「思ってるだけで何もしないんじゃな、愛してないのと同じなんだよ。愛してるんだったら態度で示せよ」-。映画「男はつらいよ」の「寅次郎の青春」(一九九二年)にそんなセリフがあった▼もしも寅(とら)さんがその内閣府の調査結果を読んだなら、少々イライラしながら、やはり、同じセリフで若者に奮闘努力を促すか。二十~四十代の結婚を望む未婚の男女を対象にした調査によると結婚していない理由のトップは「適当な相手に巡り合わない」の46・8%だった。なるほど分かる。慎重に探しているのだろうと思いきや、そのうちの61・4%までが相手を探す行動を何もしていないそうである▼数字だけ見れば、結婚をしたいと思ってはいても、行動はしない遠慮がちな青年像が浮かんでくる。巡り合いたいが探さない。寅さんでなくとも「そりゃムシがよすぎるってもんよ」と口にしたくもなる▼もちろん、未婚率の高さには若者を取り巻く厳しい経済状況や将来展望が描きにくいこともあろう。結婚自体の価値や意味が揺らぐ時代でもあるが、こんなじれったい背景もあったのか▼「思い切ってなんでも言ったらいいさ、惚(ほ)れてますとか、好きですとか」(「寅次郎子守唄」)▼昭和の昔なら、その一手かもしれぬが、無理にお尻を押しても効果はあるまい。その気はあっても動かぬ若者の抱える事情もよく聞いてやらねば。