富山マネジメント・アカデミー

富山新聞文化センターで開講、教科書、参考書、講師陣の紹介、講座内容の紹介をいたします。

新たなチャイメリカンか?、2つの陣営対決か?

2019年11月23日 | Weblog

現在、アメリカの共和党系の大統領による対中政策は、中国に向けて厳しい対応をしているようにみえるが、実は、民主党の歴代の大統領の中国との協調主義との対決というアメリカの国内における政権闘争に主眼がある。それは、中国共産党の利権とアメリカ民主党とのチャイメリカンの構造を一端、破棄したうえで、共和党の側からのチャイメリカンの構築の過程にあると見た方が良い。従って、その場合、トランプ政権は、アメリカと中国との2大陣営の厳しい対決姿勢を見せながらも、他方で、アメリカの国防力の質的転換、つまり、軍事の削減と、軍事の高度化を目指している。それで、地上軍を世界から撤退し、宇宙軍の分野での新規投資を見込んでいる。そのため、一見すると、トランプの政治外交の流れが、中国との厳しい直接対決にあると思われがちであるが、そうではなく、アメリカの同盟国に対しは、対中国の軍事費用分担を自己責任で充実させる方向を一貫して追求している。そのための時間稼ぎとして、中国の最大の弱点である中国経済の外資依存の体質に揺さぶりをかけている。このように考えると、トランプ政権が一貫しているのは、アメリカの世界に対する「民主党システムー疑似グローバリズム」を解体、特にオバマ流に対する憎悪の徹底である。では、トランプ政権には、一貫した世界戦略はないのか。それは、まずアメリカの内部弱体の原因の除去である。貿易赤字、財政の構造的赤字、国内の公共インフラの老朽化など、主眼は全て内向きのアメリカ再建に主軸がある。つまり、イデオローギー的に中国共産党の体制解体、北朝鮮の体制崩壊にむけて、「アメリカの犠牲」を最優先する殉教者の道を選ばないことだ。だから、台湾には台湾の実力に応じたアメリカ製の武器の販売、日本には、日本の実力に応じた軍事同盟の高度化、・・・を求める。他方で、アメリカの巨大な貿易赤字の解消のために、中国共産党との現実的な妥協を選択しているといえる。つまり、トランプ大統領は、中国・ロシアの挑発にのり「体制間の世界戦争をする道」を全くといってよいほど想定していない。彼なりの共和党を基盤とする「新たなチャイメリカンへの道筋」である。


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悩ましい次期の富山知事の選挙(補正)

2019年11月18日 | Weblog

富山人は、今、ある種の歴史判断を迫られている。まず、参考までに、幕末の富山藩を振り返ることにしよう。易経、書経、春秋、詩経、礼記からなる五経の校正版を公刊する際、思い切って過去の、特に朱子学の注釈を割愛している。幕府の公認の学問では、朱子の注釈を基準とした。特に、詩経では、古代からの古注も、新しい朱子の注も割愛し、孔子が編纂した詩経の原型に、独自の欄外の頭注をつけて公刊されている。これは、随分に思い切った見識である。富山人、特に薬業を中心とした当時の経済界の空気を鮮明に表したものである。実は、富山の「維新力」はここに源流がある。さて、このたび、富山の経済同友会は、現知事の5選に待ったをかけた。県政の刷新を唱えるだけの経済界の実力は、日本海側で屈指の「県民総生産高」(県民1人当たりを含め)を生み出していることからも、相当に重いものと見なくてはならない。では、経済界は「資本家の私利私欲のため」かというと、必ずしもそうではない。経済学の古典を調べてみる。アダム・スミスが、スコットランドの製造業の経営者は、長期の統計のトレンドと広い情報知識を持ち、公益に寄与しうる階級であると述べている。現在、富山県の経済社会の将来は、東南アジアの経済成長と深く関わっている。このことが理解できているのは、総務省系の官僚社会ではなく、経済産業省系の官僚と海外事業展開をしている産業界の経営陣である。次に、エネルギーの天然ガス、LNGの利用が、2020年代に占める比重が高く、また水素利用の本格化も予定される。その意味では、経済界からの新しい提案を厳しく査定し、国家財源と税収のテクニカルな均衡論による総務省システムとの比較検討が必要となろう。もし、人物論できめると、感情できめることになる。感情よりも、現実の勘定が大事である。広徳館の「五経」が、過去の注釈を削除したのは、新しい時代の到来を構想するうえで、過去が障害となると考えたからである。ひとまず参考までに述べてみた。そこで、今問われているのは、総務省の出先機関としての富山県庁か、それとも、日本の国際競争戦略に生きる経済産業省ともに、新時代の富山県経済を再構築するのか、その選択である。しかし、総務省の出先機関であるという長年の流れは、持続的な発展には欠かせないメカニズムはあるから、それまでを廃棄する必要はない。しかし、新しい要素を組み込む妨げになってはならない。静岡県のように、富山にも地元に活性度の高い産業界がある。政策提言の主力である40歳代の部課長が、富山の将来を競争性の世界で勝利に導くには、スピード感があり、勇気ある決断が求められていると信じたい。


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日系のグルーバル企業だけが見える地球儀

2019年11月10日 | Weblog

我々は、2つのうちから1つを選ぶ思考に慣らされている。だから、親米も、親中も、戦術としては間違いないが、そのうち片方だけを選ぶのは、現実の必要から離れることになる。まして、アメリカを「信じる」とか、中国を「信じる」という一方的に惚れこむ態度も無意味である。現在、日本の社会を支える20歳から65歳の日本人は、親米にも、親中にも、一方向にのめり込まない。さらに、もっとのめり込んで、「信じる」という感情もない。では、日本第一主義に立って、米中よりも優位にある日本中心主義にも立脚していていない。トヨタの新車の販売台数では、アメリカ、中国、日本国内の順である。すでに、国内市場の前途には限界がある。活路をアメリカ市場、中国市場に見出すことになる。その場合、日本が米中に関係なく、独自の政治・経済・外交の戦略で問題に対処できたらという願望はあるが、実は、そこは慎まれている。というか、問題別に、これはアメリカと協調し、中国には距離をおく、また、その逆もある。孤立主義は、太平洋の両端にいる超大国である米中に挟まれているかぎり不可能である。問題別、課題別に、それぞれの先端における人間関係の濃淡が違うので、ある分野では「親米」、ある分野では「親中」という迷彩服のような姿をとらざるをえない。アメリカー中国―日本が対話する場合、共通語は「英語」とせざるをえない。つまり、英語のできる中国人、英語のできる日本人、中国語が理解できるアメリカ人、日本語が理解できるアメリカ人、それぞれが現実主義をわきまえるなら、さほど大きな対決の構図にはならない。このような人材を内部に抱えるのが、日本の一流企業である。世界はどうなっていくの?それは、TOYOTA、日立、YKKさんのような日系のグローバル企業だけが、見えている。それが、日本の知られざる真実の積み重ねの強みである。


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香港科技大学の学生、転落死を期に香港は変われるのか

2019年11月09日 | Weblog

香港の「明報」が伝えるところによると、11月4日、香港を代表する名門大学の学生が、將軍澳尚德邨停車場という駐車場で、転落し、救急病院で治療されたが5日の朝、帰らぬ人となったと。その情報をうけ、香港科技大学では、卒業式の式典を行っていたが中止し、学長が「永遠に辛楽を忘れないでおこう」と呼びかけたという。転落事故の原因は不明である。彼が民主化を求める街頭デモに参加し、警察部隊に追い詰められ、駐車場ビルの3階から、なんらかの原因で転落したという。ただ、警察部隊が直接に突き落としたという事件ではないらしい。真相の究明には、多くの困難があると思われる。我々が注目できるのは、大学が彼の死を個人的な問題としてみなさないで、香港の民主主義の運動の象徴として、歴史に刻み込むべき犠牲として顕彰していることである。周梓樂という優秀な学生の犠牲が、香港社会により本質的な、より深い「民主」の在り方をめぐる世論の進化を促し、中国共産党の潜在する「民主派」にも大きな刺激を与えることになるだろう。資料:【明報專訊】科技大學22歲學生周梓樂周一(4日)於將軍澳尚德邨停車場墮樓命危,留院第5天至昨晨8時09分終告不治,家屬親手將周推入殮房並說「再見」。其時正舉行畢業禮的科大,校長史維得知消息後即中斷儀式,宣布全體默哀,他更以手巾拭淚,並提早離場趕見周的家屬,下午畢業禮亦取消。醫院會將個案交死因裁判官,史維其後向科大職員及學生發信,表示會「永遠懷念梓樂」,並要求徹底及獨立調查周同學之死,並為此成立平台以便大眾提供相關資料協助調查。


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令和の新時代の富山県政の課題

2019年11月05日 | Weblog

富山の地形を観察し、「空飛ぶ恐竜」(翼龍)と気がつく人は少ない。さらに、この翼竜の胴体が呉羽丘陵にあるため、翼にあたる呉東と呉西の東西のバランスが常に問われる。しかも、呉西の翼の推力がおちると、金沢と富山との都市間の引力が作用し、呉西が金沢都市圏に吸収される。その結果、富山県は、翼竜の二つの翼のうち、呉西が衰弱し、呉東はますます東京本社→富山工場という形で、自力の飛翔する力を失う。このような否定的なイメージが、北陸新幹線に開通というゴールをめざした平成の時代に積み上げられてきた。令和の時代に、富山県という社会経済体が、中部経済圏の北部として、名古屋を中心とする流れに合流しないと、西は金沢、東は東京という大都市の引力に引き込まれ、自力で飛翔する力を失う。ここでは大まかな議論しかしていないが、大事なのは人口動態ではなく、マテリアル・フローである。富山県において、原材料、中間体、核部材、完成品のOEM生産など、金額ベースで総生産額を石川県と比較するのではなく、具体的にマテリアル・フローのなかで、どのような付加価値を積み上げているかを「見える化」しないといけない。観光の振興は、役所ができる目立つ行政である。しかし、富山の産業界は、統合された産業の頭脳の一体化のおいて、分散的であり、とくに情報産業の外製化の行き過ぎは、役所の行政においても、内部のIT頭脳化に伸びを欠いている。ともかく、選挙にはタウン・ミーティングも大事だが、県政の「大衆迎合」が進み、部分最適を追求すればすするほど、翼竜として飛翔するエネルギーは生まれてこない。


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中国共産党:内向き施策の凝縮化へ

2019年11月01日 | Weblog

第4回中央委員総会は、大会と大会との間で、大きな路線の転換や、首脳部の権力闘争の結果としての人事の任免が注目されているが、今回は、習近平の指導路線を追認し、内部的な安定を誇るだけの地味な会議に終始したようだ。写真は、会場となったのは、北京市の京西賓館で行われ、地方から上京した中央委員、候補は、このホテルに宿泊しながら、大会議場で総書記の報告を聴き、賛成の評決を行うわけである。この議案の方向付けは、8月上旬、避暑地である北戴河で行われる長老たちとの協議で決められる。国外のチャイナ・ウオッチャーの間では、習近平の後継者が指名されるのではないか?と噂されていたが、そうした予想は外れた。議案の内容を精査すると、習近平の指導路線を抽象的なスローガンとして中味なく礼賛する個人崇拝の傾向が抑制され、政治局のメンバーが個々に分担された任務を相互にすり合わせ、政策の連携を密にしたもので、視線は主に内政に向けられていることが注目される。逆にいえば、対外的に虚勢を張る議論は、意識的に抑制されている。これは、経済面での指標、外交面での実績など、想定以上に内向きにならざるをえない事情を脚色なく表現している。実態は、楽観主義、大言壮語を慎まざるをえない内省過程にあるとみてよい。


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