toshiの「読書日記」

忘備録を兼ねて読んだ本の感想などを書いています。個人的な感想なので不快に思われたりすることも有るかもしれませんがご容赦。

「彗星パンスペルミア」 チャンドラ・ウィックマシンゲ

2018年04月07日 | 読書日記
彗星パンスペルミア説の解説と啓蒙の書。
この本に寄れば、生命の誕生だけでなく進化も宇宙からの影響であるという。
言われてみれば宇宙に生命の種のようなものが沢山あって、それによって地球上で生命が誕生したのなら(パンスペルミア説)、誕生だけでなくその後も影響を受け続けるということは当たり前のこと。
その点は深く納得。

パンスペルミア説は元々知っていたけれど、彗星パンスペルミア説をはじめて唱えた著者によるこの本でその根拠となる考えや証拠を知ることができた。
ただ、個人的にはこれを読んだからと言って直ちにパンスペルミア説の信者になるほどは納得できる内容ではなかった。
なるほどと思う部分はもちろん多いけれど、ちょっと強引すぎる理論展開もかなりある。
状況証拠から推定してもおかしくない内容を確実な事柄のように扱い過ぎている。
また事実と著者の考えを区別なくすべて事実のように記述するのもどうかと思う。
パンスペルミア説を否定するような事柄に対しては徹底的に反論し、自説に対してはわずかな証拠をもって肯定するというのは科学者としてはどうかと思う。
それにしても様々な事象を自説のためにこれだけ都合よく解釈できるものだと感心。

翻訳のせいもあると思うけれど、とにかく文章が分かりにくく、何度も読み直してようやく理解できたという個所が多くて読みにくい。
もう少しこなれた日本語で書いて欲しかった。
それに「、(てん)」と「。(まる)」の区別がつかないことも読みにくくしてる。何でこんな分かりにくい書体にしたのか・・?
そのうえその「。(まる)」と区別できない「、(てん)」を多用しすぎているから余計読みにく。
余計なお世話かも知れないけれど、この本はパンスペルミア説を啓蒙するために多くの人に読んでもらうことが著者の望むところだろうだから、読み易さが重要なのでは?
最後に監修者と訳者の紹介が有るけれど、肝心の著者の紹介が無いので、著者が何者かイマイチわからない。

パスツールの「生命は生命からしか生まれない」を重要な根拠の一つとしてあげているけれど、著者のパンスペルミア説であっても宇宙のどこかで生命が誕生したわけだから、時間のスケールが違うとは言えそれが地球で生命が誕生しなかったことの絶対的な証拠にはならないんじゃないのかなぁ・・・。

それにしてもどこかで一度だけ誕生した生物で宇宙が満ちていて、彗星の中には酒が有るとは・・・・。
ただこの話はDNAに寄らない複製機能を持つ生物が地球外生命である証拠という話とは矛盾しますね。
著者には申し訳ないけれど、この本は虚実取り交ぜたSFとしてとらえるとすんなり読める。
ちなみに私自身は現在のところ、この説を肯定も否定もしていません。
著者がもっと真摯に事実とそこから導き出されたオリジナルの仮説をきちんと分けて説明していればパンスペルミア説の信者になってたかもしれないけど。。




恒星社厚生閣
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする