富山県のクスリ産業政策の指導者たちが、新薬開発に目を向け、世界的に弱い生物原料からの製薬の道を選択した。これは、生物学的な発想と化学との交差領域を扱う。これまでの新薬からみると、裏街道を歩くことになる。しかし、新薬の商品化には、最後の壁が待ち構えている。臨床試験という実証を乗り越えるには、巨額な金融リスクのともなう投資資金の市場が前提となる。他方、ジェネリック医薬品の限界が叫ばれている。こちらの方は、アカデミックにみたら「知識開発」の余地が無いように思われている。しかし、製薬工程の技術の管理において、トヨタ生産方式をいかに製薬に適合させるのか、そうした生産・加工の技術は未だ成熟していない。トヨタ生産方式は、多品種の生産を「後工程から前工程を逆算的に設計する」ものである。また、製薬業には、まだまだ工業経営に欠かせない原価管理の技術も十分に導入されていない。未踏の領域が残されている。製薬を自動車産業に水準にまで生産技術を高度化するには、どのようにすればよいのか。原料体、中間体の生産と、最終製品の容器への充てんなど、官庁系、学界系の知識人には、まったく見ないで済まされている世界がある。国費のプロジェクトでは、失敗が許される。国家の金で宝くじを買うのは正解である。問題は、個々の特色ある製薬業の個々の生産ラインを動かす人材と、生産技術の改良に意識を注力してもらいたかった。それを無視して、バイオ製薬の夢にだけに眼をむけるのは、補助金が切れたら終わりの「麻薬式経営」である。