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今日の筆洗

2023年10月17日 | Weblog

「モーリス持てばスーパースターも夢じゃない」。ご存じなのはおそらく、今、還暦前後の方か。古いギターのCMで、40年以上も前、ラジオの深夜放送の合間によく流れていたっけ▼ギターでスーパースターに-。そんなばかなと思いつつ、CMに刺激され、ギターを買い求めた方もきっといる。そんな時代だった▼訃報が寂しい。その人も確か、モーリスのギターをお使いだった。シンガー・ソングライターの谷村新司さんが亡くなった。74歳は早すぎる▼名盤「アリスV」(1976年)を聴き返す。1曲目の「今はもうだれも」から音がほとばしっている。弾(はじ)けている。内省的で、やや沈鬱(ちんうつ)な当時の「4畳半フォーク」の時代から離れ、より大きな世界へと飛び出そうとする宣言のような音がある▼3曲目が「雪の音」。芝居を演じるかのように、情感を込めた谷村さんの歌唱。その後の「昴(すばる)」にもつながる叙情性に加え、米フォークロックにはない、どこか懐かしい日本の味と「涙」がある。強さと優しさをあわせ持った歌声だった。2曲目の「遠くで汽笛を聞きながら」。谷村さんが何度も歌詞を書き直し、完成したと聞く。自分の「謡」を探し求めて、もがき続けた谷村さんの若き日を思う▼本物の「スーパースター」が「昴」へと旅立った。<あなたの声が遠ざかる…>。「帰らざる日々」の歌詞がファンにはつらい。