自動車や家電製品などに使われ「産業のコメ」といわれる半導体。研究を先導した東北大元学長の故・西沢潤一さんは「ミスター半導体」と呼ばれた▼自ら設立に関わり、昭和30年代に生まれた半導体研究所は企業も出資し産学連携の先駆といわれたが、学者が資金を企業に恃(たの)むことには同僚や学生の批判も。東北大には「産学協同粉砕」と訴える看板も登場した。本人は「日本全体が食うためには電子工業をやらなくてはならない」と揺るがなかったという▼昭和の終わりに半導体で世界を席巻した日本は再びそれで食えるようになるのか。衆院を通過した政府の補正予算案の柱の一つが半導体関連で、総額2兆円近い▼次世代半導体の国産化を目指し、官民連携で北海道に工場を建設中の企業「ラピダス」への支援も増やすという。国の鼻息は荒いが、トヨタ自動車など民間の出資は限定的で及び腰ともいわれる▼国際競争で後れをとった日本は技術や人材の蓄積が乏しい。次世代技術での優位確保は「野球少年が明日から米大リーグで活躍したいというようなもの」と語る専門家もいる▼西沢さんは半導体研究所の玄関正面に、東北出身の作家宮沢賢治の言葉が入った染め物を飾ったという。「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」。研究はみなの幸せのためにある-。血税投入は幸福を招くだろうか。
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