松竹梅は、日本酒のブランドの一つである。松竹梅は、中国の宋時代の文化人の生き方を象徴する樹木だった。松は、常緑樹である。長江の流域のお寺は、松の林に囲まれている。竹は成長が早く、雪に折れない。梅は、極寒に耐えながら、春一番に花を咲かせる。この松竹梅の好みは、唐様といって、伝統中国のファッションである。富山の旧家でも、金沢の兼六園でも、松竹梅のあしらいが眼につくだろう。その基本は、松竹梅を見て、常、柔、忍の三項目の自省をしなさいという教訓話にある。なぜ、樹木が重視されたのか。それは、中国の太古にちなむ。人々は、集落のシンボルとして、その土地にあう樹木を選んで植えた。これを「社」という。この文化は、日本の伝承され、中国では廃れてしまった。日本では、村の鎮守も森が太古の自然林の姿を残している。中国では、松竹梅を愛した知識人の文化が、下層民の上昇により消滅させられた。日本では、松竹梅は江戸時代には、中国に由来す教訓話を含めて珍重された。棄てられた中国文化の博物館である。
今、日本では、庭木の話ではない。山岳の樹林の管理が話題となっている。国家の「社」は、山岳部の樹林にある。国家の安泰のために、山の樹木に目を配ろう。