東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2019年06月26日 | Weblog

 <一、嘘(うそ)は吐(つ)くべし理屈は言(いう)べからず>。落語中興の祖、三遊亭円朝が弟子に厳守させたという「円朝憲法」である▼芸人としての教えであろう。「嘘は吐くべし」とは高座での態度で話芸によって客を虚構の世界へと誘い込み、楽しませなさいという趣旨だろう▼どうやら「嘘は吐くべし」を勘違いした芸人がいたようである。吉本興業は詐欺グループの宴会に加わり、金銭を受け取っていたとして十一人の芸人を当面、謹慎処分とすると発表した▼当初は詐欺グループから金はもらっていないと説明していたが、再調査の結果、全員が受け取っていたのが分かった。嘘をついていたのか。それは客を楽しませる円朝の嘘ではなく、世間を失望させる嘘である▼振りまく笑いで、日々のつらさや憂さをつかの間忘れさせてくれる。芸人とはそういう存在である。普通の人にとっての味方であり、仲間であってほしかったのに、庶民を騙(だま)し、懐を付け狙うような連中の宴席で愛嬌(あいきょう)を振りまいていたと聞くのが悲しい。芸人はわれわれの味方ではなかったのか▼ぞろっぺいで、少々はめを外す人の方が芸人としては味があると見られた時代は残念ながら遠い昔である。世間の目は芸人にも厳しくそそがれる。<一、笑はるゝとも悪(にく)まるゝは悪し>。世間に憎まれるようなことはするな。これも「円朝憲法」。笑いを志す者の初手であろう。

 
 

この記事を印刷する

 

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】