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今日の筆洗

2017年08月19日 | Weblog

 二〇〇四年の三月十一日、スペインの首都マドリードの病院の周囲には、長い長い列ができた。人々はいつ自分の番が来るかも分からぬのに、じっと待ち続けた。献血のための行列である▼その日の朝、スペインでは列車を狙った同時爆破テロが起きた。千人近い人々が病院に運ばれ、百九十人余の命が消えていった。自分たちに何かできることはないか。そんな思いに突き動かされた数千人もの市民がすぐさま病院に駆け付け、並び続けたのだ▼翌日は、時折激しく降る雨。だが、スペイン全土で国民の四分の一にあたる一千万人もの人が抗議デモの列に加わり、ある参加者は、こう語ったという。「雨の中、これだけの人が集まったことを見てほしい。言葉はいらない。これが我々の思いだ」▼そのスペインでまた、テロによって血が流された。バルセロナの観光名所に車が突っ込み、百人を超える死傷者を出した▼人々は再び、献血のための列を病院の前でつくっているという。イスラム過激派が犯行声明を出したのを受け、スペインのイスラム教指導者も「罪なき人々の血を流そうとする者に対して、我々は献血で応える」と宣言した▼献血で結ばれた“血の団結”。「自由を愛し、固く結び付いた人々を、テロリストは決して打ち負かすことはできない」とのラホイ首相の言葉に、かの国の人々の毅然(きぜん)とした横顔を思う。