TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「山一族と海一族」32

2018年01月05日 | T.B.1998年

 アキラとトーマは、再度進み出す。

 樹々の間を抜け、まっすぐと延びる道。
 その道は、ぬかるんでいる。

 緊張。

「……いるな」
「いる……」

 何かの気配。

 ひとりではない。

 何人か。

 アキラとトーマは武器を持つ。
 足音を、消す。

 この先に、カオリが。

「…………?」

 アキラはトーマを見る。
 そして、足下。

 何かが、光る。

「これは」

 光り輝く、線。

「陣だ」
 アキラは呟く。
「紋章術の陣」

「何?」

 トーマも足下を見る。

 線が延びている。

「これが?」
「ああ、間違いない」
 アキラが云う。
「うちは紋章術を使うから、見れば判る」

 アキラとトーマの視界に、線しか見えないと云うことは
 かなり大きな陣が描かれていると云うこと。

「裏一族は強力な魔法を使うのか」
「らしいな」

 アキラは、線を踏む。
 けれども、その陣は消えない。

「どうする?」
 トーマが云う。
「このまま進むか?」

「どう思う?」
 アキラが訊き返す。
「気配はそんなに多くはない」

 裏一族も考えてはいる。
 動きを悟られないように、大人数ではないはずだ。

 アキラとトーマは頷く。
 進む。

 静かに。

 闇。

 わずかな光。
 一寸先も見えない。

 この先の気配だけを頼りに。

 やがて

 空気が、変わる。

 風。

「来たか……」

 急に、視界が開ける。

 流れる水の音。
 滝。
 旧い樹々。

「また、別の命が」

 それは、笑うように

「お前らの命も、使わせてもらう」



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