富山マネジメント・アカデミー

富山新聞文化センターで開講、教科書、参考書、講師陣の紹介、講座内容の紹介をいたします。

富山経済と<円高ドル安トレンドとマイナス経済>の相関(校正済)

2016年04月30日 | Weblog

TMA講師代表:個人研究として、いつも北陸経済圏の「一年先の経済トレンド予測」を心がけている。ここでは、問題を富山県内企業に焦点をあてる。

IMFが予測しているように、日本経済全体では成長率はマイナス・トレンドに転じるが、富山経済ではどうなるのか、という問題群である。

最も大きな影響があるのは、世界の自動車産業の成長に関係する中国における個人消費市場動向と、アメリカにおける日本車の販売動向である。これは、前年比で大幅なプラス成長は期待できない。良くても、横ばいか、微減である。中国市場を壊滅と考え、恐慌を想定する必要はないが、自動車産業系が成長の牽引力と考えるには無理がある。富山の製造業、例えば、不二越の車載ベアリングは、円高では価格競争力が低下し、仕向け地で求められる製品の需要予測を誤ると、日本企業の全体トレンドよりも落ち込むことになる。海外市場のマーケッティングでは、富山の企業には特殊に優れているというセンサー型の人材が少ない。わずかな先行データーから、回帰方程式のY=aX+Bのaの値の部妙な変化から最終需要予測を割り出す単純な作業であるが、理工系の人材が喜んで市場動向の統計予測を好む社風がないと、マイナストレンドの経済趨勢に対応できない。作り過ぎない、ロスを生まない制御が必要となる。企業名は挙げないが、自動車の部品を専業とする中小企業は、こうした市場管理と予測のメネジメント技術をもっていない。したがって、自動車関係は底割れが予測される。しかし、そのトレンドはすでに2015年から始まっており、「円高」という為替差益・差損の問題ではない。企業の頭脳の問題である。このように自動車の部品、仮に航空機の部品にしても、牽引力にはなれない。マイナス方向に作用することが想定される。

富山の産業のなかで、住宅建材産業の占める割合は高い。内需のうちの個人消費は、消費税の動態に左右されるが、地方の中間的な公共財への公共投資がマイナス金利により促進される。マイナス金利政策は、建築・建材の追い風となるので、全国的には大きな内需の柱となってくる。YKKap㈱と三協立山㈱ともに有利な風向きとなった。特に原料のアルミや、石油製品である化成品の原価が、原油安、円高差益により圧縮される。昨年の1ドル120円のスパンよりも、1ドル105円前後というスパンでの円高傾向は、消費税の増税が見送られるならば、日本の内需経済の循環の牽引力となる。富山県の産業は、ガラスを含め建材に強いので、富山経済は次年度にむけマイナス成長に転じるとは考えられない。最後に、2017年度にむけて富山のジェネリック医薬品の生産高は、首位の埼玉県と並ぶか、追い抜く可能性がある。大手の製薬業からのOEM生産の伸びは、景気循環に鈍感な薬業が成長することで、富山経済の構造安定に大きく寄与すると思われる。

最後に富山経済の最大の弱点を指摘すると、地場のロジスティクス企業が脆弱であることが目立つ。岐阜の西濃運輸に引けをとらない運輸業が伸びきれていない。岐阜には空港も、海運もない。富山には、その両方がある。それなのに、総合的なロジスティクス産業への脱皮が岐阜よりも遅れている。富山の地方創成の事業として、TMAが期待しているのは、人とモノを運ぶシステムの統合行政の指導力である。地方自治体が運営する海港と空港を活かすのは、自治体それ自身の財政力を高めることになる。これは、自治体の頭脳の問題である。

 さしあたり、航空貨物に関しては、石川、新潟、長野、岐阜という広域の集配機構が可能である。この点は、ANAからの提案は最重要である。航空貨物は、電子部品と生鮮食品の輸送に最適である。日本では、ANAは沖縄の航空貨物の基地をおいている。富山空港は、石川、新潟、長野、岐阜という広域の集配機構となりうる。これは、医薬品の原材料の輸送にも適している。医薬品は、最大のロット数が小さな貨物であるという特性がある。こうしたロジスティクス関係は、原油安、円高による燃料費の低減により、収益環境が良くなるので、上向きのトレンドのなかで構造改革する余地が生まれる。構想改革は、先行投資であるからマイナス金利の環境は競争優位につながる。

富山経済の強みは住宅建材とジェネリック医薬品、停滞から減速は自動車部品関係の機械系、構造的弱点はロジスティクス産業部門の行政統合力。

 

 

 


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東京本社⇒北陸支社への転換の意味するもの(再構成)

2016年04月29日 | Weblog

TMA講師代表:富山新聞の報道によると、これまで北陸は交通の関係で、大阪支社の営業圏に属してきた。小生も、中国書の関係で東方書店と取引があるが、東京本社に買いたい本を申し込んでも、実際は、大阪支社から送本されてくる。これが、北陸新幹線効果により、北陸は東京本社に直属する営業圏に代わる。

この変化は、多くの分野に広がるだろう。ただし、それは東京から日帰り圏の出張を意味するから、富山のあらたなビジネス・ホテルの需要が生まれるわけではない。学生の就活も、関東圏と同じく、東京本社に出かける方式が定着してきた。

それに対応し、比較的に難関とされる人気企業へのチャレンジは、物理的には楽になるが、実際の壁は低くならない。こうした悩みも考えながら、富山マネジメント・アカデミーは、それなりの対応を考えているところだ。

将来、北陸新幹線が京都、大阪と結ばれても、企業や行政機関が、関西の統括から東京の統括に変化すれば、時代は後戻りはしない。北陸でも東京への一極集中が最終的に完結することになる。

大学教員も、これまでは北陸では、関西系がかなり幅を利かせていたが、首都圏の外郭へと姿を変えるので、首都圏に研究拠点のある人材が北陸の高等教育を支える方向軸へと転じていく。これは、大きな趨勢の変化である。

富山の場合、主要な製造業や第3次産業では、すでに東京本社⇒富山工場というスタイルが確立している。本拠を富山に置きながら、営業の中心として、東京本社制がとられており、その本社機能の一部を北陸に移す動きもあるが、まるままの地方移転ではない。こうした流れのなかで、首都圏では何が重視されているのか、そのトレンドを細かく、時間差なしに見極めることが死活問題となってくる。

富山から東京へ、日帰りで仕事をして帰ってくる時代となり、タイムラグがコンテンツの質的な格差として、数日でも遅れていることが許される余地がなくなる。

その場合、現場発の仕事の質において、北陸、富山の現場に一日の長という逆アドバンテージがないと、本社の奴隷となってしまう。では、東京の弱点となると、実は、アジアに弱いという傾向性がある。関西がアジアの玄関という時代が長く続いたからである。

しかし、最近のアジアと日本とは、東京が凝集の核となり、それを地方分散、地方での分業へと再分配される関係が強くなる。だから、地元の大学が、ある意味、首都圏にも、他の地方にもない「小さな聖地」とならないと、北陸は完全に滅んでしまうことになる。

森健二さんのように、東京発のメディアのコンテンツを八尾で製作するという「小さな工房」が自然豊かな環境の産物として生み出す「職人型」にどこまで成長できるか、という課題でもある。

 

 


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森健二さんが、ソニーの盛田昭夫さんの評伝を公刊されました。(追記)

2016年04月24日 | Weblog

富山マネジメント・アカデミーの主要なメンバーである森健二さんが、『ソニー森田昭夫:時代の才能を本気にさせたリーダー』という本をダイヤモンド社(定価2200円)を公刊された。全国の書店の店頭に並んでいる。

富山大学経営学科の皆さんは、4月20日の特殊講義で、森健二さんの講演を聞く機会があった。

1945年を一つの節目とすると、日本の現代産業社会はアメリカという巨大市場を得て、復興期から高度成長時代をかけのぼり、世界第2位の経済大国へと大飛躍する。数ある名門企業を追い越し、ニューヨーク証券取引市場に、日本企業の上場を果たした最初の企業がSONYである。SONYが達成した偉業は、顧客にとり新しい価値としての生活文化様式の創造であった。今日、その主役はアメリカのベンチャー企業から発展したアップル社と交代したが、それでもSONYというブランド価値は瓦解したわけでない。

さて、著者である森健二さんは、週刊ダイヤモンドの副編集長を務め、現在、富山市の八尾という山間部に居を構える「逸民」である。おつきあいの関係で、発売前の著書を頂戴した。3日を要して読了したが、この本は「盛田昭夫フアンクラブ本」の域をはるかに超え、学術的な批判に耐えられる日本の経営者論としても、あるいは、経営史学の著作としても刮目するべき大著である。全体が565頁(注記、年表を含む)、読み応えがある大作である。

重要なことは、盛田昭夫さんの伝記ではあるが、SONYの創業から全盛期、そして陰りが見える時期までの経営の本質を理解したうえで、経営評論としてのハードな経営者論が根幹に貫かれていることである。特に補章である「その後のソニー」の章を書きたいために、序章、第1章から第16章「最後のメッセージ」までがあると思われるほどである。その詳しい紹介は、別の機会に譲るが、この本は、森健二さんが盛田昭夫を顕彰することで、現在の日本企業の経営者の人格・教養・思想・行動様式など求められる至高を提示している。なお、盛田昭夫さんの経営判断として、アメリカのハリウッドの映画企業の買収にあたり、コロンビアを選択した判断には、森健二さんは否定的な判断を下しており、そこが客観的な学術的批判に耐える著作として推薦できる大きなポイントである。

 

 


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第4次産業革命と富山の製造業

2016年04月20日 | Weblog

TMA講師代表:今後、日本国の成長戦略として、第4次産業革命、すなわちロボットとITが挙げられている。こうした第4次産業革命に向け、富山の製造業がどこまで対応できるのか?それは、ほぼ富山県機電工業会と、お隣の石川県の全製造業を網羅した工業会との差異で説明できる。

富山県機電工業会には、「貴族主義」があり、情報系企業の加盟を排除してきたことが挙げられる。この点、石川県庁の政策・制度のサポートは、産業連関の思想を徹底し、建築・土木・鉄工などから最先端の情報機器産業まで、産業連関の諸表をベースとする「総合工業会」の理想形に近いものになっている。

富山県では、プラスティクスの産業も、機械・電機ではないので、機電工業会から排除されている。それとともに、YKKに対する妬みがあり、経済同友会、商工会議所、そして、機電工業会から、富山で最大の世界規模のYKKを排斥してきた。

僕が、富山大学経済学部の経営学科への、TMAの寄付講座の開講には、YKKさんに是非と思ったのは、こうしたYKKへの妬みの震源に過去の富山大学経済学部が関係していたからだ。

僕が何故、「富山新聞」を基地に、マネジメント科学の普及を推進するのか、それは北国新聞とのダブル・タイトルの新聞、つまり石川・富山の2県体制であるからだ。大学も金沢が頂点にある。今後、この2県体制の東部地区を担うのが、富山県である。

残念ながら、第4次産業革命の推進力は、富山側にはない。金沢が基軸となる。これは、YKKに対する過去の妬みの負債が大きく、さらに、産業技術の先端性にむけた富山大学の知的リーダーシップが欠けてきたことに由来する。県立大学も、富大の第2工学部の地位に甘んじてきた。

富山の企業でもロボットが作られているが、メインの道筋から外れている。例えば、癒しロボットのパロでしられる日本抵抗器。不二越は、油圧系のロボット。ITが、WEBの技術と連動し、モノづくりの過程のの「見える化」、さらには、「マネジメント展開の同時的な見える化」に成功するには、石川県の製造業の産業連関が大いにものをいう時代となった。富山県でも、YKK副社長の大谷氏を機電工業会の会長就任にともない、多くの新しいチャレンジが生じているが、石川県のような総合的な工業会へ脱皮するには、大変な壁が待ち受けている。


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中九州大地震の「想定外」の大被害の影響

2016年04月17日 | Weblog

九州を北九州、中九州、南九州にわけると、今回の九州の大地震の群発は、中九州大地震と呼ばれるべき規模である。天災は、人間(じんかん)の不徳がなせる天命である、と反省するのが、儒学における大災害観である。

阪神大震災の時は、村山内閣、東北大震災の時は、菅直人内閣、そして、今回の中九州大震災は、安倍内閣である。その失政は、どうやら、解釈改憲のぎりぎりの安保法制に、2015年の政治日程を費やし、地方創成と防災体制という方向に世論を導けなかった、という天命が下ったというべきであろう。安保法制の整備は、周辺国の動きから必要なことであるが、あれだけのエネルギーを投入し、60年安保の左翼を蘇生させた副次効果は、大失政である。しかも、安倍政権の経済政策の破たんは、この中九州大地震の被害の深刻さが判明するに従い、東京証券市場のおける外国資本のリスク・ヘッジのための見切り売りがさらに伴えば、日経平均は2016年2月の最安値を更新するかも知れない。事態は瀬戸際に来ている。

大失政⇒局地的な大地震、このように為政者への天の警句とうけとめることで、政治が革新され、進化が促される。日本近代史では、関東大震災、これが「大転換」のシグナルであった。この大地震の復興により生じた財政経済の不調が、大日本帝国の崩壊へ悪の連鎖を生み、1945年8月、アメリカ軍による日本占領へと至る。大震災は、地殻変動だけでなく社会変動を呼び込む。

国際通貨基金は、来年、2017年、日本経済はマイナス成長へと向かっている唯一の先進国であると警告した。それから、1週間ほどで、中九州大地震という未曽有の地震が発生た。最初は、熊本地震と命名、その後、気象庁は想定外の3震源をもつ特殊な地震にたいし、なすすべもなく、被害の拡大を見守っている。地震学が難しいが、日本の科学者の最先端科学者の集まりではない。経済予測も外れる、地震の予測は不可能だとしても、せめて熊本地震の段階で中九州への連鎖型への予測は、誰もできなかったのであろうか?

これで、国際通貨基金の警告は、極めて現実味を帯びてきた。幸いなことに、極端な円高を経験してきた日本企業は、生産の拠点を海外に求めてきた。阪神、東北の大地震を経験し、日本の生産拠点は海外に移されている分野が多く、これで日本経済が瓦解することはない。北九州は、鉄鋼など素材系の産業が集積している。南九州では、東南アジアでも可能な人手による加工を主体とする産業が集積している。しかし、熊本と大分には、学力水準が高く、中九州の九州人の知識集約型の産業が集積している。農業の国際市場化にむけ、日本の先進地である。中九州大地震は、九州では一番に大地震の影響が、日本経済の深部に波及する産業連関とつながっている。

一日も早い回復を期待する、というコメントでは済まない厳しい状況にある。まして、21世紀に農業、農学を志した貴重な若者の命を奪った「軽量鉄骨の粗末なアパート」群。政治が、そして、大学資本が、どうして安全な「下宿」を提供できなかったのか?阪神大震災でも、阪神地区の大学は、多くの学生の命を奪った。心のこもった追悼式をするだけではなく、学生の住環境を根本、見直すべきである。大学は、学生寮の管理に手を焼いたが、これからは、共同研究型の宿舎と教室との一体的な教育環境が期待される。実は、中国の大学がこれに近い。

日本では、学生の住の問題と、教育の課題とが、別々のレールで組み立てられていた。文部科学省の役人が、阪神大震災から学んでいたら・・・、東海大学の農学部の若者の無念の死は避けられた。大きな「国富」をも同時に失ったのである。

 

 


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就活の学生さん、50年後の富山の経済の姿を想定してほしい。

2016年04月09日 | Weblog

TMA講師代表:就職は、大学の入学より、案外に関門は広い。なぜなら、企業は若手の人材の確保に失敗したら、企業が人材不足で倒産するからだ。それで、ロボット、オートメ化など、設備投資で省力化に力を注いできた企業が、最後に省力化できない業務を割り出したら、理工系では設計、試験などの「脳力」の分野だと分かってきた。だから、理工系では男女関係なく、就活の学生さんに対し、企業の求人数は上回っている。その場合、大きな企業では、人材のあたり外れがあるので、歩留まりをみて、やや多めに採用する。理工系では、長期に安定した業績を上げている企業は、それでも選別眼は厳しい。文系では、機械に置き換えられない職種は、営業職という対面のコミュニケーションを本業とする世界である。ここでは、外国語の能力が「脳力」となる。だから、英語の検定が必要なのだが、おバカな文部省では、英検を基本としている。企業では、TOEICである。だから、大学では、企業対応の英語教育に転換している。東京工業大学の入学式では、学長が英語で式辞を述べた。京都大学では、英語が講義の80%という時代が目の前にきている。同様なことは、漢語の世界でもおきている。また、慶応大学では漢語圏よりも、イスラム圏の言語文化に人気がある。

いずれにしても、理工系でも英語は必須、文系では英語+広域ローカル言語(漢語、アラビア語など)。こうした傾向を強く求めてこない企業は、就活生である貴方たちの50年後の企業の姿を描き切れていないからだ。内需といっても、すでに多くの外国人が日本に居住権をもち、企業の一員として働いている。社員の国籍が日本国という企業は、すでにグローバル化に遅れている。こうした条件で優良企業を見渡すと、富山では、ファスニング事業のYKKさんしか残らない。ところが、海外勤務が待ち構えているから、親の介護には間に合わないということで、避ける考えかたが強い。祖父母や親の世代こそ、減少する人口であり、日本経済が抱える資産であり、負債である。50年後の日本人は8000万人、それでもドイツよりも多い。日本は、ドイツを比較の座標軸にとり、ドイツの生産性を競争相手と考えると、およその目星がつく。さて、これからの50年後の国際市場社会で求められるのは、古来からの需要である衣・食・住と、情報、旅行の5分野の関連の専業企業である。この衣の分野では、YKKさんは揺るぎない技術市場の優位を確保している。今後、地域企業でありながら世界市場で重きをなしているのは、七尾市のスギヨさんなど、水産物加工食品の世界では日本企業は強い。日本人の人口は、新たに生まれる生産人口は減少するが、海外で働く日本人の数は多く、貿易収支よりも、貿易外の収入がより多くなってきている。先端企業は確実に50年後、それを視界に取り込んでいる。遅れているのは、富山の教育界である。特に大学教育である。不二越さんでも、市場変動や為替相場に左右されない基本技術の分野では、製造業の基本の流れにはのっているが、ロボットが油圧式という力持ちだが精密作業ができないという弱みがある。YKKさんは、今、環境系の技術力をつけているが、それは建材系のYKKAPさんの流れに引き込まれているからである。得意分野が制約条件となる日がくる。このように考えたとき、富山の大学教育界が全力を挙げて地域貢献を考えるならば、「薬都とやま」構想が50年後の富山人を飢えさせないばかりか、産業集積として、YKKを超える唯一の可能性がある産業部門の中核である。その意味で、製薬関連の産業のすそ野の企業を盛り上げることに努力を傾けたい。


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中国経済は、4月期より、回復軌道に入りつつあるとみてよい。(校正済)

2016年04月02日 | Weblog

TMA講師代表:中村の専門は、中国の経済史にある。歴史屋さんが嫌いで、現状分析に力を入れている。現在の中国経済の減速は、実は2014年の9月に「人民日報」で公表されていた。人民銀行が集計する「通貨供給量」の統計において、昨年ではなく、もう1年前の2014年8月に経済規模の拡大とは異なる減速の兆しがでている、と報道した。この事実は、中村が参与をしている富山県日中友好協会の中国近代史講座の2014年10月例会で報告した。おそらく、日本で一番早い情報である。中国経済は、減速の過程にはいったが、その原因の一つが、習近平政権による不正・腐敗の撲滅運動である、と論じておいた。すこし、過去を振り返っておく。

そもそも、中国経済は「宴会商談」抜きには成立しない。それと、公然化している「賄賂」である。10%の悪と平行しながら、20%の善である経済成長が達成される。その成長の原資は民間にはなく、莫大な国家資産にしかない。官僚がすべてを握る財政権と土地用途管理権により、国家公共財が消費の引き金を引く。それにブレーキをかけたのが、習近平政権である。暴走していたのは、江沢民政権により党中央の役職に進出していた「私党」である。ところが、習近平政権のブレーキが利きすぎて、経済政策の再検討を迫られる状況で、胡錦濤政権の後継者である李克強に責任転嫁するのか、それとも習近平政権の責任とするのか、微妙な駆け引きが2015年から始まっていた。

困難を公開し、国際経済社会の基本ルールを受け入れる「改革」という点では、習近平政権の路線と李克強の路線とは、一本の路線ではあるが、アクセルとブレーキ、ハンドル操作では、微妙な違いがある。ここへきて、習近平政権を相対化する党内世論と、それを絶対的な党総書記の権力で鎮圧する立場とが際立ち始めた。実は、胡錦濤政権・李克強の経済政策、特に農業・農村・農民の貧困解決には、日本の官僚にアイデアを求めてきた失政があり、それが習近平を政権に中心に押し上げた原動力であることは、すでに「高岡法科大学紀要」で論じている。今回の全人代の李克強の政府報告には、何千箇所にわたる修正意見、党内外のアイデアが組み込まれている。そのように、「人民日報」は事後解説している。李克強が何度も読み間違えたのは、直前まで、修正が続いたからだと想像できる。実は、党内の民主化は、胡錦濤が歴史的に見て最大の功績を収めている。李克強が統括する国務院は、祖師が周恩来であり、党内民主とIT革命のお陰で、行政管理の能力は向上し、現在は地方分権化を推進している。李克強は農村政策には市場主義のミスを犯したが、習近平政権は、極貧の農民層への直接に金銭支援により、毛沢東の「自力更生」主義の伝統を破り、ばら撒き福祉により党中央の権威を回復したようにみえるが、それは中共の内陸、奥地の支持を固めただけで、中国経済の社会的セーフネットを補強したにすぎない。李克強の報告に対し、習近平が拍手せず、憮然としたのは、李克強が党内民主を活かしたためである。読み間違えた理由につき、「人民日報」が李克強をフォローする記事をすぐさま入れたことは、習近平政権へ距離をおく党内勢力が多数存在することを意味している。 

さて、ここで、中国経済が回復軌道にあるという証拠は、まず、今年になっても中国からの観光客の来日は衰えておらず、さらに、東芝の家電部門を中国の企業が、破格の価格買収した経営の判断にある。これからの中国経済は、中国企業もアセアンでモノづくりし、中国国内の個人消費市場の需要を満たすことで成長するパターンとなる。こうしたアセアンーチャイナの経済循環の先頭にあるのが、伊藤忠商事である。三菱商事、三井物産、住友商事は、中国経済に内在する成長要因を日常的に、身体的に体感できていない。敵対的に見ているので、中国経済が緩やかに回復軌道にあるのに、反対に、大減速している筈だと決めつけている。さらに、2016.4/1に発表されたPMIの3月データから、7か月連続の下降から脱し、3月より製造業の大企業では反転、さらに、非製造業では上昇の転じているという。データ解釈は控えめで、季節要因などから単純な上昇への転換とは結論づけていない。だから、回復軌道のスタート地点に入りつつあるという慎重な判断も求められる。北京の国家統計局は、慎重な姿勢である。

現在、日本経済の減速が急速に目立ち始めたのは、旧財閥系の経営体質が転換期にきているからである。構造的な要因である。また、アジアの生産と消費の基軸が、アセアンとチャイナに移り、中国を包囲する反中国の軍事対抗戦略が、アセアンを基軸とする経済成長への参画に阻害要因となってきたからである。

そうみると、シーンはチェンジしてきた。シャープを買収した台湾の鴻海は、台湾の資本でありまがら、実は中国経済の発展の心臓部である。日本では、みずほ銀行がここをきちんと読み切れている。日本と中国とを対比的に考えた時代は終わった。中国という世界市場の大きな広場で、台湾人、広東人などの「郷党」と盟約を汲める「伊藤忠」のような日本企業には発展の可能性がある。それと、政府・日本外務省をパイプに中国との関係をたもつ「日の丸護送船団」の官僚経営集団との闘いである。銀行では、三菱系、三井住友系に対する、「みずほ」系の新アジア主義との闘争である。シャープの買収劇は、後者の道筋が現実的であることを意味している。中国人民銀行とIMFとは蜜月の関係にある。9月に向け、中国経済は緩やかに回復している。上海の株式の総合指数3000ポイントの回復は、その最初のシグナルである。中国は産業ロジスティクス革命に膨大な財政支出を行う。均質な電力が、全国的に統一した供給規格で全戸に配電される。それは、5年で完成される。中国企業が、東芝ブランドを高く買うだけの理由がそこには大いにある。習近平政権は、国際通貨基金がSDR債券を発行するように提案している。世界的規模での量的緩和である。脱米ドルという大願が可能だとみている。


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医薬品生産、富山県、全国2位へ躍進

2016年04月01日 | Weblog

TMA講師代表:4月1日に富山新聞は、一面で「医薬品生産、後発薬や受託好調」、過去最高6162億円と報道している。これは、専門家の間でも予想されていたが、第2位の静岡県が前年比22.1%を減らし、富山が前年比1.2%増やした結果である。トップの埼玉も前年比から減少し、6417億円であるから、トップとの差も、300億であるから、これから数年で埼玉県を追い抜く可能性は十分にある。

受託生産、OEMは、今は製造所の情報はプロだけが分かる数字記号であるが、いよいよ製造物の責任にかかわる法律運用で、日本の薬の製造にかかわる産業集積地として、富山の21世紀の産業の基本構図が定まったといえる。

それを見据えて、TMAでは、富山県立大学に工学部として医薬品製造の工学にかかわる新学科を提案し、すでに、公立大学法人となった富山県立大学は、看護学部の新設とともに、ハードなメタル相手の工学から、ヒューマンな社会相手の大学へと生まれかわる。これは、すでに歴史的な使命を終えた国立工業高専とは一線を画した21世紀型の大学へと進化する道筋である。男女共生の社会の一部として、県立大学が富山大学とともに成長することを祈りたい。

富山の県立高校も、進路として、B級、C級の大都市の大学を推奨することを止めて、自宅から自動車で通学できる富山県立大学の良さを再発見してほしい。特に、中学の進路の教諭に申し上げますが、国立工業高専の時代は終わりました。そのレベルでは、アジアの製造業に簡単に乗り越えられます。電気、機械、情報の3要素を総合的に理解し、経営学を基本とする人文社会科学の基本を身に着けるには、6年制の工学教育につながる普通高校への進学が大事なのです。中学3年の成績優秀者をファクトリーのオペレーターをして15歳で背中に烙印を押すのは止めましょう。看護学を志す学生と机を並べ、テクニカルなインダストリが、より人間性を帯びるには、国立工業高専の時代は終わりました。

さて、本題にもどります。富山の薬業は、新薬の創薬という面では、決して世界の先端ではありません。すでに、薬効が証明され、需要の多い医薬品をより性能のよい製品として、需要家に届ける「医薬品の生産工程」において、富山県には自立した産業集積が存在することです。それが、北陸新幹線の効果と相乗すると理解してよいでしょう。富山県では、物見遊山の観光客も歓迎しますが、それ以上に、富山に医薬品を生産委託される専門家の御来訪を歓迎します。それを産業支援型の観光政策と申します。

「藥都とやま」は、産業集積とともに、人材の育成にも多くを負っています。それを地域としてつなぐのが、マネジメント学です。


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