強打と俊足の野球選手で「球聖」と呼ばれたタイ・カッブが自伝の中で野球が変わったと嘆いていた。1940年代の話だろう。当時の強打者テッド・ウィリアムズ、スタン・ミュージアル、ジョー・ディマジオら4人の盗塁数を挙げ、1年間の合計でわずかに7個だったと指摘している▼カッブによれば昔の強打者は走れもしたが、長打力ばかりが注目され、盗塁が軽視されるようになったと。その傾向は今も変わらない。そもそも、盗塁自体が非効率な戦術という意見も最近はよく聞く▼つむじ曲がりと伝わる「球聖」も今年の大谷翔平選手には拍手を送るだろう。同一シーズンで本塁打40本と盗塁40個を記録する「40・40」を達成。さらに打って走って「43・43」の大リーグ新記録を打ち立てた▼日本ハム時代、当時の栗山英樹監督は大谷選手のけがを恐れ、盗塁を禁じたこともあったそうだ。滑り込み、野手と接触することもある危険な盗塁である▼大谷選手の盗塁に歓声を上げる一方で、あまり無理をしなくてもと心配するファンもいるか。けれどもこれが大谷選手の「野球術」なのだろう▼プレーする喜びが伝わってくる選手である。打ちたい、走りたい。今年は投げられなかったが、野球のすべてを楽しみたい。その熱と喜びが力となり、記録を残す。「50・50」の達成とともに無事を願う。まだポストシーズンもある。
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