東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2020年01月18日 | Weblog

 文明は感染症の「ゆりかご」であった。感染症対策に詳しい山本太郎さんの著書『感染症と文明』にそんな言葉がある。農耕によって食糧増産を成し遂げた人類は定住し、人口を増やした。これが感染症の流行に、格好の土壌となったということのようだ▼人の感染症のおよそ七割は動物由来ともいう。家畜化された動物もゆりかごのような存在だったらしく、病原体は多様性を増している▼中国の武漢は、約千百万人という人口を擁し、近代的な産業もある大都市である。そこにある海鮮市場は、鳥類やヘビ、カエルなど多様な食用の動物を売っていた。ゆりかごだったのだろうか。コロナウイルスが潜んでいた場でなかったか、と疑われている。新型の肺炎は二人目の死者を出した。日本でも武漢に渡航した男性の感染が確認された▼感染が爆発する条件は人の密集と交通だそうだが、武漢にも国際空港がある。人口という土壌にくわえて、移動手段の存在は今後への懸念のゆえんだ▼人から人への感染のおそれが消えていない半面、かつての重症急性呼吸器症候群(SARS)のような猛威はみられていない。パニックに陥る必要はない▼<こわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい>。寺田寅彦が書いている。現代の文明人も正当に怖がることを求められていよう。

 
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】