音楽は語るなかれ

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炎~あなたがここにいてほしい (ピンクフロイド/1975年)

2012-01-10 | ロック (プログレッシヴ)


この作品に関しては以前にレビューを書いたのであるが、昨年秋にピンク・フロイド全作品のリマスター盤が発売になった際に主要作品は手にいれた(BOXは、がさばるので止めた)が、当然この1枚は入っていて、いい機会なのでちょっとレビューを書きなおそうと思った。やはりこの作品はどうしても前作「狂気」と比較されてしまうのは当然のことながら、発表前からの宿命である。なにしろ、前作はビートルズのデビュー以来の衝撃をポピュラー音楽界以外にまでも波及させた訳だから。で、私も実は前作「狂気」のレビューは一般論よりもかなり衝撃的なことを書いていた。それは、はっきりいってシドとの惜別である。フロイドはあの作品でシドとすっかり別れることができたと書いた。そしてその「自責の念」が残っている作品であるということも書いた。

ところが、どうしてもこの作品で引っかかるのが、このアルバムに収録された曲のリリックで、まず「狂ったダイアモンド」である。この作品はシド・バレットに捧げられた作品だと言われる一方で、ロジャー・ウォーターズは「決してシドのみに向けたメッセージではなく、すべての人間に当てはまることだ」と言っているが、それは正しいと思う。例えば冒頭、"Remember when you were young, you shone like the sun."(若かった頃を思い出すんだ おまえは太陽のように輝いていた)という部分は一般的なメッセージであって可笑しくないし、同時に自分たちに向けての内容でもある。特に気になるのは同じメロディの部分で"You reached for the secret too soon, you cried for the moon."(おまえはあまりに早く秘密に手を伸ばした おまえは月が欲しいと泣き叫んだ)という部分のMoonは、前作のMoonと一致しているのかどうかという興味である。アルバム「狂気」の最後で、"There is no dark side of the moon really. Matter of fact it's all dark(本当は月の暗い側なんて存在しない。何故なら、すべてが闇そのものだから)という部分はこの作品に向けての問題提起であるという意味があったとしたら、ここは可なり重要なファクターである。「輝け 狂ったダイアモンド」というのは、闇の中に光源が必要なのか、しかし他に光源がないとダイアは光らないのであって、その光源は一体なにを想定しているのだろうかという部分はとても興味深い。実は、このアルバムにはもう一曲、「あなたがここにいてほしい」という曲があり、これが妙にシドの存在をクローズアップさせようとしている、いや、リスナーがしてしまったのかもしれない。とくに"How I wish, how I wish you were here. We're just two lost souls"(どれほど、どれほど君がここにいてくれたらと思う。僕らはまるで2つの地獄に堕ちた魂だ)というリリックが大きい。ここの部分にシドの存在を併せてしまうと、どうしてもシドに終始してしまう作品になってしまうのである。しかしもう一曲「ようこそマシンへ」に、"and you know you're nobody's fool,"(そしてお前は、誰の道化ではないことを知っていた)という一節。これは、自分たちの「狂気」までに追求してきた音楽は、決してシドの幻影を追いかけていた訳ではないということであることを表している。実はこの次に「アニマルズ」という作品があるのだが、この作品では可なりの批評家になっている。というかその内容も攻撃的である。その観点からいくとこういう見方もある。実は「狂気」という作品はフロイドがデビュー以来の色が強かったのであるが、それはどんな色かというと「サイケデリック色」だったという言い方が出来る。その集大成だったのが「狂気」だった、いや、もしかしたら、記録的なセールスだったために、「狂気」を集大成にせざるを得なかったのである。そして、フロイドがすべての音楽人から着目される存在になったときになって初めて、彼らは「音」だけでなくその「存在」の大きさに関しての自覚、それはイコールシド・バレットという存在を初めて「同格」に感じられた地位になったということであろう。

ロジャーが頑なに「これはシドの事ではない」と言っているのはそういう自覚の表れであり、この作品でシドを彷彿させる比喩は、すべて、イコールフロイドそのものなのであろう。そして、その自負が「アニマルズ」を経由して、あの超大作に繋がるのである。


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1 コメント

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Unknown (ノエルかえる)
2013-11-26 17:58:56
こんにちわ、
古い記事にご免なさい。
最近、自分で「あなたがここにいてほしい」を訳してみたのですが、
「 Wish You were Here 」だけです、
私も十代からずっとシド・バレットのことと思っていたのですけれど、
実際に言葉を追っていると、違うような気がして来たのです。
この後の作品、『the Wall』『Final Cut』で明らかになって行く、戦争で死んだウォーターズの父親への思いなのでは、と感じたのです。

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