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今日の筆洗

2019年06月05日 | Weblog

 永井荷風の散歩姿は変わっている。有名な写真がある。洋装に下駄(げた)。それにこうもり傘。今の感覚からすれば、これだけで十分奇妙だが、決定的なのは腕にぶら下げた買い物かごである▼買い物かごと聞けば、スーパーに置いてあるプラスチック製のかごを思い浮かべるかもしれぬが、そうではなくて昭和の夕暮れ時のお母さんに似合いそうな籐(とう)などで編んだかごである。二度の離婚の後は一人暮らしだった荷風は自分で煮炊きしていたというから、買い物かごが重宝したのか。一説ではその買い物かごの中に預金通帳まで入れて持ち運んでいたそうである▼その話題に倹約家だった荷風さんなら買い物かごを勧めたかもしれぬ。政府はスーパーやコンビニなどでのレジ袋の無償配布を一律に禁止する方針だそうだ▼海洋汚染につながるプラスチックごみを少しでも減らそうという取り組みで、一部の自治体では既に行われている▼今までは無料だったレジ袋が一枚数円から十円。釈然としないが、払いたくなければ自分のバッグを使うしかあるまい。こうした日常的な取り組みがプラスチックごみを意識する一つの象徴にもなれば、法制化の意味はあろう▼スーパーなどで見ている限り、レジ袋を断るマイバッグ派は圧倒的に女性である。買い物かごの荷風の姿を奇妙と書いたが、そういう男性の姿が当たり前になる時代は悪くない。

 
 

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