先日は伊藤まつさんの写真を公開した。確かに、文で説明するよりも、写真を見せた方が簡単だし、読者の皆様も判るわけである。それに絵などの作品を加えれば、絶対的な効果がある。どんなにうまく文で説明しても、読者は誤解するか、印象が残らないわけである。思えば、僕自身も、伊藤まつさんの独特の姿形と絵に印象付けられて、つまり、視覚から心に焼き付き、昇天後も記憶に残っているわけである。反面、伊藤まつさんの話の内容は要点以外は全て忘れたし、手紙含め、理解をしていたのかも疑問である。というより、そこからの理解はほとんどできなかったわけだ。何も伊藤まつさんだけでなく、僕の出会った人たちとの関係の全てがそうである。因みに、盲人の方は声色で他人を識別し、印象付けると聞いているが。
それでも、元々は伊藤まつさんも写真は大嫌いだった。大体、ハンセン氏病元患者の場合、写真を撮られる事を非常に嫌う。
そのような人たちの姿をテレビで見た人たちは判るだろうが、独特の姿形をしているから。とにかく、五体満足の人たちは勿論、他の身障者と比べてみても、非常に変わった姿形をしているわけである。それ故、嫌う。ムリもなかったが、相手の手紙だけでは伊藤まつさんの事は判らなかったので、次第に「写真が欲しい」と僕は伊藤まつさんに頼むようになった。昇天の4年くらい前だろうか。最初は断ったが、次第に写真を職員などに撮ってもらうようになり、まつさん自身も撮られる事が逆に好きになった。当時はパソコンもなく、写真を量産も出来なかったので、僕も個人的には頂けなかったが、追悼文集に盛り込まれ、時を経て、あのように公開もできたわけである。あのように頼んで、良かったと思う。
ハンセン氏病患者・元患者は他の身障者と比べても、独特の姿形をしている。それ故、世界各地で太古から頭ごなしに異人みたいに見られて、醜いと言われてきた。元患者たちも我々は醜い姿をしていると思いこみ、それで写真を撮られるのを嫌うようである。とは言え、美醜の価値基準はこの世にあるだろうか。人間たちが勝手に「これは美しい、あれは醜い」としているだけである。価値基準を変えれば、全ての人が美しくもなる訳である。現に、黒人関係では「黒は美しい」という言葉すらも出ているではないか。又、宇宙には多くの宇宙人がいるだろう。その姿形は本当に千差万別。地球のハンセン氏病元患者そっくりの姿形をした宇宙人もいるに違いない。そのような宇宙人が地球のハンセン氏病差別を見たら、どう思うだろうか。とにかく、我々は固定観念を打破しなければ、進歩もしないだろう。