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今日の筆洗

2023年10月21日 | Weblog

 俳優の財津一郎さんの決めぜりふ「○○してチョウダイ」は吉本新喜劇で生まれた。財津さんが父親、花紀京さんが息子役でけんかを繰り広げ、「縁を切ってもええで」と息子が出ていこうとした時に「やめてチョウダイ」と叫んだら、その奇声が受けた▼食えぬころで、タダで借り妻子と住む納屋は畳が腐り、それを突き破って伸びたタケノコも頂いた。困窮続く私生活を舞台に重ね「私を、家族を、助けたまえ」と天に訴える心境で発したのが「やめて-」。笑わす気などなかったと故郷の熊本日日新聞で語っている▼訃報が伝えられた。コメディー番組『てなもんや三度笠』の浪人役で「キビシーッ」と言って笑わせた人は、昔から苦労した▼出征した父は戦後抑留され、母は栄養失調で伏せた。自ら衣類を手に農家を回り食料との交換を懇願した。農地改革で多くの土地を手放したが「地主の子」といじめられた。高校の先生に麦踏みに連れ出され「踏まれることで強い麦になれ。根アカに生きろ」と励まされたという▼演技の幅を広げ70代で出た映画『ふたたび SWING ME AGAIN』はハンセン病が主題。患者として半世紀も隔離されながら夢を追う老トランペッター役で、できる人は他にいないと監督に口説かれた▼時に「やめて-」と天に叫びたくなる辛苦も知る喜劇人。救われた人はどれほどいただろう。