すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

故郷喪失

2018-03-18 22:23:57 | 自然・季節
 夕飯に、フキノトウとタラの芽とウドの天ぷらを食べた。と言っても、天ぷらは揚げ加減が難しいので、自分ではやらず、妹が食事当番の時にリクエストする。ほろ苦くて、香り高くて、やっぱり春はこういうものが美味しいし、食べると元気をもらった心地がする。
 昔、子供を対象にした自然観察会や自然教室などの活動をしていた時、春休みの合宿を房総半島の山中の台倉というところでしたことがある。その時のテーマは「食べられる野草」ということで、一日に14種類を採取して食べたことがある。
 14種類もあると、食べる前の下ごしらえや調理で本当に大変だ。水が冷たくて指が真っ赤になるし、アクがついてなかなか取れない。それでも、普段そんなものを食べたことのない子供たちも、もちろん僕たちも、大興奮の大満足だった。
 それを思い出して書いてみると、セリ、ツクシ、ノビル、ヤブレガサ、アザミ、カンゾウ、フキノトウ、タンポポ、ナズナ、タラの芽、アケビ、ワラビ、コオニタビラコ(春の七草のホトケノザ)、ハコベ、になる。
スーパーなどで売っていないもののうちいくつかについてちょっとだけ書いてみる。
 アザミは成長するとトゲがあってとても食べられないと思うが、新芽の葉が開く途中のごく若くて柔らかいうちに、真ん中の部分だけ摘んで(軍手は必要)天ぷらにすると非常においしい。トゲも気にならない。
 ヤブレガサも、傘が開いてしまうとおいしくないが、まだ閉じているうちに天ぷらにするとおいしい。茹でてアクを取っておひたしにするのも香りがあっておいしい。
 カンゾウは酢味噌あえにすると絶品だ。
 アケビはツル先の折れるところを探って摘んで、茹でて良く水にさらしておひたしにすると、ほろ苦くておいしいし、酒の肴に良い。東北地方ではアケビのツル先を「キノメ」と読んで珍重するそうだ。
 ハコベは味噌汁の具にする。昔、「銭形金太郎」というTV番組で、誰かがハコベと鶏ガラでスープを作っていたっけ。
 ノビルは、ぼくの田舎では地上に出た緑色の部分だけ摘んでしょっぱい佃煮にしていた。これだけでご飯が進んだ。根っこも食べられることは仲間に教えてもらった。根っこに味噌をつけて食べると辛くておいしい。子供には敬遠されることも多いが。
 根っこを食べないのは先人の知恵なのだと思う。葉だけ摘めば来年もまた生えてくるのだから。

 震災の直前に今のところに越してくる前は、保土谷の林の中に住んでいて、春には庭にフランス料理の高級食材にするトガリアミガサダケが群生したし、秋には銀杏がバケツに何杯も、ご近所に配って歩くくらい採れた。ハコベも採れた。
 その前は戸塚の丘の上の団地に住んでいたが、丘を下って境川の河川敷に行けば、タンポポやハコベやナズナやホトケノザはもちろん、カンゾウもフキノトウもツクシもノビルも採れた。
 今住んでいるところは、そういう楽しみがない。
 なんだか、故郷喪失のような気分だ。
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