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今日の筆洗

2022年07月26日 | Weblog

悪漢が善良な市民に襲いかかる。絶体絶命の場面である。どういうわけか、悪漢の気が変わる。「もういい。行くがよい」−。安堵(あんど)の表情を浮かべた市民はその場を離れようとする。観客がホッとするのもつかの間、悪漢は市民を後ろから斬りつける▼こんな場面が昔の時代劇や西部劇によくあった。悪漢の残酷で、卑劣な性格を描くためだろう。ただ、命を奪うだけではなく、助けると相手に希望を持たせた上で、裏切り、奈落の底にたたき落とす▼あの場面を見せつけられた気分である。話は先週にさかのぼる。ロシアとウクライナは国連とトルコの仲介によって、穀物輸送に関する協定に署名した。ウクライナの商船や港湾施設を攻撃しない。ロシアはそう約束した▼ロシアのウクライナ侵攻によって、ウクライナ産穀物の輸出は滞り、世界的な食糧危機を招いている現状がある。ウクライナからの輸出が可能になれば飢えに苦しむ人びとを救える。国連のグテレス事務総長はこの合意を「希望の光」と呼んだ▼この光がやがて侵攻中止につながることがあるかもしれぬ。そう期待したかったが、それは残酷な悪漢のやり口だったのか。ロシアは合意にもかかわらずウクライナのオデッサ港をミサイルで攻撃した。署名の翌日である▼希望を抱いた分、それが裏切られたときの絶望の大きさ。世界はその卑劣さにうめくばかりか。


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