すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

「雪の夜、森のそばに足を止めて」

2021-02-18 22:18:59 | 

 最近、20世紀前半のアメリカの詩人ロバート・フロスト(1874-1963)が気に入っている。名前だけは前から知っていたが、日本ではなかなか手に入りやすい本がなかった。ところが先日、新宿紀伊国屋で岩波文庫の棚を見ていたら3年前に対訳が出ているのに気が付いた。この頃ぼくも本をアマゾンで買うことが多いが、やはり本屋さんは覗いたほうが良いな、と改めて思った。
 フロストは美智子上皇后が若いことから愛されているのだそうだし、ケネディ大統領やオバマ大統領も感銘を受けているのだそうだが、ぼくは今回初めて読んだ。気に入っている、と言ってもまだこの文庫本を一冊読んだだけなので、フロストについて何か書けるわけではない。   
 ここではその文庫から一編だけ書き写させてもらうことにしよう(川本皓嗣訳)。

この森の持ち主が誰なのか、おおかた見当はついている。
もっとも彼の家は村のなかだから、
わたしがこんなところに足を止めて、彼の森が
雪で一杯になるのを眺めているとは気がつくまい

小柄なわたしの馬は、近くに農家ひとつないのに、
森と凍った湖のあいだにこうして立ち止まるのを、
変だと思っているに違いない―
一年じゅうでいちばん暗いこの晩に。

何かの間違いではないか、そう訊ねようとして、
馬は、馬具につけた鈴をひと振りする。
ほかに聞こえるものといえば、ゆるい風と
綿毛のような雪が、吹き抜けていく音ばかり。

森はまことに美しく、暗く深い。
だがわたしにはまだ、果たすべき約束があり、
眠る前に、何マイルもの道のりがある。
眠る前に、何マイルもの道のりがある。

 雪で静まり返った暗い美しい森は、生きて負うさまざまな苦しみを終わらせる死という安らぎだろう。詩人はそこにいったんは心を惹かれるが、思いなおす。自分にはまだ家族や社会に対して果たすべき役割がある。本当に死が訪れるまでに、辿るべき長い道がある。

 Stopping by Woods on a Snowy Evening

Whose woods these are I think I know.
His house is in the village though;
He will not see me stopping here
To watch his woods fill up with snow.

My little horse must think it queer
To stop without a farmhouse near
Between the woods and frozen lake 
The darkest evening of the year.

He gives his harness bells a shake
To ask if there is some mistake.
The only other sound’s the sweep
Of easy wind and downy flake.

The woods are lovely, dark and deep,
But I have promises to keep,
And miles to go before I sleep,
And miles to go before I sleep.

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