雪が解け、春がやってきたので、かえるくんはがまくんの家へ遊びに行くのだが、がまくんはまだ寝ている。春が来たのを信じない。米童話作家アーノルド・ローベルの『ふたりはともだち』(三木卓訳・文化出版局)。懐かしいと思ってくれる方もいるか▼がまくんをなんとか起こして、一緒に遊びたいかえるくん。十一月のままだった、がまくんのカレンダーをびりびりと破っていく。今は四月なのに、それも破って「がまくん、おきなよ。もう5月だよ」「おやおや5月だ」。がまくん、やっと起き上がる▼かえるくんのいたずらを思う、早すぎる今年の春の訪れである。気象庁の「生物季節観測」によると、春を告げる開花や鳥の初鳴きが平年よりもかなり早い傾向にあるそうだ▼たとえば梅の開花。新潟市では二月二日に記録しているが、これは平年よりも四十一日も早い▼大分のウグイスの初鳴きは一月二十日で過去最も早かった二月一日(二〇一二年)を更新。福岡市のタンポポは一月二十一日でこれも平年のカレンダーより一カ月以上早い開花である▼<いづくより春は来ぬらむ柴の戸にいざ立ち出でてあくるまで見む>は良寛さん。厳しい冬の後にやって来る、やさしく明るい季節の到来はいにしえより待ち遠しいものだが、あまりに早い春には「気候変動」の文字も浮かび、心躍らぬ。春なのにため息また一つ。