「タフガイ」の石原裕次郎、「マイトガイ」は小林旭、赤木圭一郎は「トニー」。ここに、「キッド」の和田浩治を加えた「日活ダイヤモンドライン」。その名を見ただけで手に汗を握った当時を思い出す世代もあるだろう▼一九六〇年代、日活はこの四人の主演作品をローテーションで次々に公開するピストン作戦によって大入りを取った。日本の山村に突如として現れるカウボーイ。拳銃の撃ち合い。現在なら、いったいどこの国の話かと思われそうだが、笑わば笑え。その無国籍な世界とアクションを求め、熱狂した時代があった▼「殺し屋ジョー」「エースのジョー」「コルトの銀」。ダイヤモンドラインとともに日活アクションを支えた俳優の宍戸錠さんが亡くなった。八十六歳▼ふてぶてしくも、どこか憎めないキザな悪役。それでも最後はアキラやトニーを助けてくれる。そんな役柄と拳銃さばきが当時の言葉でいえば実にイカしていた。鈴木清順監督の傑作「殺しの烙印(らくいん)」(六七年)のメシの炊ける匂いに恍惚(こうこつ)となる不思議な殺し屋の役も忘れられぬ▼駆け出し時代は俳優に代わって、危険な芝居をするスタントも引き受けていた。売れるがための決意の豊頬手術。苦労のジョーでもある▼訃報にお得意のポーズをまねてみる。人さし指を左右に振る。「ちっ、ちっ、ちっ。墓の下でおねんねたあ、寂しすぎるぜ…」