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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「山一族と海一族」36

2018年02月02日 | T.B.1998年

「カオリ!!」

 トーマの声。
 アキラは振り返る。

 トーマがカオリのもとにいる。

「おい!? しっかりしろ!!」

 トーマが声をかけている。
 けれども、カオリの反応はない。

「何か飲まされているのか?」

 アキラもそこへと駆け寄る。

「トーマ」
「アキラ……、そちらは上手くいったようだな」
「ああ。カオリは無事か?」

 トーマが抱き上げたカオリに、アキラは触れる。
 呼吸はあるが、意識はない。

「息はある」

 トーマが云う。

「早く村に戻って、医者に診せた方が」

 ふと、

 トーマが顔を上げる。

 アキラも見る。

 ほのかな光。

「……陣が消えていない!?」

 地面に描かれた、紋章術の陣。
 それが、淡く光り続けている。

 つまり、儀式がまだ、続いていると云うこと。

「裏一族は倒したんだが、」
「なぜだ? まだほかにいるのか?」
「いや、」

 アキラは目を細める。

「術者が倒れても、止まらないのかもしれない」
「まさか、カオリが目覚めないのも?」

 トーマの言葉にアキラは頷く。

「何にせよ、早くここを離れよう」
 アキラが云う。
「カオリも陣の外に出れば意識が戻るかもしれない」
「そうだな」

 アキラはカオリを抱え、歩き出す。

 が、

 立ち止まったトーマに気付き、振り返る。

「どうした?」

「…………」

「トーマ?」

「……アキラはカオリを連れて、先に戻っていてくれ」
「何?」
「俺は、この陣の中心に行ってみる」

 トーマの視線を、アキラは追う。

 陣は、中心に近付くほど、精密な模様を描いている。
 その中心は、
 流れる滝の方へと向かっている。

 滝の裏側へ。

「あそこに、」
「裏一族の目的が……」

 ふたりは同じ方向を見る。

「儀式とは本当に、」

 人の命を使うものなのか。

 その命と引き換えに、死んだ者を呼び戻すのか。
 それとも、不老不死を望むのか。

 ――禁忌の魔法。

「アキラ」

「いや、一緒に行こう」

 アキラが云う。
 
「カオリにかけられた術も知りたい」

 ふたりは頷く。

 滝の裏へと向かって、歩き出す。



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