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今日の筆洗

2023年07月28日 | Weblog
『蟬(せみ)しぐれ』などの作家、藤沢周平さんが作家になる前の職業は中学の教員である。教師を目指したきっかけに一人の先生がいる。「教師になろうとしたとき、私はあきらかに宮崎先生のことを考えていた」(『周平独言』)▼宮崎先生とは小学五、六年の時の担任だそうだ。こわい先生と思い込み、藤沢さんは一時、授業中に言葉が出にくくなるほどだったが、やがて、やさしい先生だと分かる。朗読で言葉が出てこない自分を笑う子どもを叱る。授業をつぶし、『レ・ミゼラブル』を読んでくれる。子どもを裏山に連れだし遊んでくれる。自由で兄のような存在が、藤沢少年に「いつかは自分も先生に」の志を芽生えさせたか▼同じ気持ちになる子どもが大勢いるのが頼もしい。クラレがこの春に小学校を卒業した子どもに聞いた「将来就きたい職業」。男女総合一位のスポーツ選手に続く、二位は教員である▼昨年は三位だったが、漫画家・イラストレーターを抜いた。大人は意外に思うかもしれぬ▼授業、部活に生徒指導、保護者の苦情対応。教員と聞けば長時間勤務と、なり手不足をつい連想してしまうが、子どもは教員という職業をまぶしく見ている。先生たちもうれしかろう▼長時間勤務の見直しと給与アップを図る、教員の働き方改革を急ぎたい。子どものあこがれを「えっ、知らなかった」の幻滅に変えぬためにも。