東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2017年08月07日 | Weblog

 <心配事や悩みは縦に並べなさい>。その人は若いころ、父親にそう教えられたそうだ。心配事を横に並べてしまうと、一斉に攻め立ててくる▼縦に並べればどうか。心を惑わすのはひとまず先頭の一つのみである。その最初の問題の解決に全力を。それが解決したら次の問題に取り組む。分かりやすい助言である▼その人とは三日に亡くなった気象エッセイストの倉嶋厚さん。九十三歳。NHKの「ニュースセンター9時」の天気コーナーでの分かりやすく、味わい深い語り口を思い出す方もいるだろう。個性的な気象キャスターのはしりで「熱帯夜」という言葉も倉嶋さんの造語と聞く▼天気や季節を話題にしたエッセーの面白さと、その知識の広さ、深さ。ものを書く身としては読めば羨望(せんぼう)のため息が出る。なんでも気象庁勤務時代は公務を人一倍こなす一方、わずかに残った時間のすべてを勉強と執筆活動に費やしていたそうだ▼妻の泰子さんに先立たれ、うつ病に苦しみ、克服した経緯についてお書きになっている。晴れたり曇ったり、降ったりやんだりの人の四季。それに向き合い「やまない雨はない」と自信を持って予報できる人でもあった▼錦雨(きんう)。夏の雨のひとつで日照り続きの後に降る恵みの雨のことだが、倉嶋さんとのお別れに似合いそうな雨である。なに、これも「雨のことば辞典」からの受け売りである。

【訃報】NHK解説委員 気象キャスターの倉嶋厚さん他界