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今日の筆洗

2023年07月04日 | Weblog

漫画家のみうらじゅんさんが上京後、高円寺に移ったのは吉田拓郎さんの影響という。「高円寺」という曲を聴き、いつか住もうと考えた▼よく分かる。右も左も分からぬ東京。歌やテレビで聞きなじんだ地名や建物の名を聞くと昔からの知り合いに出会ったような親近感がわく▼高円寺ではなく、お隣の中野。コンサート会場やテレビ番組の収録会場としてその名は地方に育った者にもなじみ深い。中野サンプラザ。大衆音楽の殿堂ともいえる存在だったが、日曜をもって閉館となった。開業は一九七三年。とがった三角形が空へと伸びていくような外観を見ると時代の活気やここにやって来る若者の熱のようなものを想像する▼若いミュージシャンや歌手にとって、ここに出演することは大きな目標になっていただろう。サンプラザに出たなら次は「武道館だ」。「野望」の途中。そんな前向きな雰囲気がビルのかいわいに漂っていた▼定員は約二千二百席。今どきの巨大なホールとは違い、ほどよいアーティストとの距離が観客にはうれしかった。サンプラザで来日公演を行ったエルビス・コステロさんが突然、マイクなしで歌い出したのを思い出す。音も良かった▼夢の場所といえば、建て替えが決まっている日比谷野外音楽堂も来春以降、解体される。東京の一時期を彩った「青春の場所」の数々。消えていくのが、寂しい。