「一石日和(いちこくびより)」とは雨が降るような降らないような定まらない天気のことをいうそうだ▼その昔、筑紫(福岡県)でそんな天気を「降るごと(如)降るまいごと(如)」といった。如(五斗)が二つ。尺貫法で合わせて「一石」というしゃれらしい▼「黒い雨」は降ったのか降らなかったのか。長崎原爆の被害を巡る新たな司法判断が出た。長崎地裁は国が定めた援護対象区域の外にある長崎市東部でも放射性物質を含む「黒い雨」が降ったと認定し、15人を被爆者と認めた。これまでは被爆者ではなく「被爆体験者」とされ、医療費など国からの支援も限られていた人々である▼援護対象区域外で「黒い雨」を浴びた住民らを被爆者と認めた判断は初めてだが、東部以外の地域にいた29人の訴えは退けられた▼29人がいた地域では放射性降下物が降った的確な証拠がないという。広島原爆を巡る広島高裁判決では黒い雨を直接浴びずとも内部被ばくの可能性があれば被爆者に該当するとしたが、これとは異なる判断で被爆者と認めるには「黒い雨」が降ったという立証が必要という姿勢を崩さなかった。同じ原爆被害でも広島と長崎で認定に差があるのは原告団には納得できまい▼降ったのか降らなかったのか、はっきりしない雨。疑わしきは救済をという訴えに別の雨が降るか。「空知らぬ雨」。空と関係ない雨とは涙のことをいう。
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