーンとは違っているものの、一括りにされた「アメリカン・ニューウェーヴ・ロック」の代表格であることは間違いないということである。

カーズは早々にアメリカのポップシーンで売れてしまったために、意外にそのバンドの詳細に関しては余り細かく語られることがない。というか1970年代の後半というのは、商業音楽が花盛りの上にヒットチャート、そしてミュージック・ビデオというのがそろそろ始めたという時代である。また、カーズの音楽はある意味、ユーロ・ビートやテクノ・ポップに通じるところがあるものの、基本はロックンロールである。テンポがちょっとゆっくりめのロックンロールにシンセを上手く被さって作られているのが、非常に簡単にいうところのカーズの音楽である。しかし、音楽性はアルバムを出すたびにユニークで、センスがあり、その辺りはデビット・ボウイや、ブライアン・フェリーに通じているものがある。それに何といっても、独特なリック・オケイセックのヴォーカルである。英国人ヴォーカリストは「声」に特徴のある人が多い。というか、筆者が好きになってしまう人にそういう「声質」が多いのかもしてないが、前出の二人を始め、ポール・ウエラー、スティング、ボノ、イアン・マッカロク、アンディ・パートリッジ、ゲイリー・ニューマンなど、上げれば限がないが、リック・オケイセックはボストン出身のアメリカ人でありながら、彼らに匹敵する声質を持っていることが、筆者が最も気に入っている理由であることは間違いない。また、ベースのベンジャミン・オールもリードヴォーカルを取ることが多いが、この二人はカーズに精通していないと、中々聴き分けが難しいかもしれない(特にアップテンポになると余計に・・・)。ちなみに、彼らのデビューのきっかけとなった”Just What I Needed”は、ベンジャミンがリードを歌っている。

どうしても、「キャンディー・オー」の印象が強いので、単調に聴こえてしまうが、一枚のアルバムの中で、色々な試みを行っているバンドである。バラッドもあったり、ブルース調を全面に出してみたり、しかし、やはり基調はロックンロールで、その部分を時代に乗ってニュー・ウェーヴ化している。いや、彼らはたまたまこの時代に存在していたが、多分、もう少し早くても(20年早かったら、このオトは出ていないと思うから)あるいはもっとずっと遅くても(現在でも通用するオトだと思うから)この音楽をやっているのだと思う。


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