音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

夢はひとつだけ (リンダ・ロンシュタット/1977年)

2010-10-02 | ロック (アメリカ)


こんなことを言うと怒られてしまうかもしれないが、ロック音楽界は長いこと男性上位であった。クラシック音楽も20世紀になると女性演奏家が出て来たが、作曲家は殆どいない。また、ジャズに於いてもヴォーカリストは早くから出ていたが、楽器演奏家は全く出てこなかった。ロック音楽については、クラシックやジャズよりも多少は女性に対しても門戸が開かれていたが、実際に活躍しているミュージシャンはほんの一握りであった。

最近知ったのだが、70年代なアメリカで活躍していた三大美女ヴォーカリストというのは、オリビア・ニュートン・ジョンとステーヴィー・ニックスと、このリンダ・ロンシュタットと言うらしい。そんなこと殆ど考えたことがなかったから改めて言われても全くピント来ないのだが、特にこの3人には極めて主観的、且つ流動的要素である「美女」という事柄以外は共通点が見いだせない。出身地も音楽傾向も、デビュー時期も全く違う3人(敢えて言えば、オリビアとスティーヴィーが1948年生まれの同い年、リンダは2つ上の1946年生まれ)を三美女と一括りにするのは結果論でしかない。但し、このリンダ・ロンシュタットがロック界に開けた風穴はとても大きなものであった。彼女以前の女性ロック・ヴォーカリストというと、ジャニス・ショップリンや、グレイス・スリックくらいで、キャロル・キングやジョニ・ミッチェル、カーリー・サイモンもロックという括りではない。だが、前後して黒人音楽には多くのビッグスターが輩出しているから、これはロックという音楽が当時は女性に不向きだったと勝手に考えられたとしか思えない。日本でも人気のあったスージー・クアトロはアメリカのミュージシャンでイギリスではそこそこ売れたが母国ではこの時代に殆ど売れなかった。リンダ・ロンシュタットに関しても私的に最初に聴いたアルバムがこの作品なので取りあえずここから入ってみたが、そもそもこのアルバムを購入した理由は自身の音楽活動で女性ヴォーカルをフィーチャーしたバンドを作っていて、(女性ツインヴォーカルだった・・・)オリジナル曲はやはり彼女たちが書いた詩に曲をつけたかったので、どんな詩を歌っているのかというリサーチのために買った様なものだったのだが、このリンダのヴォーカルには圧倒されてしまったのも事実。女性は高い声が良いと思っていたのだが、彼女の高音は良く伸びる一方で低音になるとグッと太くて力強い。そして彼女の場合は曲によって随分歌い方を変えるのである。このアルバムでもその才能はフルに発揮していて、例えば同じバラッドでも「ブルー・バイユー」はジャズのスタンダードっぽく妖艶な女性を前面に、一方で「シンプルマン・シンプル・ドリーム」は夢見る少女の様に、また、アップテンポ曲でも「イッツ・ソー・イージー」は本当にイージーに歌っているが、ストーンズの名曲はグッと彼らを意識してしっかり歌っている。以前にリンダは、ミック・ジャガーと論戦したときにも一歩も譲らなかったという有名な逸話があり、ミックは「君にはロックが足りない」(それに対してリンダは「あなたにはバラッドが足りない」と返したことは有名)と言われたが、それに答えたかのように堂々と歌っている。

私のリンダ・ロンシュタット遍歴はここからデビュー盤に遡って聴いていき、辿りついた頃、次作の「ミス・アメリカ」が発売されたというタイミングだろうか。でも彼女を追いかけると、まさにアメリカン・ロックの歴史と遭遇できるのであるから、やはりこの時代のミス・アメリカだったことは間違いない。


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