すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

水底吹笛

2018-05-11 21:51:50 | 
 朝日新聞夕刊の「…をたどって」シリーズで、去年の4月に亡くなった詩人の大岡信を取り上げている(「大岡信をたどって」)。そろそろ終わりそうな気がするので、その前にぼくの大好きな詩を一つ挙げておきたい。
 大岡の初期の詩というと「春のために」が名高いが、あれも大変美しい詩だが、手放しの恋愛賛歌なので、今のぼくの気持ちからはやや遠い。「水底吹笛」の、あの柔らかで透明なナルシズムと感傷は、青春特有のものではあろうが、今でもぼくの心をゆする。

「水底吹笛」
   三月幻想詩
ひょうひょうとふえをふこうよ
くちびるをあおくぬらしてふえをふこうよ
みなそこにすわればすなはほろほろくずれ
ゆきなずむみずにゆれるはきんぎょぐさ
からみあうみどりをわけてつとはしる
ひめますのかげ――
ひょうひょうとあれらにふえをきかそうよ
みあげれば
みずのおもてにゆれゆれる
やよいのそらの かなしさ あおさ
しんしんとみみにはみずもしみいって
むかしみたすいしょうきゅうのつめたいゆめが 
きょうもぼくらをなかすのだが
うっすらともれてくるひにいのろうよ
がらすざいくのゆめでもいい あたえてくれと
うしなったむすうののぞみのはかなさが 
とげられたわずかなのぞみのむなしさが
あすののぞみもむなしかろうと
ふえにひそんでうたっているが
ひめますのまあるいひとみをみつめながら
ひとときのみどりのゆめをすなにうつし
ひょうひょうとふえをふこうよ
くちびるをさあおにぬらしふえをふこうよ

 …いかがだろうか。
 シャンソン関係の方は茨木のり子の「わたしが一番きれいだったとき」以外はあまりご存じないかもしれないが、日本の現代詩にも美しい作品がいっぱいある。
 関心を持たれたら、その茨木のり子の「詩の心を読む」(岩波ジュニア新書)を手始めに手に取ってほしい。
 (これには、大岡信の作品としては、17/07/09 「おお ヴェネーツィア」で一部引用した「地名論」が取り上げられている。)
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