TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「山一族と海一族」33

2018年01月12日 | T.B.1998年

「……ここが、」

 アキラは息をのむ。

「生け贄の儀式が行われる場所」

 一筋の光が、儀式の場所を照らしている。
 まるで均されたような、大きな、岩。

 そこに、

「カオリ!」

 カオリが横たわっている。
 意識は、ない。

「お前たち、カオリに何を!」
「まあ、落ち着け」

 声を荒げたアキラに、裏一族は云う。

「まだ、生きているよ」

「まだ、だと」

「大丈夫だ」

 別の裏一族が云う。

「お前たちも皆、同じく犠牲になるのだから」

 そのふたりの、裏一族の格好は、
 山一族と
 海一族。

「そうやって、一族中に入り込んでいるのか……」

 トーマが呟く。

 その後ろから、さらにふたりが現れる。

 4対2。

「いけるか?」
「やるしかないだろう」

 トーマが云う。

「お前たちがなぜ、俺達の儀式にかかわっている。いつからだ!?」

「俺達の、……」
「儀式??」

 裏一族は吹き出す。

「そうだよな」
「生け贄を横取りされたと思っているんだろう!」

 裏一族が云う。

「これは最初から、俺たちが仕組んだ」

「仕組、……んだ?」

「裏一族のための裏一族の儀式だよ」

「なん、」
「だって!!?」

 アキラとトーマは顔を見合わせる。
 意味が、判らない、と。

 その様子が可笑しいと、裏一族は続ける。

「死なない程度に毒を流すのも、大変だったな」
「神の怒りだと思わせるような、自然な災いを起こすのもね」

「そんなわけが!」

 アキラが云う。

「生け贄も災いも、数十年に一度と続いてきたことだ!!」

 まさか、それを、

「仕組んだ、だと?」

 裏一族が笑う。

「簡単なことだ」
「数十年に一度の儀式」
「詳細を知る者は少ない」
「少しずつ」
「話をすり替えていけばいい」

「そして」

「こうやって、自然と生け贄がやって来てくれるからな」
「楽なものさ」
「どこかの一族からさらってくるより、穏便でたやすい」

「穏便、だと!?」

「だけど、今回はちょっと待てなくてね」

 裏一族たちは、それぞれに武器を構える。

「手早く終わらせてもらうよ」



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「海一族と山一族」29

2018年01月09日 | T.B.1998年

トーマも詳しい事は知らない。
ただ、
そういう魔法があると聞いた。

曰く、
人を生き返らせることが出来る。

曰く、
年老いた体を若返らせることが出来る。

だが、割に合わない。
困難な願いであればあるほど
必要な命が多くなると言う。

まるで、お伽話の様だと
思ったのを覚えている。

「……本当に、実在するのか?」

そんな魔法が。

ふ、と
アキラが足を止める。

「……いるな」

鬱そうとした森の中の獣道。
だが、
その先に自分たち以外の気配を感じる。

「あぁ」

いる。

それも、ひとりではない。

二人は武器を構え
足音を立てない様
ひっそりと進む。

早くしなければ。
手遅れにならないうちに。

「………なんだ?」

ふと、その場の空気が変わる。
アキラとトーマは顔を見合わせる。

「下だ」

違和感はそこから。
光の線が二人の足元を抜けて伸びていく。

「紋章術の陣」

アキラが呟く。

「これが?」
「あぁ、
 うちは紋章術を使うから、分かる」
「陣と言ったって」

トーマにはただの線にしか見えない。
つまり、
この場にはとても大きな陣が
張り巡らされているという事。

トーマ達が見ているのは
その一部。

「裏一族には
 強力な魔法を使える者が居るのか」
「そう、らしいな」

トーマは問いかける。

「どうする?
 このまま進むか?」

アキラもどう思う?と
尋ねるように聞き返す。

「気配はそう、多くない」

行こう。
二人は頷き前に進む。

ふと、視界が開ける。
暗い道を進んできたので
明るさに目が慣れない。

そんな中、
声が聞こえる。

「来たぞ、別の命が」

喜んでいるような
からかっているような
そんな声が。

「お前らの命も
 使わせてもらう」

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「山一族と海一族」32

2018年01月05日 | T.B.1998年

 アキラとトーマは、再度進み出す。

 樹々の間を抜け、まっすぐと延びる道。
 その道は、ぬかるんでいる。

 緊張。

「……いるな」
「いる……」

 何かの気配。

 ひとりではない。

 何人か。

 アキラとトーマは武器を持つ。
 足音を、消す。

 この先に、カオリが。

「…………?」

 アキラはトーマを見る。
 そして、足下。

 何かが、光る。

「これは」

 光り輝く、線。

「陣だ」
 アキラは呟く。
「紋章術の陣」

「何?」

 トーマも足下を見る。

 線が延びている。

「これが?」
「ああ、間違いない」
 アキラが云う。
「うちは紋章術を使うから、見れば判る」

 アキラとトーマの視界に、線しか見えないと云うことは
 かなり大きな陣が描かれていると云うこと。

「裏一族は強力な魔法を使うのか」
「らしいな」

 アキラは、線を踏む。
 けれども、その陣は消えない。

「どうする?」
 トーマが云う。
「このまま進むか?」

「どう思う?」
 アキラが訊き返す。
「気配はそんなに多くはない」

 裏一族も考えてはいる。
 動きを悟られないように、大人数ではないはずだ。

 アキラとトーマは頷く。
 進む。

 静かに。

 闇。

 わずかな光。
 一寸先も見えない。

 この先の気配だけを頼りに。

 やがて

 空気が、変わる。

 風。

「来たか……」

 急に、視界が開ける。

 流れる水の音。
 滝。
 旧い樹々。

「また、別の命が」

 それは、笑うように

「お前らの命も、使わせてもらう」



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2018年始

2018年01月02日 | イラスト



2018年。新年明けましておめでとうございます。

今年も連載を続けてまいりますので
どうぞよろしくお願いします。

えぇ、ではでは年始はばしょ、の目標を。
課題曲頑張ります。

(課題曲は何かの試験とかではなく、
 私達+さかえちゃんの三人でのお題の)
(ある意味、これも、試験、なのか!!)



作品とイラストを精進していきとうございます。



TOBA by ばしょ&ともえ