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今日の筆洗

2020年03月08日 | Weblog

 「善良な大衆はまったく『高原列車』で逃げ出したくなるようなやりきれなさを感じたものである」(『日本のうた』)。そう書いているのは「高校三年生」などの作詞家の丘灯至夫(おかとしお)さんである▼「高原列車」とは丘さんの代表作でヒットした「高原列車は行く」(一九五四年)のことで、それにひっかけて当時の事情を語っている▼<山越え 谷越え はるばるとランランランララ>。さわやかで屈託のない歌声。終戦から九年が経過し、ようやく落ち着いてきた時代の空気を反映した歌なのだろうと思いきや、そうとも言い切れぬらしい▼その年は、三月に「第五福竜丸」が米国の水爆実験によって被ばく。政財界を巻き込んだ贈収賄事件の造船疑獄もあった。丘さんの指摘する「やりきれない」世相があの歌のヒットの理由の一つだったか▼作曲は古関裕而(こせきゆうじ)さん。古関さんの出身地である福島県の地元紙福島民報社が主催した、「あなたが選ぶ古関メロディーベスト30」(中日新聞、東京新聞など協力)が七日付朝刊にあった。全国からの投票の結果、前回東京五輪の開会式で使われた「オリンピック・マーチ」や、高校野球でおなじみの「栄冠は君に輝く」を大きく抑え「高原列車は行く」がトップである▼無論、一位にふさわしい名曲だが、底抜けに明るいあの歌が「今」、支持された別の理由をやぼ天は勘繰ってしまう。

 
 

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今日の筆洗

2020年03月08日 | Weblog

 赤いバンダナを巻いた女性が右腕を突き上げるように腕まくりをしている。吹き出しには、「WE CAN DO IT」(私たちはできる)▼米国では有名なポスターで女性の地位向上運動などによく登場する。女性は「ロージー・ザ・リベッター」という。鋲(びょう)打ちのロージーさんとは妙な名である▼ポスターの女性には別のモデルがいるそうだが、ロージーのイメージの元祖というべき女性が亡くなった。ロザリンド・ウォルターさんとおっしゃる。九十五歳。戦後、米国公共放送の創設に貢献された方だそうだ。ロザリンドだからロージー▼話は第二次世界大戦中にさかのぼる。戦闘機の工場でリベットを打つような作業は男性が独占していたが、やがて男手が足りなくなり、女性を雇い入れるようになる。ウォルターさんもその一人だった▼女性が戦闘機を造る。夜勤もする。それが珍しく、新聞に取り上げられ、一九四二年には流行歌にまでなる。<一日中作業ラインにいる彼女 彼女は歴史を作っている 勝利のために ロージー・ザ・リベッター>。歌の印象であのポスターは描かれた▼戦後、「ロージー」は男性と変わることなく、なんでもできる女性のシンボルとなっていく。八日は、「国際女性デー」。八十年近いロージーの歴史だが、男女格差解消という当然のことを実現するための「腕まくり」がなお続く。

 
 

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